基本読書

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定年後の起業術 (ちくま新書) by 津田倫男

 ちくま新書のラインナップを見ているとここ最近定年後や中高年世代の働き方に関する本が定期的に出ていることに気がつくがこれもそんな中の一冊。実際に定年後の起業を考えている人間以外には役に立つとも思えないが一応紹介しておこう。昨日の更新との絡みもある。⇒日本の雇用と中高年 (ちくま新書 1071) by 濱口桂一郎 - 基本読書

 中高年世代は正直、仕事なきあとの生き方を問われ模索している年代だろうとは思う。ほんの数十年前とは寿命が違ってきて、60代70代80代をどうやって充実して過ごすのかというロールモデルが存在しないからだ。それとは別にこれから中高年世代へ突入していく世代の不安としてはもう社会保障(特に年金)が当てにできないこともあって自分はどれだけ働けばいいのかと今から途方にくれているところだろう。

 ひとつの解決策が起業である、しかも定年後の方が起業に有利であるという主張について本書を読む前に自分なりに考えてみたのだが、利点についてはほとんど同じことを考えるようだ。コネがあり、資金があり、経験があり、信用があり、師がいる。個人的に付け足すとすれば時間がある、とかもそうかな。もっとも定年制自体が馬鹿げた制度であって今後もずっとあるとは思わないが(5年後には一般的じゃなくなってるんじゃないのこの制度)。

 個人的に定年後の起業がよかろうと思うのは「まあなんか趣味的にやればいいんじゃないの?」という生活に対する切迫感なしにやれるからだ。採算がほとんどない趣味の喫茶店とか、趣味のシェアハウスとか、趣味の海外支援でもなんでもいいが、それまでの培ってきた経験を元にしてせめて投資した金が無駄にならない程度の、あわよくば成功したら拡大していけばいい起業をするのは老後の楽しみになっていいんじゃないかな、ぐらいの消極的な考え。

 最もその程度ならそのまんま趣味でやればよくわざわざ会社にする利点も多くはないわけではあるが。本書が想定していたのはもっとガチなヤツ、人を雇って、事業計画をねって競争相手との比較検討をして──と、正直言ってそこまでくと博打であり老後の生活をリスクに晒すのはどうにもいい考えとは思えない。シニア起業の利点としてあげられているコネも資金も経験も信用も師も、そんなものある人はあるんだろうが無い人は本当にない。そして今後多くの定年を迎えるおっさんおばさん達のほとんどは上記の利点をほとんど持たないまま投げ出される人達であろうことが想像するに難しくない。

 まあ、選択肢のひとつ、ぐらいに捉えておくのがいいだろう。本書の主張にはそういうわけで8割方「ぜんぜんなっとくできません」という評価になってしまうが実際に定年後に起業を考えている人にはまあ薦められるかな。 

定年後の起業術 (ちくま新書)

定年後の起業術 (ちくま新書)