- 作者: 村上春樹
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2015/11/21
- メディア: 単行本
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僕が紹介したところで新しい観点があるわけでもないのでだらだらと日記的に書くが、どの作家が書いたか否かに関わらず僕は他人の旅行記ってけっこう好きだ。それは時として「幻のムバンバを探せ」的な(そんな本はない)探検記になることもあるし、別段そういうこともなく普通にその辺の人とのやりとりがあったり、全般が好きなのだ。
それは一つに、僕が旅行が大嫌いだからだろう。綺麗な景色、何十年に一度のなんとか流星群! とか、そういうの「いいね」とは思うけど、わざわざ自分の身体を動かしてまでそれが見たいのかといえばそんなことはない。自分の身体をどこかへ移動させなければいけないのであれば、そんなものは見ないほうがいい。たかだか数泊で慌ただしく観光地を巡るなんて最悪だ。
旅行記はそういう人間の「いいね」と思っている部分を多少満たしてくれる。それに僕はどちらかというとルーブル美術館がどうとか、そういうあれよりもその土地で暮らしている人たちの感想とか、その土地で長く暮らしている人が自然と行くようになる昼食の場所とか、朝自転車を漕いでいる時に気持ちが良いのかどうかとか、そういう「スペシャル・ローカル」なことの方が気になる。単純な旅行者ではない作家は、滞在時間が長いことも多くだらだらとした旅をしていて、読んでいて楽しい。
ダーク・スター・サファリ ―― カイロからケープタウンへ、アフリカ縦断の旅 (series on the move)
- 作者: ポールセロー,Paul Theroux,北田絵里子,下村純子
- 出版社/メーカー: 英治出版
- 発売日: 2012/01/18
- メディア: 単行本
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本書(ラオスにいったい何があるというんですか?)で個人的に面白かったのは、世界的な作家だからこそする経験談だろうか。フィンランドでさえも彼の本が出版されているものだから、行って連絡をとれば「まあ、飯でも食いながら話でもしましょうか」という話になる。
食事をしながら「ビジネスはどんな具合ですか?」と尋ねると、「多くの読者はフィンランド語の翻訳が出る前に英語で読んじゃうから、翻訳の出版事業はここではなかなかむずかしいのよね」という返事が返ってきた。若い人はそれくらい自由に英語を使える。またスウェーデン語で本を読む人の数も多い。でも彼らはフィンランド語に誇りを持っているので、少しでも多くの書物をフィンランド語に翻訳して出版しなくては、という使命感を持っている。健全な考え方だ。がんばってほしい。
こういう情報は、知ったからといって「ふーん、まあそうだろうなあ」という以外の感想は湧いてこないもんだが、読んでいると楽しい。たぶん一生のうち一度も行かないであろうフィンランドの情報に触れることは僕にとっては旅行に似たような楽しみなのだろう。ふむふむ、君たちはフィンランド語に誇りを持っているのかね、まあそうだろうなあ、ハ・ハ・ハぐらいの感じで。