基本読書

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第二次世界大戦で枢軸側が勝利することで、日本合衆国が爆誕した世界を描き出すロボ・バトル物、三部作が完結!──『サイバー・ショーグン・レボリューション』

この『サイバー・ショーグン・レヴォリューション』は、第二次世界大戦で枢軸側が勝利し、日本合衆国が爆誕。しかも日本合衆国はメカと呼ばれる巨大ロボット部隊を生み出していた──というキャッチーな設定で話題となった『ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン』、その続編『メカ・サムライ・エンパイア』に続く完結篇である。巨大ロボットに加えて日本文化を深く取り込んだ作品ということもあって、日本でも二作連続でSF賞である星雲賞を受賞するなど、大いに話題になった作品だ。

三部作とはいっても、毎巻舞台となっている時代も、主要登場人物も一新され、この世界を新しい視点から深く掘り下げていくので、どこから読んでも(刊行順から反対に読んでも)問題はない。全体をざっと紹介すると、第一作『ユナイテッド〜』は主に1988年のロサンゼルスを舞台に、この世界の政治的・軍事的暗部を暴き出すポリティカル・サスペンスであり、第二作『メカ・サムライ〜』は一転してメカ・パイロットになって皇国を守ると誓ったパイロット候補生を主人公の成長を描きながら、学園モノ✕爽快なロボット・バトルに注力した学園ロボバトル物に仕上がっている。

本作は、第二部から時間を20年以上経過させた2019年頃を舞台として、『ユナイテッド〜』系の国家の裏に渦巻く謀略、計略が明らかになる過程で日本合衆国を分断させるテロが描かれていく。謀略・政治劇がメインだった『ユナイテッド〜』にメカ・バトルやサイボーグ同士の戦闘を随所に入れ込み発展させたような作品で、そのスケールが最大の魅力だ。読んでいて、著者が深く愛している小島秀夫監督のメタルギアソリッドシリーズや、押井守が監督した『機動警察パトレイバー2 the Movie』の雰囲気やおもしろさを感じさせてくれ、一気に大好きな作品になった。

あらすじとか

物語の舞台となっているのは2019年、大日本帝国陸軍の軍人である守川励子は、政権の打倒を目論む秘密組織である〈戦争の息子たち〉に所属し、仇敵ナチスとどっぷり疑惑のある現総督多村大悟の打倒をはかる作戦に参加する。励子はメカに乗り込んで多村を急襲するも、情報はダミー。作戦は失敗するかと思われたが、最強の刺客にしてナチスキラーと名高いブラディマリーが多村総督を打倒し、無事政権は〈戦争の息子たち〉のトップである山岡のもとへと転がり込んでくることになるのであった。

だが、革命成功後の内政はそう簡単にはいかない。〈戦争の息子たち〉による政権の奪取後、彼らに対して協力的ではなかった幾人もの人物が逮捕、粛清されてしまう。励子は、多村打倒は正義であり、改革には時間がかかるものだと自分を説得しようとするも、次第に〈戦争の息子たち〉内部での意見・思想のズレが表面化。さらに政権打倒の立役者だったブラディマリーが反転し、〈戦争の息子たち〉の会員が次々と殺され始め、革命成就の直後から泥沼の内部抗争が勃発。さらに、ブラディマリーの演説によって、日本合衆国にたいするテロの火蓋が切って落とされることになる。

「──いかなる帝国でも、軍の行動はその国の歴史全体の責任だ。知らぬ存ぜぬは通らない。兵士の行動がもたらす利益を享受しているなら、その責任も当然負うべきだ。沈黙は有罪を意味する。武器は税金であがなわれている。臣民の社会的歓楽のために軍の残虐行為が正当化されている。皇国は世界に戦争をばらまき、語られざる被害を人々におよぼしている。そこで、その戦争の恐怖を臣民一人一人に実感してもらうことにした。防壁の内側にいても安全でないことを教えてやる。いやならロサンジェルスから脱出しろ。こちらは民間人も軍人も区別しない。いずれも有罪だ。今日の爆弾は小手調べだ。本物の戦争は明日からはじめる」

作中でも言及があるが、いわゆる劇場型の犯罪者であるといえる。

市街戦、近接戦闘

励子はこうしたブラディマリーらの無差別テロに対抗するのだが、今巻の特徴ともいえるのが、都市全域を相手取ったテロ行為とその防御のために、両勢力ともメカを駆り出し、市街戦からの遭遇戦、個人戦といったメカ・バトルが多く楽しめるところ。

「機界接続が遮断される直前の情報では、敵のメカは三機。シグマ號、ストライダー號、サイレン號。すでに複数のメカ基地を攻撃して壊滅させています。ロサンジェルス郊外から応援が送られているようですが、具体的には不明。味方の空港はどこも大きな被害を受けているので、迅速な航空展開は難しいでしょうね。このような作戦にうってつけのカタリナ島在住のメカパイロットに緊急出動要請を送りました。応じてくれるかどうかはまだ不明です。連絡があるまで応援はないものと考えたほうがいいでしょう」

たとえば上記は両勢力がぶつかりはじめてからの描写だが、こういう上から見下ろした情報が次々と羅列され、次第に目の前の個別具体的な戦闘状況に流れ込んでいくのが非常にシミュレーション・ロボット・ゲームっぽさを感じさせておもしろいポイントである。戦闘が進むにつれて未完成と思われていた未知の兵装を備えた機体が現れる、常人には速すぎて使用できない加速モジュールを使いこなす凄腕パイロットの存在など、ロボ・バトルであると嬉しい要素がかなり盛り込まれているのもポイント。

地味に嬉しいのが、義肢持ちの人物が幾人かいて、生身によるハードな近接戦闘も盛り込まれているところ。自律的に浮いているナイフドローンと刀を用いた近接戦闘など、たまらないケレン味に満ちている。

おわりに。何から読むか、何を買うか

今からシリーズを読み始めるなら、第二部はまだ未熟な少年たちがメカ・パイロットとしての鍛錬をつむことで成熟していく作品+世界観のお披露目として読みやすいのでそこから読みはじめてUSJ、SSRへと進んでいくのがオススメである。もちろん、各巻違った魅力があるので、本作(SSRだけ)読んでも楽しめるだろう。

ちなみに本作は早川書房もかなり力を入れていて、二段組ででかいSFシリーズ版と、上下巻の文庫版で分かれている。基本的には文庫がオススメだが、今回に関してはSFシリーズ版には書き下ろしエッセイ・短篇の特別コンテンツが入っているので、十全に味わいたいならSFシリーズ版の方をオススメしたい。