基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

イーガン の検索結果:

自分がどうやって、どのような経路でSFに入門したのか

…でいった記憶がある。イーガンを薦めてくれたのも当時ブログで交流があったdaenさんだった(彼とは今も毎月遊ぶぐらいには仲が良い友だちだ)。2009〜2010年あたりまで気に入った作品を読む→作家の作品を芋づる式に読むスタイルで、その後次第に新刊を中心に読む今のスタイルに変遷していったようだ。 雪風以前のSF そういえば雪風以前、SFにハマる前に僕は時代小説やらライトノベルやらにドはまりしてそればっかり読んでいたのだけど、ライトノベルの中にもSFはあるので、その時点でかなり読ん…

『元年春之祭』の陸秋槎による、今年ベスト級のSF短篇集──『ガーンズバック変換』

…そうした、グレッグ・イーガン的な”脳/神経科学と人間の選択についての物語”が、”なぜ人気作家はゴーストライターを依頼したのか”という謎の解決と共に進行していく。小品ながらも、冒頭にふさわしい一篇だ。続く二篇はどちらも歌/詩をテーマにした作品。「物語の歌い手」は14歳の時に病で命の危機に瀕した貴族の娘を主役に据えた、吟遊詩人の物語。貴族の娘は侍女のステファネットと共に酒場に繰り出し、そこで南フランスで最高の吟遊詩人だと噂されるジャウフレという人物に出会う。娘はこの出会いによって…

今年も早川書房1500作品が50%割引の超大型電子書籍セールがきたので、SF・ノンフィクション中心にオススメを紹介する

…、今重要な一冊『知ってるつもり 無知の科学』の文庫版もセール中だし、SFでいえばイーガンの作品もけっこうセールになっているし──と、探せばきっと読みたい本がみつかるだろう。知ってるつもり 無知の科学 (ハヤカワ文庫NF)作者:スティーブン スローマン,フィリップ ファーンバック早川書房Amazon他にもこれがオススメ! などあれば書いていってください。昨年もオススメ記事を書いているけれど、こちらも参考になると思います。 huyukiitoichi.hatenadiary.jp

二〇一〇年代最注目のSF作家による、未来の海上都市を舞台にした〈分断〉と〈結合〉の物語──『黒魚都市』

…『都市』、グレッグ・イーガンの『順列都市』、アーサー・C・クラーク『都市と星』──SF作品で題名に「都市」が入っているとそれだけでワクワクが止まらなくなってくる。それはやはり、SFがシンプルにストーリーを語るだけでなく、その世界観を魅せつけるものであり、SF作品で書名に「都市」を入れることは、この作品は「未来の都市、未来の世界をたっぷりと描写するぞ!」という宣言となっているからだろう。というわけでこの『黒魚都市』だが、期待にたがわぬ都市SFだった。 世界観など 物語の時代は、…

ゼロ年代の海外SFの様相がわかる、危なげなく傑作揃いのアンソロジー──『2000年代海外SF傑作選』

…ェミシン,グレッグ イーガン,アレステア レナルズ発売日: 2020/11/19メディア: 文庫この『2000年代海外SF傑作選』は、文字通り2000年代に発表された海外SFの中から傑作を一冊にまとめたアンソロジーである。2000年? 今は2020年ですけど? と思うかもしれないが、海外SF傑作選は実は18年前の山岸真篇『90年代SF傑作選』以来で、00年代には出ていなかったのだ。それを橋本輝幸が引き継ぎ、『2010年代海外SF傑作選』とセットで(後者は来月)刊行されることに…

自由に自分の幸福度を決められる時、医者はそこに上限を設けるべきだろうか?──『闇の脳科学 「完全な人間」をつくる』

…理由作者:グレッグ イーガン発売日: 2014/12/29メディア: Kindle版僕はこうしたテーマに触れて、グレッグ・イーガンによる、死滅した神経回路に、4000人分のサンプルをまとめた義神経を作り上げる手術を受け、すべてに幸福を感じ、「好み」を4000人分の中から選択しなければならなくなった青年を描く短篇「しあわせの理由」を思い出した。しあわせのない人生は耐え難いが、自由に選択できるしあわせは──正しいのだろうか? 間違っている可能性は、ないのだろうか?「しあわせの理由…

史上もっとも偉大な科学予測の試みとクラークに評された、科学と人類の未来について論じた先駆的名著──『宇宙・肉体・悪魔──理性的精神の敵について』

…、SFも、グレッグ・イーガンなどの一部の作家を除けば、人類がはるか未来、ある種の電子生命となり、あらゆる環境的制約から解き放たれた時に何を望むのかをきちんと描いているとは、とてもいいがたいのだけれども。無限の可能性を有するようになった科学に形態を与えるのは、文学をはじめとした芸術の役割でもある。そしてその芸術はまた科学の影響を受け、すべては「総合知」として相互発展していく。単なる宇宙、人類の未来についての書であるだけでなく、本書はそうした思想的なヴィジョンを指し示す一冊でもあ…

電子生命の生きる道はどこにあるのか──『キャサリンはどのように子供を産んだのか?』

…用、今回はグレッグ・イーガン『ディアスポラ』が用いられている。この作品では、ほとんどの知性が電子世界上のものになっている未来の世界を舞台に、わずかに残った、あえて肉体で生きることを選択した人々や、仮想世界上の存在である人工知性が、物理宇宙の探索に出向く宇宙探索プロジェクト「ディアスポラ」であったりが描かれていく。「電子生命は何をするのか」という、WWシリーズの問いかけのはるか先を描き出した作品といえるだろう。電子生命は、自分の精神のパラメータを自由に変更できる(何に価値を感じ…

《天冥の標》から『息吹』まで、多数の傑作SFが刊行された2019年を振り返る

…F)作者:グレッグ イーガン出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/03/31メディア: Kindle版他、外せない短篇集としては、グレッグ・イーガンによるSF短篇集『ビット・プレイヤー』。本格宇宙SF「孤児惑星」から、色覚を拡張することで我々生身の人間とは違った世界を見るようになった人間を描く「七色覚」まで、様々なテイストを持つイーガンの中から最良の部分が集積されている。意識と知性を問い続ける作家、ピーター・ワッツの良さみが凝縮された傑作選『巨星』。AI、遺伝子操作…

今年も早川書房が海外SF作品の電子書籍セールをはじめたので、新刊を中心におすすめをピックアップ! 2019年版

SF

…F)作者:グレッグ イーガン出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/03/31メディア: Kindle版たとえば、今回の個人的に目玉といえるのはグレッグ・イーガンの二〇一九年に出たばかりの短篇集『ビット・プレイヤー』。イーガンらしいハードな物理描写でまだみぬ世界への冒険をみせてくれる「孤児惑星」、「鰐乘り」、世界の見え方ががらりと切り替わる瞬間を描き出す「ビット・プレイヤー」、色覚を拡張し生身の人間とは違った世界が見えるようになった人間を描く「七色覚」など、小説である…

早川書房のSFコンテストを受賞した二作(ハードSFの期待の新星『オーラリメイカー』、描写で魅せる重厚なSFファンタジィ『天象の檻』)を同時に紹介する。

SF

…メイカー』についてはイーガン好きには刺さりそうな宇宙の果て、生命そのものの行末にたいする長大な視点を常に作品の中で意識させてくれる、「知性と宇宙そのもの」を取り扱った骨太な作品だし、『天象の檻』は描写の密度は厚く、世界観でしっかり魅せてくれながらもその背後にはSF的な歴史が垣間みえるタイプのSFファンタジィで、どちらも可能性を感じさせてくれる逸品だ。一方でどちらも弱点を抱えている作品で、『オーラリメイカー』については遠未来に知性が炭素生物連合と肉体を捨てた知性ネットワークの知…

イーガンの最良の部分が詰まった傑作SF短篇集──『ビット・プレイヤー』

…F)作者: グレッグイーガン,山岸真,Rey.Hori出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/03/20メディア: 文庫この商品を含むブログを見るイーガンの最新邦訳短篇集である! イーガンは最近は『シルトの梯子』やら〈直交〉三部作やら、長篇の刊行が続いていたので、短篇集の刊行としては複数出版社のものをあわせて六冊目、前短篇集の『プランク・ダイヴ』から数えると、八年ぶりだ。そんだけ期間が空くと、たまにSFマガジンに訳出されたものを読んでいたとはいえ、イーガンの短篇ってど…

早川書房が国内作家の電子書籍セールをはじめたので、勝手にオススメをピックアップ

SF

…めあげてみせる傑作。イーガンとはまったく異なる技術的アプローチもおもしろい。〔少女庭国〕作者: 矢部嵩出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2014/05/22メディア: Kindle版この商品を含むブログ (1件) を見る知られていないものの異様なのが矢部嵩『〔少女庭国〕』。ある時女子中学生3年生の仁科羊歯子が卒業式会場へと向かう途中で意識を失い、目をさますとそこは謎の暗い部屋。ドアを開けるとその部屋で寝ていた新たな中3女子が目覚め──部屋に貼られている張り紙によると、脱出…

遅老症を患い、四百歳を超えてなお生きる男の人生──『トム・ハザードの止まらない時間』

SF

…の娘(同じく遅老症)を求める数世紀にも渡る家族の愛の物語など、とにかくぐいぐい描写で惹きつけてくれる作品である。解説の牧眞司さんが『正直に言えば、グレッグ・イーガンやジーン・ウルフといった強面の作品がひしめく《新☆ハヤカワ・SF・シリーズ》で刊行されるのは、読者にとってのハードルを上げやしないか、少々心配でもある。』と若干心配しているように、ドハードなSFではないけれども、素晴らしいSFロマンスであることを保証しよう。 huyukiitoichi.hatenadiary.jp

毎朝目が覚めると別の人間になっている──『エヴリデイ』

SF

…上げていたグレッグ・イーガンの短篇「貸金庫」だろう。どちらも、朝目覚めると昨日とはまったく違う人物になっている。ただしそれは無条件な転移ではなく、だいたい同じ程度の年齢の人間であり、だいたい転移前の場所周辺の人物に転移するなど、重要な部分の設定が似通っている。さすがに似過ぎなので著者自身がイーガンの作品をインスパイア元として言及していないか探してしまったぐらいだが、パクリというわけではなくプロットの方向性は大きく異なっている。アイデンティティの在り処を探求するイーガンに、移り…

早川書房の電子書籍「海外SFセール」がきたので個人的オススメを紹介する2018年版

SF

…しい近未来SFだし、イーガンの新刊『シルトの梯子』も近年のイーガン作品の中では読みやすい方で人類と新しい時空との対決を描き出している傑作である。いや、こうしてふりかえるとこの一年でほんとにおもしろい海外SFがたくさん出たなあ。シルトの梯子 (ハヤカワ文庫SF)作者: グレッグイーガン出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2017/12/28メディア: Kindle版この商品を含むブログ (3件) を見るここで紹介したものはだいたいこのブログに記事があると思うので詳細な内容が知…

デビュー作にして超ド級の傑作ハードSF──『ランドスケープと夏の定理』

SF

…追加されたグレッグ・イーガン(いや、イーガン作品のキャラに萌えないってわけじゃないですよ!)、日本作家でいうならば小松左京みたいなもんで、ちゃくちゃおもしろい。ぜんぜんデビュー作って感じじゃない。21世紀後半を舞台に、22歳で教授になった天才物理学者の姉と、姉には及ばないものの優秀な弟が、世界を激変させる知性に関する3つの新しい定理を解き明かしていく──と、ざっくり表現すればそんな話になる。第一作「ランドスケープと夏の定理」では、”すべての異なる知性の会話を成立させる完全辞書…

意識から意識へ飛び移り数百年を生きる”ゴースト”たち──『接触』

SF

…陣だよね)グレッグ・イーガンの『貸金庫』は毎日目が覚めると違う男性になっている状況を描いた短篇だし、最近で言えばゲームSFアンソロジー『スタートボタンを押してください』の桜坂洋「リスポーン」が死んだ後その近くにいる別の誰かに意識が乗り移ってしまう存在を描いた短篇である。 huyukiitoichi.hatenadiary.jp 接触におけるゴーストの話 この世界で”ゴースト”と呼ばれる存在は、他人の皮膚に触れることで相手の意識を乗っ取ることができる。乗っ取りに時間制限はないの…

初心者向けのオススメSF記事を書きました&補足アフタートーク

…にいきなりグレッグ・イーガンでもいいし。なので、本当に自由に選ぶのであれば対象読者が「何が好きか」というのを取っ掛かりにオススメするのが本当はいいのだろう。 ロボット物とか というわけで、ロボット物、もしくは警察物が好きなら警察☓ロボット『機龍警察』でしょう。アニメ脚本家だった月村了衛氏によるデビュー作で、シリーズの巻が増す毎により複雑化する社会情勢、龍機兵と呼ばれる機甲兵装のバトルは密度を増し、どの巻もむせ返るようなジレンマに満ちあふれている。他、シルヴァン・ヌーヴェル『巨…

納得度の高いランキングが並ぶ、ベストSF2017──『SFが読みたい! 2018年版』

…響動作』、グレッグ・イーガン『アロウズ・オブ・タイム』というか〈直交三部作〉。 huyukiitoichi.hatenadiary.jp 短篇集ならケン・リュウ『母の記憶に』を買っておけばハズレってことはありえないし、なんといってもクリストファー・プリースト『隣接界』はさまざまなジャンルを越境し描写の魔力に酔いしれているうちに最後まで連れて行かれるド傑作。その二つの訳者として関わっている古沢さん(母の〜は共訳)は今回は大フィーバーだとSFが読みたいの海外SF総括原稿にも書いた…

今年読んだものの中で記憶に残っているものを開陳する(小説篇)

…る絶品。出たばかりのイーガン『シルトの梯子』もまーたイーガンが新しい宇宙つくってるよ案件で人類と新時空との戦いが描かれる年間ベスト級SFだ!シルトの梯子 (ハヤカワ文庫SF)作者: グレッグイーガン,Greg Egan,山岸真出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2017/12/19メディア: 新書この商品を含むブログ (4件) を見る ファンタジィ・ライトノベル 多くはないが、ファンタジィ・ライトノベル系統の作品についても触れておこう。ファンタジィで記憶に残っているのは、読…

人類の生存圏を脅かす"新しい時空との対決"を描くイーガン最新刊──『シルトの梯子』

…F)作者: グレッグイーガン,Greg Egan,山岸真出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2017/12/19メディア: 新書この商品を含むブログ (4件) を見るイーガンの新刊、文庫である。ただし原書の刊行は2002年。それはつまり15年間時をあけての邦訳刊行になるわけだ。無名の作家ならともかく、あのイーガンがここまで翻訳されていないということは、それはつまり単純につまらないからなのではないか?? と疑っていたのだけれども、読んでみたらこれが抜群におもしろい。本書の刊行…

早川書房の電子書籍版「海外SFセール」がきたので個人的オススメを紹介する

SF

…) を見る いいからイーガンを読め クロックワーク・ロケット (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)作者: グレッグイーガン出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2015/12/24メディア: Kindle版この商品を含むブログ (1件) を見る現代最高のSF作家と早川書房ではよくコピーがついているイーガンの作品もわんさかセール商品になっている。もともとゴリッゴリのハードSFで科学の最先端を突き進み続けていたイーガンだが、最新邦訳作である〈直交〉三部作はなんと、我々の世界とは異なる…

我々の宇宙はなぜ「できすぎて」いるのか──『マルチバース宇宙論入門 私たちはなぜ〈この宇宙〉にいるのか』

…ークレー校教授、バークレー校理論物理学センター所長などのきちんとした専門家である。あ、あとついでに我々の宇宙とは別の物理法則の宇宙を厳密な整合性で展開する超弩級のハードSF『クロックワーク・ロケット』もオススメしておきます。クロックワーク・ロケット (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)作者: グレッグイーガン,山岸真,中村融出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2015/12/18メディア: 単行本この商品を含むブログを見るhuyukiitoichi.hatenadiary.jp

死の匂いに満ちる、エリスン第三邦訳短篇集──『ヒトラーの描いた薔薇』

SF

…が通り抜けていく、痛切な寂寥感だ。 おわりに とまあざっと紹介してきた。『死の鳥』で『SFが読みたい!』海外篇一位をとったわけだけれども、今年はライバルが強すぎる(現時点ですでにケン・リュウもミエヴィルもイーガンもピーター・ワッツもいるんだよなあ……)ので二冠は難しい気がするが、それでもおもしろいのは確かである。第四短篇集も待ち遠しいところだ。既訳だけでも編めそうな気はするけど、そろそろガッツリ新訳も欲しいところ……。 huyukiitoichi.hatenadiary.jp

2016年のベストSF──『SFが読みたい! 2017年版』

…依頼したのが偉い!)イーガン『シルトの梯子』、ケン・リュウ第二短篇集も楽しみ。河出書房からはダグラス・アダムスの代表作のひとつ《ダーク・ジェントリー探偵事務所》シリーズが出るとか。うーん楽しみだな。ソローキンの長篇『テルリア』、アルジェリアの作家によるディストピア長篇など紹介されている作品すべてがおもしろそう。東京創元社からは巨大ロボットプロジェクトSF『眠れる星の巨人』、脳科学SF『アフターパーティ』、『無限の書』あたりは特に気になる。今年は個人の予定ものせていて、2017…

SFが読みたい! 2017年版 出てます

…そんな口調ではもちろんなかった)。しかし二人と一緒に僕がいるのには自分ですごく違和感を感じますが、まあいるもんはいるのでそういうものだと思ってください。イーガン以後の話とか伊藤計劃以後の話をしていると思います。またちゃんと読んだらSFが読みたいについてはガッチリ書きます。海外SFは新しいものから古いものまで混在した時代がよくわからないランキングになっていますがそれぞれ違った方向性でおもしろいものばかりなのでご確認下され。それにしても、この表紙のインパクトは何回みても凄い……。

信仰に基づくハードSF──『エコープラクシア 反響動作』

…と身震いしてしまう。イーガンは我々の宇宙とは異なる物理法則を持つ〈直交〉三部作を創り上げたが、ワッツはまた別のやり方で異なる物理法則を物語に取り込んでみせたのだ。 凡庸な現生人類の在り方 我々が現実ととらえているものは所詮脳が引き起こしている感覚でしかない。脳に直接パルス刺激を与えることで快感や不快感、運動感覚といったものを操作できてしまう。脳科学/神経科学の世界では、人間が自由意志を持つと想定するのは難しい、という結論を示唆する研究成果がいくつも出てきているが、ワッツもその…

宇宙植民の可能性を問う──『宇宙倫理学入門──人工知能はスペース・コロニーの夢を見るか?』

…人格的ロボットを受容/需要する社会とはどのようなものかを問いかけ、ロボットの宇宙植民への可能性を論じた章もあれば、イーガンやバクスターを挙げ宇宙SFにおける人類の在り方を考察する章もありと話題は広範に渡り、一部専門家だけでなくSFファンを筆頭とした多くの読者が楽しめるだろう。今回は「入門」ということもあってミドルレンジにテーマを絞っているが、他のレンジにまで議論を広げた本格的な「宇宙倫理学」本も読んでみたいものだ。とはいえ最初の一冊として、本書が重要かつ貴重なのは間違いない。

2016年のおもしろかった本、ゲーム、映画を振り返る

…ズ)作者: グレッグイーガン,山岸真,中村融出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2016/08/24メディア: 新書この商品を含むブログ (3件) を見る海外SFも『ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン』が出たり〈叛逆航路〉三部作が完結したりと非常に豊作で、あれもこれもと選びたくなってしまうがなにはともあれイーガンの『エターナル・フレイム』である。人が想像力を働かせ科学を行使していくことの力が、ものすごく純粋な形で描かれている。この〈直交〉三部作は、僕にとっては数あるイー…