基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

アステロイド・マイナーズ by あさりよしとお

タイトルに入っているとおりに(マイナーズ)、かなりマイナな漫画作品である。あんまり売れない、というよりかは異星人とのコンタクトでもなく、派手な戦争があるわけでもなく、地味〜に小惑星で資源を掘ったり生活をしている人たちの鬱屈を短編形式で書いたという意味で(それだけじゃないんだけど)。誰がそんなもの読むんだよ的なマイナさだが、小惑星で暮らす人々の資源不足からくる、鬱屈した状況がハードSF的に描かれているところが面白く、ハードな描写はそれ故リアリティを帯びているので未来を感じさせる。

小惑星で人間が暮らすなんてのは大変なことである。リアルに描いたら悲惨な状況でしかない。水も服も食べ物も小惑星じゃ生産できねーもんだから、物資はすべて地球から打ち上げなくちゃいけない。が、その為のエネルギーは莫大でもーどうせーっちゅうねんといったレベル。それに距離が遠い。宇宙スケールの距離や時間の話は人間の感覚的にはなかなか掴みにくところがある。一回の情報をやりとりするのに二十時間かかりました、とそういう途方もなさを表現してわかってもらうのはなかなか難しいはずだ。実際、何億年、何十億年といったスパンで考えなければいけないことも多い(星の生成、環境が整うまでの時間とか)が人間はある一定のところを超えると比較対象がなくなってよくわからなくなってしまう。

たとえば小惑星から地球へ移動するにも周期の問題がある。火星と地球はいつも一定の距離をくるくると仲良く太陽の周りを回っているわけではなく、ばらばらに回っている為だ。だから再接近時が2年に1度などという「すげえ田舎のバスの停留所だな」みたいな自体が簡単に起こりえるのだ。月で水を採掘しようと思えば(水は月表面にとどまらず、水蒸気は太陽光によってあっという間に拡散してしまうが永久に影になっている部分には水が存在する)、地球との環境の差を考えないわけにはいかない。月の1日は地球の約27日。その間中緯度にいれば、太陽浴びまくりだがその後は何週間も光のまったく届かない極寒のなかにいなければならない。

かように宇宙空間で人間の生活基盤を築こうとすると地球での常識などはあっという間に消し飛んでしまう。これはどの短編でも実感させられることではあるが、人類は、宇宙では、基本的に、生存できないのだ。地球のようになにもしなくても、水さえ飲んでいれば7日間は生きていけるなんて悠長な環境ではない。

空気が漏れたらそれだけで死ぬ。何か環境上のリカバリ不能なミスが起こったら死ぬという過酷な環境の話なのだ。そうした困難さを描いたハードSF小惑星物として本作は他に類をみないのオリジナリティを持っているし、だからこそ刺さる人には強烈に刺さる。僕はそのディティールに完全に引き寄せられてしまう類の人間である。

漫画ではそうした説明をいれこむのは何かと困難であっただろう。説明を多くしすぎれば「ノンフィクションでやれば?」で終わってしまう。あくまでもフィクションとして発表する以上、そこには絵の芸、話の芸が必要だ。ところがあさりよしとお氏はやっぱりプロであるからして、そのあたりの水準はきちんと超えてくる。小惑星に慢性的に発生するリソース不足、困窮の問題を物語的困難に落とし込めて、そこからの開放といった手順を踏んでしっかりと物語に落としこんでくる。

使いたくない表現ではあるけれども、人を選ぶ作品であることは確かだ。だれが小惑星で鬱屈して暮らし人たちの物理学的にリアルな描写が読みたいと思うだろうか。でもそうした状況、描写が面白いと感じる人にとっては、他に類書の存在しない稀有な漫画作品である。短編形式で現状二巻でまとまっているのも嬉しい。ここで完、というわけでもないようだが*1だからといって価値の減じる作品でないことは確かだ。 ちなみに下記の本を読んだのが本作品を知るきっかけだったので、ロケット打ち上げに興味がある人間はこちらについてもオススメ。⇒大人の遊びの本気『宇宙へ行きたくて液体燃料ロケットをDIYしてみた: 実録なつのロケット団』 by あさりよしとお - 基本読書

たしかに本作は、鬱屈したりずいぶんと大変で過酷な環境をそのままに描いているえらく立派なハードSFマイナ漫画ではある。だかろといって人類が宇宙へいけないとか、夢みてんじゃねえぞ、といった後ろ向きな作品でないことは最後に書いておかなければいけないだろう。本作はハードに過酷さを描写しているが、また同時に未来を描いている。人類が小惑星帯や月を自身の探査領域としている日常を、単なる理想論としてではなく科学的背景をもった実現可能なマニフェストとして。

アステロイド・マイナーズ 1 (リュウコミックス)

アステロイド・マイナーズ 1 (リュウコミックス)

アステロイド・マイナーズ 2(リュウコミックス)

アステロイド・マイナーズ 2(リュウコミックス)

山賊ダイアリー

休日の午前中、なんとなくコーヒーでも飲みながらこれからの活動に備えてまったり漫画でも読もうかと思ってKindleで『山賊ダイアリー』を購入。*1こうやって即座に買って読み始められるのは読み手にとっては素晴らしい。衝動買いが増えて本代がかさむけれど。どうも猟師の実録漫画らしい、とだけ情報を得ていて気になっていたのだ。*2そしてこれがめちゃくちゃ面白かった。

狩猟免許をとるところからはじまって、どこでとったらいいのか、銃にはどんなものがあるのか、とっていい動物ととってはいけない動物、そうしたことをレクチャーしてくれるというよりかは、作者の行動を追体験していく形で知っていくことができる。銃を買ったら次はついに狩猟で、山に分け入り川上のカモを狙い、時には農家の依頼を受けてカラスを仕留め、スズメバチを駆除し、ときにはイノシシを仕留めるための罠を仕掛ける。

いやあ、これが実に面白いんだよね。チームで警戒心の強いキジをいかにして仕留めるかの作戦を立てるのも、これまた警戒心の強いカラスをいかにして仕留めるか、自分の姿が見えないように葉っぱで即席のカーテンを作って隠してみたりとそうした試行錯誤の数々。自然が相手だからすべてが計算通りにいくわけではもちろんない。イノシシを仕留めるための罠にたぬきがかかっていたり。

そう、トライアンドエラーがみていて面白いんだろうな。イノシシの足跡を追い、罠を仕掛け、クマに怯え。うまくいかない時期が続いたり、肉がいっぱいとれたりする。そしてうまくいった時はちゃーんと仕留めた動物を家に持って帰って、捌く! 食べない動物は殺さない! これが猟師なのか! 捌き方まで載っていて親切な上に、それを食べているところは下手な料理漫画よりうまそうだ。

最初の方に、作者がデート中に猟師になるといったら「野蛮人」といってフラれるところがギャグっぽく書かれているが*3実際捌いたりしている場面はかなりショッキングだし、つぶらな瞳をした動物を撃ち殺したり叩き殺したりするのは漫画であってもじゃっかん心が痛む。しかし狩って食うっていうのは生きていくための根っこのところだからなあ。

きれーにパッケージングされて、整えられたものしか基本的には売り場には並ばない為に、そうした本質的な部分は今ではすっかり覆い尽くされてしまっている。*4

しかし極言してしまえばそうした能力さえあれば日本政府が明日崩壊しても生きていくことが出来る*5。そうした「自分のやっていることを隅々まで把握して、結果が自分にそのまま跳ね返ってくる」という感覚は僕の生活にはあまりないものだから、そうしたところも読んでいて面白かったのだと思う。

徒手空拳でスズメバチの駆除をするのとか、あまりにも危険過ぎるのだが笑えて仕方がなかったし。車にのったままスズメバチの巣の真下までいって、ちょっとだけ窓を開けて殺虫スプレーを吹きかけるのだがあまりにびびりまくって殺虫スプレーを落下させてしまう! はたしてどうやってスズメバチの巣の真下に落ちたスプレーを奪還すればいいのか!? 

小学生の遊びみたいなことを知識のある大人が大まじめに作戦を立ててやっているので面白い。アホだが。しかも結局そのまま生身で取りにいって刺されているという知恵のなさでこれもまた笑える。全然作戦立ててねえじゃねえか。あとちゃんと病院にはいったほうがいいとおもうよ。*6

感覚としてはリアルオンラインゲームに近いのではないか。一人で狩りに行くこともあるけれど、狩猟チームを組んでチームワークで狩りにいく描写がこの漫画では多い。ほぼ全員初心者からのスタートなので、段々と獲物がレベルアップしていくのだ。たとえばM地区のイノシシは、罠にかかったあと足を引きちぎって逃げ狩猟用の犬を2匹食い殺して、人をみれば襲い掛かってくるという恐ろしい存在らしいのだが、飲みながら「このグループがレベルアップしたらチャレンジしてみよう」といって話をしている。

レベルをあげてミッションをクリアしていくのはそのままゲームのような構造を持っている。そしてとった獲物は実際に自分で食えるのだ。それを肴にまた次の獲物の話をみんなでする。うわあ、なんだか楽しそうだなあ。わくわくしてくる。猟師になろうとか、猟師に興味がなかったとしても、動物を狩って、食うというのは僕らの生活の本質にあたるのだから、読んだらきっと面白いはずだ。

山賊ダイアリー(1) (イブニングKC)

山賊ダイアリー(1) (イブニングKC)

山賊ダイアリー(2) (イブニングKC)

山賊ダイアリー(2) (イブニングKC)

山賊ダイアリー(3) (イブニングKC)

山賊ダイアリー(3) (イブニングKC)

*1:紙では3巻まで出ているが、Kindleではとりあえず2巻まで

*2:作家の野尻抱介先生がTwitterで絶賛していた

*3:あと狩猟仲間の親族の女性がみんな狩ったりさばいたりするのを過剰に嫌がったりするところも描かれていておもしろい

*4:と真面目に書くとそうなる。あまりそんなことを意識して読むような漫画ではないのかもしれないが

*5:冬になったらしらんが

*6:結局行かなかったらしい

ぼくらのよあけ

すごすぎる。傑作だ。不時着した地球外生命体と、小学生たちがコンタクトをとり、秘密を持ち、宇宙に返してやる。最も簡単なあらすじはこのように一行で表現できるものであるし、これだけ聞けばありふれた筋であると言える。しかし、筋の新規さ=話の面白さではない。2038年という未来の、あくまでも日常のテクノロジーを丹念に書き、異性体の目的、それは作品のテーマにもつながってくる、これを我々の日常生活の問題と同時並行で語る構成が見事だ。

2038年なので進歩したテクノロジーが日常化している。だれもが空中に投影できるホログラムで通信を行い、人工知能が発達しオートボットと呼ばれる人のお手伝いロボットがそこら辺にいる。まだすべての家庭に行き渡っている状況ではないようだが、遠からずそうなりそうな予感。このオートボットに搭載されている人工知能との対話も、物語のテーマのひとつだ。

あとSF漫画でガジェットをここまで魅力的に描いているのがすごい。オートボットが飛び回って日常的に挨拶している場面がよいし、ホログラムを実際に使っているところがだらっとしていていかす。日常に使いこなされているSFガジェットって、良いよね。電脳コイルとかさ。小説とは違った良さがある。あと衛星がかっこいい。

僕は思うのだが、話の筋っていうのはありきたりでも全然問題ないんだな。飛先生の傑作『グラン・ヴァカンス』だって、話の筋的には仮想世界リゾートの話で、別に新しい発想があるわけではない(細かい部分で誰もやっていないことをいっぱいやっているとは思うけど)。それよりかはその中身、骨格にどう肉付けし、演出を加えるか。本書は(というか著者なのか)それが抜群にうまい。

あらすじ(Amazonより)

人類が地球から宇宙を見上げている、それぐらいの未来。宇宙大好き小学生、沢渡ゆうまは、謎にみちたモノと出会う。人工知能を搭載した家庭用オートボット・ナナコの体を乗っ取るように出現したそいつは、2010年に地球に降下したとき大気圏突入時のトラブルで故障し、団地に擬態して休眠していた人工知能なのだという。「私が宇宙に帰るのを手伝ってもらえないだろうか?」団地経由の宇宙行き、極秘ミッションが始まった!

物語の本当の始まりを2010年としたことで、時間的にも奥行きが生まれる。書いてしまえば本書のテーマのひとつとは「生命の本質とは変化すること」である。2010年に初めて宇宙船が地球に降り立ち、関わりを持った少年少女だった子供たちは、2038年には子どももいる立派な大人だ。この漫画の主人公は2038年の子供たち。かつての自分たちと同じぐらいの年の息子たちが、かつての自分たちが進められなかったミッションを、先へと進めていく。

子どものころから変化し、純粋な凄いことへのあこがれだけではいられなくなった大人は、エネルギーに満ちあふれて先へ進んでいく子供たちを、ただ見ていることしか出来ないのか? 当然そんなことはない。変化を恐れ、昔に固執するつまらない大人はいる。でも大人になるっていうのは変化することだ。否定したって仕方がない。それを受け入れられる人達はすごく魅力的だ。

なぜなら大人は子供の時より、できることは増える。お金も自由に使えるし、大人が何をやろうが危ないからとかいってケチをつける人はいない。責任をとるとはどういうことかといったことを、身を持ってしっていくこともできる。それはある種の自由を制限することもあるが、でも責任をとっても前にすすめるんだという意志があればそれは自由を推進する武器になる。本書に書かれている大人は、みんなかっこよかった。

僕は子どもの時は自分の感情が制御できなくて、勝負事に負けたりすると物を投げて相手にぶつけようとするような人間だったけど、今はより目的を達成するように、計画的に感情を制御できるようになった。大人になるってことは、僕はずっと思っているのだが、子どもの時より自由になる。すごく楽しいことなんだ。僕は小学生の時よりも中学生の時よりも高校生の時よりも大学生の時よりも今が楽しいんだ。

本書は、抜群に構成がうまい。二巻という構成で、まるで密度のこい映画を一本見たような気分になる。一冊読み終えた時にはもう止まらずに、一話ごとにこの世界の技術状況の解説が入るのだが、それを読む時間すら惜しく、この物語の行く末が気になってページをめくっていた。様々な状況、人間の関係、素直に感情を吐露できないジレンマ、そういった一つ一つの物事が物語のラストと、作品のテーマに収斂していくのが、見事だ。

たとえば、本書では地球外生命体との交流、宇宙へ返すといったミッションの他に、イジメの問題も描かれる。いっけん地球外生命体との交流とは関係ない問題のようにみえるが、実は同じ根っこがある。言葉にしてしまえば簡単で、生命とは変化をするものであり、変化をするとは未知を知ることであり、他人を受け入れることだ。イジメの問題と並べて語られるのはこうした変化をすることの困難さ、他人を受け入れることの難しさである。物語と合わさるとこれが爽快だ。

絵について。僕はよくわからないのだが、構図は最高。どの場面も印象的な演出だ。このあたり、もっとちゃんと言葉を尽くして語りたい。語りたいんだけど、どういったらいいのかわからないんだよね。季節を意識させる蝉の声が常にコマ内に入り込んでいることの意味とかさ。感覚だけで語るのだけど、小学生と夏って、なんか良いよね。それと水が重要な物語なんだけど、この話、冬だったらお寒い話になっちゃう(水、冷たいからさあ)。夏、彗星、宇宙。最高だよ。

好きな作品ほど客観的に見れなくなって、結局自分以外の誰も何を言っているのかよくわからないひどい文章になってしまうものだ。そうなっていてもいいから言いたいのは、僕はこの作品が凄く好きだ。他の人も読んだら喜んでくれると思う。オススメです。あとちなみに余談ですけど、一人星雲賞という企画を始めます。これはその一冊目です。以上。

ぼくらのよあけ(1) (アフタヌーンKC)

ぼくらのよあけ(1) (アフタヌーンKC)

ぼくらのよあけ(2) (アフタヌーンKC)

ぼくらのよあけ(2) (アフタヌーンKC)

『よつばと!』おもしろいなああー

※普通にネタバレがあります。眠い頭で書いているので変なこといってても気にしないで。

よつばと!』10巻読みました。今回も最高に面白い。『バクマン。』では、何て事のない日常を面白く描けたらそれが最強だみたいな話がありましたが(うろ覚え、バクマンじゃなかった可能性すらある)何て事の無い日常を描いてこれだけ面白い『よつばと!』はつまり最強でしょう。積み木で遊んだり、ホットケーキ作ったり、電機屋に行くだけで二話使え上にすでに10巻もそれを描き続けている『よつばと!』は凄まじいのです。

第1巻第1話が7月19日で、それ以降ほぼ1日1話ペース(結構崩れるけど)保って、10巻に至っても未だに10月18日、つまり約3カ月しか経過していないのが恐ろしいです。つまり、読者はよつばの毎日をほぼそのまま受け取っていることになります。これがどのような効果を生みだすのかというと、10巻ともなると過去の出来事からの連想が多く見いだせて大変楽しいのです。

たとえば10巻最初のエピソードで公園に遊びに行く際によつばが乗っている自転車を、よつばが買いにいくエピソードもちゃんと読者は読んでいます。道中よつばととーちゃんが観る、「ちょっと前は骨だった家が出来てくる描写」「ちょっと前には実っていた田んぼの稲が、稲刈りが終わってはげた描写」などなどが途中で挿入されます。

よつばが辿り着く公園も、最初によつばがふらふらと迷いこんでいってえなと初めて出会った場所です。あの頃はブランコに乗れなかったよつばが、今では自由にブランコを乗りこなしています。「よつばがこの街に引っ越してきてからのほとんどのエピソード」を読者は知っています。

よつばが手にする物、よつばが口にするエピソードを全て読者が知っている快感(?)。積み重なっていく日常が、あまりにも綿密に描きこまれている為に、まるで『よつばと!』の世界が実際にあるかのような錯覚すら覚える──といっても言い過ぎではないような気がしまする。

あととーちゃんが良すぎる。この10巻はほんとにとーちゃんが理想的なとーちゃんすぎて感動したのです。第64話のよつばとホットケーキというエピソードでは、よつばが初めてホットケーキを作るお話なのですが、その時のとーちゃんの対応が神対応なのですよ。

こどもひつじとホットケーキという絵本のようなものをよつばが読んで、ホットケーキが作りたい! と言います。まず最初に凄いのが、よつばにホットケーキを作らせてやること。よつばはまだ5歳ですからね、正直ホットケーキを作らせるにはまだ早いような気がします。でも作らせてあげます。

材料を用意して混ぜるところまで終わり、いざ焼くという段階にまで至って、とーちゃんは一度自分で焼いて見せます。そのあと、よつばにも焼かせてやるのです。その際に、ひっくり返すのがどうしてもうまくいかずに、よつばは何度も何度も失敗するのですが絶対に「俺にやらせろ!」なんて言わずに、何度も失敗させてあげるのです。

これ読んでてすげーなーえらいなーと思ってしまいましたよ。僕だったら絶対たとえば親戚の子供なんかがホットケーキうまくひっくり返せなかったらちょちょいのちょいってやってやっちゃいますからね。でもそれってどうなんだろう? 子供が成長するチャンスを、奪っているのではないだろうか?

結局よつばはかなりの失敗を重ねながら、ついに一つ成功させるのです。

僕は、子供の可能性を潰すのは大概は親なんじゃないかと思っています。子供の自由な発想や、失敗をちゃんとやって、学ぶチャンスを、大抵の場合は親が潰していると思います。子供がうまくできないからといっていらいらして変わってやってしまったり、子供の発想を「そんなバカな」などといって上からたたきつぶしたり。

それらが子供の成長をストップさせているとはつゆほども感じずに。

とーちゃんがスゲーのは、よつばの自由すぎる発想を何一つ(よつばの身の安全や、生きていく上でルールから外れること以外)止めずに、どんな失敗でも許容しきるその懐のでかさですよ!! 68話の『よつばとうそ』はとうちゃんの子育ての思想が感じられて良かったのでセリフだけ引用して終わります。

 お茶碗割ったのは別にいい
 窓ガラス割ったのも
 コーヒーこぼしたのも
 別にいい

 …またおさらわっちゃっても?

 別にいい
 失敗するのはよつばの仕事だ

よつばと! 10 (電撃コミックス)

よつばと! 10 (電撃コミックス)

地球を所有する為にはどうしたらいいか──惑星のさみだれ完結!!

※思いつくままに書いているのでナチュラルにネタバレありまくり

惑星を砕く者の物語、これにておしまい。読み終わって、まったくまとまらないまま一応書いておきましょう。十巻、最終決戦、別れ、そして長いエピローグ。最初から綿密に計算されつくしたような構成に、もうぼろぼろ泣きながら読んだ! 感動した! 面白かった! 大好き! ということで最高でした。

それにしても──、最初から最後までブレないお話だったな、というのが読み終わって一番に思う感想でした。ビスケットハンマーによって砕かれる地球を守るために立ちあがり、逆に地球を自分だけのものにする為に惑星を砕く者の物語。最初から最後までこのあらすじにのっとって、そして最後まで完遂した。

地球を征服して自分の物にしてしまおう、という発想は昔から誰もが持ってきているものの、実際に経済を支配するのが地球を支配することだー! といってみたり、人間を全員統治下に置くことが地球を支配することだー!! と割と解釈に幅があるんですよね。その中でも「地球を所有する為に地球をぶち壊す」という発想は飛びぬけて異質で、面白かったなと。なにしろ自分で所有していないものは、破壊できませんからね。しかしこの最終巻にて、「地球を所有する」に別の解釈が生まれる。

そこに至るまでのさみだれの葛藤と雨宮くんの対比というのは、素晴らしいものがあります。さみだれは重い病を抱えていて、自分一人だけで死ぬのが嫌で地球を巻き添えにしたいのかと思いきや、病はどうでもよく、人生が幸福でも何でもなく、地球がただ欲しかったから求めた。しかし成長し、仲間を得て、幸福を知り、しかしその一方で病はある。

「病気を最初に治しておけばここまで厄介な物語にならんかったのに……」とは思うものの、そこで雨宮夕日ですよ! さみだれはある意味、だだっこみたいなものだよな、と読んでいて思ってしまいました。めちゃくちゃ止めてほしいと思いながらも、自分では止められないんですから。しかしこの葛藤が……うまく説明できないですけど、ほんとに良いのですよ。

『言ってくれただろ!! ぼくはきみより高く 飛べるって!!』と言いながら落ちていく夕日を見る時のさみだれの顔とかもうね。毎回表情が素晴らしい(顔が安定しなかったりするが)惑星のさみだれですけれども、この最終巻は最後だけあって、泣き、笑い、と表情の振れ幅がめちゃくちゃ多いです。さみだれの表情は、どれもいいんですよこりが。

最後に辿り着いた、最終巻の副題でもある『全部 きみのためにある』という所有の解釈も、ここまでの葛藤と、そして成長があったからこそでしょう。今にして、段々と成長させていく為に、二人とも凄いひねくれた位置からスタートしたのだろうな、と思いました。ほんとうに、最初から見たら見間違えるようにみんな成長しました。

そして「継承すること」もこの漫画のテーマの一つとして、描き切られていたと思います。東雲さんから雨宮夕日に技が受け継がれ、アニマはさみだれのお姉さんの子孫であり、そして何よりこの長いエピローグが現しているように、「一つの物語が終わっても、また別の物語が始まる」のだ。

まだあんまりまとまっていない上に「少年から大人へなるってどういうことだろう」という点についても色々書きたいし、全巻通しても色々書きたいのでまた落ち着いたら何か書きます。とりあえず読み終わって興奮して書くのはこれぐらいで……。※最後に判明した南雲さんの願いごとは割と今までの株を全て落としかねないぐらいのかっこ悪さでした。

成長したみんなが凄すぎて泣いた。

惑星のさみだれ 10 (ヤングキングコミックス)

惑星のさみだれ 10 (ヤングキングコミックス)

乱と灰色の世界

群青学舎』などを書いてきた入江亜季せんせーの現在の連載作『乱と灰色の世界』の二巻が発売されました。*漫画です。

靴を履くとガキンチョから超美人な大人の女に成長する(幅広いニーズに応えた)魔女っ子が主人公? ついでに家族もみんな魔法使いで、お兄さんの陣はマフラーみたいなのを体に巻きつけると狼になれる魔法使いで、おとーさんは天狗みたいな魔法使いで、お母さんはなんか純粋に凄い魔法使い。そんな彼らの日常を淡々と書いていく。

日常といっても家族一人一人に物語があって、ガキンチョの乱は友達がおらず悩み、成長した姿で変な男に引っ掛かり、お兄さんの陣は妹が心配で心配であたふたしながらギャルゲーの主人公並にモテまくり、お母さんはその超絶な力のせいでなんかヤバイ物が封じてある結界の見張りで家に帰れず、お父さんもそれで気をやんでおります。

一巻の時点ではまだ世界観やキャラクターが掴みず、「絵は圧倒的に凄いけどお話はまだよくわからないな」という感じ。しかし二巻にしてようやく世界観(魔法使いがどの程度いるのか、とか一家がどんな立ち位置なのか、とか)とキャラクター(これで大体出そろったかな?)がわかってきて、「はじまったな」「これで安心してオススメできるな」と思ってこれを書いておるのです。

しかしとにかく絵がスゴイ。表紙からして神がかっておるのですが、女の子がみんなかわいい。いやかわいいっていうか、美人なんですな。記号的な萌えを作ってかわいいキャラクターを描ける人は多くいるでしょうが、年齢相応というか大人の色気的な物を醸し出せる人はそう多くはおりますまい。

キャラクターだとお兄さんの陣に想いを寄せている幼馴染の珊瑚ちゃんがかなりオススメです。昔なつかし大和撫子といった感じで、陣の前で恥ずかしがっているところとかかなりヤバイ……。

乱と灰色の世界 1巻 (BEAM COMIX)

乱と灰色の世界 1巻 (BEAM COMIX)

乱と灰色の世界 2巻 (ビームコミックス)

乱と灰色の世界 2巻 (ビームコミックス)

宇宙兄弟を読んで夢が破れても前に進む勇気を貰う。

五巻まで読んでましたけどつい最近六巻から最新刊まで一気読み。これはやっぱりなんというかべらぼうに面白い。宇宙飛行士になるという夢を持った兄弟の物語です。兄弟のうち弟は夢に一直線に進んでいきすでに宇宙飛行士に。会社に勤めていた兄はリストラされ、そこから遅れて宇宙飛行士を目指すのです。宇宙飛行士になる為の試験、それから訓練が綿密に書かれているところとか最高に面白いんですが、個々の「宇宙飛行士を目指す」人達があまりにも熱い。

当然のことながら、言うまでもないながら、宇宙飛行士になるというのは文字にするほど簡単ではないのです。凄い倍率を勝ち上がって、さらには何度も重ねられる実践的な面接、試験をくぐりぬけていかなくてはならんのです。当然大半の人は落ちる。しかし、そもそもスタートラインにすら立てない人が居る。身長が足りなかったり、歳がいきすぎていたり。気合や根性、努力だけではどうにもならない世界、そしてその壁にぶつかった人たちが、そこで腐ってしまわずにちゃんと前を向いて歩いて行こうとするのが凄いのです。身長が足りなかったせいで宇宙飛行士になれなかった人は、低身長でも着れる宇宙服を作り、歳のせいで宇宙飛行士になれなかった人は後進の為に宇宙開発に加わることを決意する。

過酷であまりにも現実的な宇宙飛行士という職業に向かうという事は、夢がかなうばかりではない事を教えてくれますし、夢がかなわなかったからと言ってそこで全てが終わってしまうわけではない事を教えてくれます。そして後進の為に低身長でも着れる宇宙服を作り、そしてそのおかげで低身長にも関わらず夢に挑戦できる権利を得た男が、感謝の意を製作者に述べに来た時に、どうにもならないこともあるけれど、夢が叶わなかったとしても前に進むことの大切さを我々に教えてくれるのです。素晴らしい!

宇宙兄弟(1) (モーニングKC)

宇宙兄弟(1) (モーニングKC)

宇宙兄弟(2) (モーニングKC)

宇宙兄弟(2) (モーニングKC)

宇宙兄弟(3) (モーニングKC)

宇宙兄弟(3) (モーニングKC)

フィクションだとわかっていても憧れてしまうほど素晴らしい──乙嫁語り2巻感想

フィクションの方が現実よりいいし!

19世紀の草原地帯、シルクロードに生きる遊牧民、そんなところに嫁いで行った、乙嫁の物語の第二巻が発売されました。ちなみに乙嫁とはあとがきによると「若いお嫁さん」「美しいお嫁さん」という意味だとか。相変わらずページをめくるたびに「なんだこりゃぁぁ!(ほんとにページをめくるたびにそう思った)」と叫びたくなるような異常な書き込みの量にびっくりします。絨毯が、服が、馬が刺繍が羊が家が、「現実よりもこまけえんじゃねえか……?」と疑問に思うぐらいに描きこまれているのです。「フィクションは現実を超えた!!」そんな絵を見ていると脳汁が出まくるのですが、どうやら著者もそれは同じようで……。

そういえば時々思うのですが 晴れた昼間にひとりで馬の足やら刺繍やらを描いているとこうふつふつと…ふつふつと………私 今 生きてる!!

こういうのを読むと、やはり世の中には才能というのはあるもんだなぁと思います。どこの世界に晴れた昼間に刺繍をちまちまちまちま描いてそんなに興奮できる人間がいるというのでしょうか。まあ僕は晴れた昼間に刺繍をちまちまと書いた経験がないのでひょっとしたら全人類共通でみんな興奮するのかもしれませんけれども、それにしたって異常……。しかしそういう、どこかしら異常に突出した部分があってこその、この作品の気が狂ったかのような書き込みが実現しているんですよね。

二巻の読みどころ

ちなみに二巻の読みどころですが、色々あります。新キャラクターのパリヤさんは思わずガッツポーズしてしまいそうになるほど可愛いですし、アミルを連れ戻しに来たアミルの親族たちに対して、「ぜってぇに渡さねえ」とばかりに村のみんなが団結し、夫であるカルルクも自分の背丈の倍はあろうかという親父に向かって行く勇猛果敢っぷりに胸が熱くなります。9話のアミルがカルルクを過剰に意識しすぎて照れまくる話ではすっぽんぽんになったアミルさんに胸が熱くなるわ、10話「布支度」では布にまつわるお話が展開され、めくれどもめくれども異常なまでに描きこまれた布、絨毯に圧倒されます

何もかも面白いのですが、ディティールにこった表現のおかげでこの時代の遊牧民の「生き方」みたいなものを知ることが出来るところが好きです。特に、本書で書かれているような「村社会」的なものから、馬や羊に囲まれて、持ち物もそこそこに移動を繰り返すような生活にも、十全に美化された結果であっても憧れを抱きます。いや、なんつーか、「フィクションだとわかっていても憧れてしまうほど素晴らしい」んですよね。嘘だとわかっていても感動してしまう、それは凄いなぁと思いました。

しかし「フィクション」といえども、ここで書かれているような自然と共に生きて、自然と共に死んでいくような生活は現代よりもむしろ幸福なのかもしれません。変わらないかもしれませんし、そもそも比べるような問題じゃあないかもしれませんけどね。たとえば私達は日ごろ座ったり、狭いオフィスの中をちょこまかと動きまわったり、パソコンと向かいあったりしながら一日の大半を過ごすわけですが、体はそう言う風には出来ていない。むしろこの乙嫁語りの二巻の表紙でも描かれているように、自分の食べる物を自分で狩り、自分の着る者を自分で織る、そういう「眼に見える形での成果」がすぐに返ってくる、いってみればゆがみのない生活、そういうのがちゃんと描けているからこそ、素晴らしいと感じるのかもしれないなぁと思いました。

乙嫁語り 1巻 (BEAM COMIX)

乙嫁語り 1巻 (BEAM COMIX)

乙嫁語り 2巻 (ビームコミックス) (BEAM COMIX)

乙嫁語り 2巻 (ビームコミックス) (BEAM COMIX)

「非日常」を奇跡的に生き延びてきた英雄と、「日常」を生き延びるすべを知っている比呂美が出会った時に、何かが起きる!──アイアムアヒーロー 3巻

アイアムアヒーロー三巻が発売されました。一人の弱気で鬱々とした男が、ヒーローになっていく物語だと思われます。一巻と二巻の感想はこっちに書いています。現実も怖いけど、非現実にもパンチ力があるし……──アイアムアヒーロー - 基本読書 いやーそれにしても、相変わらずべらぼうに面白い! 一巻の始まりが冴えない漫画家アシスタントの描写を淡々とする場面なので「また漫画家漫画?」と思ったりもしたのですが、全然違った! そこで描写されていた漫画家の日常は、一から崩壊させる為の描写だったんや!! と気が付いた時の衝撃たるや!

圧倒的な一巻

一巻の凄いところは、主人公の何にもない日常だけで話をほとんど一巻もたせているところだと思います。この「アイアムアヒーロー」という物語が、いったいこれから何を物語るのか、それが何一つ明らかにされないまま、男の日常が淡々と描かれていく。その日常の中に細かい予兆がちりばめられているのだけど、初読で何の情報も仕入れずに読んでいるとなにがなんだかわからない。しかし日常だけでも充分に読ませる世界観を持っているのです。

らき☆すたのようなふわふわとして幸福な日常と、笑えるトークを書いて持たせている訳ではない。一度は漫画家になったが打ち切られ、今はアシスタントをやっているが年齢は35歳……、再度デビューを狙えど編集者からは冷たくされ、年齢のこともあってか八方ふさがり。アシスタントの職場ではキモイ同僚に「一人言をやめろ」とウザがられ、唯一の救いの彼女は前の彼氏の話を嬉々とし、それに強く不安を感じる……というような、そういう、何の未来もなく、じめじめして、情けない人間の日常なのです。

それがなぜ読ませるものになっているのか? たぶん、そこにはリアリティがあるからです。リアリティという言葉、私はまだよくわかってないので使いたくないのですが、凄くダメ人間で、絶望的な状況にいる主人公の英雄を見ていると、「自分もこうなるかもしれない」あるいは「こうなっていたかもしれない」とかすかにでも感じてしまう。「自分」を内包している主人公だからこそ、目が離せないのです。

とても映画的な描写

一巻でのラストをかなり効果的に見せているのが、この漫画の映画的な演出だと思います。カメラが、ず―ーっと主人公に寄り添っている感じなんですよね。何て事の無い日常を、全て撮っている。一人家に帰ってきて、一人寂しくご飯を食べて、一人言を延々と呟いたり不安に襲われたりといった描写を延々と続け、移動の場面に至るまで綿密に全部描写されている。たとえば家から職場までの移動も絶対に省略しない。そのおかげで、世界が凄く身近に感じるという効果はあると思う。そしてそこまで密着した世界観が一巻のラストで崩壊する……。以下ネタバレで三巻。

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鬼かっけぇ──BLAME!

漫画です。ちなみにid:daen0_0 さんにお借り&オススメされました。妙にそそる廃墟で高層な建築物と、無敵主人公が織りなすアクション場面が最高でした。今までdaenさんにはいくつかオススメされてきましたけれども、これを読んでいたらdaenさんの好みの傾向がわかってきたような気がします。筒井康隆、小林泰三、円城塔弐瓶勉……ここに現れる一つの共通項とは……、もちろんSF、ですがそれ以上に「私があんまり友だちになりたくない著者たち」です!(だれにもつたわんねぇ!)

その中でも特に、弐瓶勉さんは特にお友達になるのは厳しそうです。なんか出会った時に挨拶したっきり、二度と会話が成立しないような気がします。それどころか、挨拶をした瞬間にぶん殴られそうです(あくまで私のイメージです)。

まったく説明が行われない

著者の方に対してそんな理不尽なイメージを持ってしまうぐらい、このBLAME!という漫画は、不親切なんですなぁ。これ、一回読んだだけじゃ絶対に意味がわからないと思います。主人公は無口で何もしゃべらないし、周りにいる人たちも読者のことがまるで見えていないかのように、わかりやすく説明してくれたりしません。何の説明も前提知識も共有せずに、専門用語をばりばり使って、異次元会話を繰り広げます。

とりあえず二回読んでわかったお話の流れと言えば、
1.遥か彼方の超未来のお話である。
2.人々はネットにつながって、超高層体の中で暮らしていたが、災厄によりネットに繋がる権利を失い、ネットのセーフティガードのような存在から敵と診断され攻撃されるようになる。
3.主人公は「ネット端末遺伝子」を持った人間を探している。
4.主人公は何でもぶっ壊せる最強の武器「重力子放射線射出装置」を持っている。しかもどんな攻撃を喰らっても、対してダメージにはならない。確実に人間じゃない。
5.ネット端末遺伝子を持った人間が居れば、ネットにアクセスすることによって現在の人間がシステムから放棄されてしまった状態から抜け出すことが出来る(?)

あとはもうネタバレですな。これぐらいで。

全然わかんねぇ、みたいな話ですが基本的に把握しておけばいいのは、「主人公は何かを探して旅をしている」だけでいいんですよね。なので普通に読んでいればストーリーを追っていくことはできる。このストーリーの基本は「主人公が探し物をして旅をしていたらしょっちゅう誰かに襲われて戦って殺す」ですからね。ストーリーなんか、賞z機どうでもいいのです。その間ずっと建築物を異常なディティールの細かさで書き続け、無音で会話も一切しないアクションシーンの連続を「アニメのコマ割か!!」というぐらいに執拗に書き続ける。アクションに酔いしれろ! と言わんばかりです。中でも、絵の描き込みは凄まじいものがあります。

鬼かっけぇ

ベルセルク」を読んでいると、「この絵はいったい何がどうやったら思いつくんだよ……」と絶句してしまうようなかっちょいい絵や構図があるのですが、BLAME!に関するかっこよさはこれに通じているような気がします。頭の中の映像をそのまんま漫画にした感じと言うか。絵というか造形のセンスって、基本的には言葉にできないのでうまくいえないのですが……。BLAMEは特に背景の描き込みと、人間以外の気持ち悪いモンスターを描くのがべらぼうにうまい。人間性を疑ってしまうようなものを次々と描きます。背景は完全に想像力で組み立てられているような不思議高層建築物ですし、もう長いこと人間がいないので廃墟感がパネェです。無駄に背景ばっかりが画面に映るので、ひょっとしてこの人、物語が描きたいっていうかただ単に超高層建築物と廃墟とモンスターが描きたいだけなのじゃないかと疑ってしまうぐらい。

正直……

正直主人公は無敵すぎてまったく緊張感がないし、誰も知らない複雑な造語をたくさん使っているので話が難しくなっているだけで、ほんとはこの話、大したことないだろ……とも思いましたけどでもやっぱり、異常に描きこまれた虚無感漂う廃墟を、一目みたら忘れられなくなりそうな奇矯なモンスターを、超無敵な主人公が超無敵な銃で破壊しまくるのは楽しいですよ爽快ですよ。うん、特にここで描かれている建物は正直圧巻なので、一度ブックオフでもどこでもいいのでパラパラっとめくってみたらいいじゃない、と思いました。ちなみに下は一番好きな7巻の表紙です。

BLAME!(7) (アフタヌーンKC)

BLAME!(7) (アフタヌーンKC)

惑星のさみだれ9巻

本日惑星のさみだれ9巻が発売されました。いやーやっぱり面白いです。次の10巻で完結ということで、物語はもう終盤も終盤、地球を砕こうとするアニムスと、地球を砕こうとするアニムスを倒して自分で地球を砕こうとする夕日とさみだれのコンビという、なんだかねじくれたスタートを切ったこの物語も、ついにアニムスとの最終決戦が始まりました。サブタイトルも最後の戦い、ですしね。今まで積み重ねてきた一つ一つの要素が、一気に展開するのです。これで盛り上がらなかったら嘘と言うものでしょう。

内容としては、前半部でなぜアニムスが地球をぶっ壊そうと思ったのか、そしてアニマがそれに対して制限をかすような、ゲームのルールを作ったのかの理由が明かされます。あとはさみだれと夕日の過去編、なぜ願いを一つだけかなえることが出来るのに、自分の病気を治すことにその願いを使わなかったのか。その理由。そして最後に最終決戦です。いやー燃える、っていうか展開が速いなぁー。地球の上でハンマーとヒヨコのおもちゃみたいなのが殴り合っている場面とか、もう爽快すぎて笑っちゃいます。以下ネタバレ。今手元に既刊がないので、細かいところにまで記憶が行き届いていないかもしれないです。

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