休日の午前中、なんとなくコーヒーでも飲みながらこれからの活動に備えてまったり漫画でも読もうかと思ってKindleで『山賊ダイアリー』を購入。*1こうやって即座に買って読み始められるのは読み手にとっては素晴らしい。衝動買いが増えて本代がかさむけれど。どうも猟師の実録漫画らしい、とだけ情報を得ていて気になっていたのだ。*2そしてこれがめちゃくちゃ面白かった。
狩猟免許をとるところからはじまって、どこでとったらいいのか、銃にはどんなものがあるのか、とっていい動物ととってはいけない動物、そうしたことをレクチャーしてくれるというよりかは、作者の行動を追体験していく形で知っていくことができる。銃を買ったら次はついに狩猟で、山に分け入り川上のカモを狙い、時には農家の依頼を受けてカラスを仕留め、スズメバチを駆除し、ときにはイノシシを仕留めるための罠を仕掛ける。
いやあ、これが実に面白いんだよね。チームで警戒心の強いキジをいかにして仕留めるかの作戦を立てるのも、これまた警戒心の強いカラスをいかにして仕留めるか、自分の姿が見えないように葉っぱで即席のカーテンを作って隠してみたりとそうした試行錯誤の数々。自然が相手だからすべてが計算通りにいくわけではもちろんない。イノシシを仕留めるための罠にたぬきがかかっていたり。
そう、トライアンドエラーがみていて面白いんだろうな。イノシシの足跡を追い、罠を仕掛け、クマに怯え。うまくいかない時期が続いたり、肉がいっぱいとれたりする。そしてうまくいった時はちゃーんと仕留めた動物を家に持って帰って、捌く! 食べない動物は殺さない! これが猟師なのか! 捌き方まで載っていて親切な上に、それを食べているところは下手な料理漫画よりうまそうだ。
最初の方に、作者がデート中に猟師になるといったら「野蛮人」といってフラれるところがギャグっぽく書かれているが*3実際捌いたりしている場面はかなりショッキングだし、つぶらな瞳をした動物を撃ち殺したり叩き殺したりするのは漫画であってもじゃっかん心が痛む。しかし狩って食うっていうのは生きていくための根っこのところだからなあ。
きれーにパッケージングされて、整えられたものしか基本的には売り場には並ばない為に、そうした本質的な部分は今ではすっかり覆い尽くされてしまっている。*4
しかし極言してしまえばそうした能力さえあれば日本政府が明日崩壊しても生きていくことが出来る*5。そうした「自分のやっていることを隅々まで把握して、結果が自分にそのまま跳ね返ってくる」という感覚は僕の生活にはあまりないものだから、そうしたところも読んでいて面白かったのだと思う。
徒手空拳でスズメバチの駆除をするのとか、あまりにも危険過ぎるのだが笑えて仕方がなかったし。車にのったままスズメバチの巣の真下までいって、ちょっとだけ窓を開けて殺虫スプレーを吹きかけるのだがあまりにびびりまくって殺虫スプレーを落下させてしまう! はたしてどうやってスズメバチの巣の真下に落ちたスプレーを奪還すればいいのか!?
小学生の遊びみたいなことを知識のある大人が大まじめに作戦を立ててやっているので面白い。アホだが。しかも結局そのまま生身で取りにいって刺されているという知恵のなさでこれもまた笑える。全然作戦立ててねえじゃねえか。あとちゃんと病院にはいったほうがいいとおもうよ。*6
感覚としてはリアルオンラインゲームに近いのではないか。一人で狩りに行くこともあるけれど、狩猟チームを組んでチームワークで狩りにいく描写がこの漫画では多い。ほぼ全員初心者からのスタートなので、段々と獲物がレベルアップしていくのだ。たとえばM地区のイノシシは、罠にかかったあと足を引きちぎって逃げ狩猟用の犬を2匹食い殺して、人をみれば襲い掛かってくるという恐ろしい存在らしいのだが、飲みながら「このグループがレベルアップしたらチャレンジしてみよう」といって話をしている。
レベルをあげてミッションをクリアしていくのはそのままゲームのような構造を持っている。そしてとった獲物は実際に自分で食えるのだ。それを肴にまた次の獲物の話をみんなでする。うわあ、なんだか楽しそうだなあ。わくわくしてくる。猟師になろうとか、猟師に興味がなかったとしても、動物を狩って、食うというのは僕らの生活の本質にあたるのだから、読んだらきっと面白いはずだ。
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