基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

2014-11-01から1ヶ月間の記事一覧

森博嗣・泣き虫弱虫・グッデイ

話のまくら さあさあさあ2014年11月も本日で終了になりましてとうとう2014年最後の月へと移行してしまう今日この頃みなさんいかがお過ごしでしょうか。僕はといえば今年はゆっくりと休養をとってぜんぜん働かなかったので元気いっぱいだし2014…

孤独の価値 (幻冬舎新書) by 森博嗣

思考を自由にするために、思考をする。この『孤独の価値』を読んでいて、森博嗣さんがここ何年か出している新書群を一言で言い表すなら、こういう表現が良いのではないかと思った。たとえば昨年出版された「やりがいのある仕事」という幻想 (朝日新書) - 基…

グッデイ (ビームコミックス) by 須藤真澄

我々は今のところ将来的に全員死ぬ。小学校入学より確実に死ぬのだから、みんな準備しておけばよく、なぜそれじゃあこの世界では死別がとても悲しいものかのように描かれるのだろうと不思議に思うところだ。しかしそれはいつ死ぬかはほとんどの場合、当人に…

セラピスト by 最相葉月

記事を書くかどうか結構悩んだ本(内的なブログに載せる基準に達しているか否かの判断)だったけれども、やっぱり面白かったから書くことにした。内容としては河合隼雄と中井久夫のカウンセリング界隈では有名な二人を主軸にして、箱庭療法やカウンセリング…

宇宙人相場 (ハヤカワ文庫 JA シ 4-3) by 芝村裕吏

SF

いやあ、これは素敵なお話だ。読み終えたあとしみじみとして、じわじわと心地よさが広がっていくような。特別なことはほとんど起こらない。宇宙人と相場という異質な単語が組み合わされているものの、別に宇宙人が人間には理解できない金融取引をするとか、…

インターステラー観た(ネタバレしまくり)

観た。いやー凄かったなあ。もう観終えた後呆然としてこれはいったいなんだったんだろうと考えているうちにあっという間にスタッフロールが終わってしまった。長かった。トイレに行く間もないほどの緊迫感の連続だ。とにかく金額を集める上で通るのが不思議…

泣き虫弱虫諸葛孔明 by 酒見賢一

第四部を読んでいてもたってもいられなくなったので、この類まれな傑作三国志小説について、簡単なシリーズ総評を書いておく。シリーズは現在まだ続く。第一部、第二部は文庫化済みであり、第三部はまだ。第四部は今日出た。 酒見賢一が獲得した新しい語りの…

偏愛蔵書室 by 諏訪哲史

普段本についてあれこれ書いているせいか、あまり人が本についてあれこれ書いた文章を読みたくないと意識的に避けてしまう。出来が悪ければイライラするし、出来が良ければ自分が書こうと思えなくなってしまうからだけど、それ以前に好みの問題もある。僕は…

エウロペアナ: 二〇世紀史概説 (エクス・リブリス) by パトリクオウジェドニーク

僕が普段よく行く、平日の12;00〜14;00に来た人は500円でカットしてもらえるという10分カット真っ青の激安髪切り屋では切り終わった後必ず「髪すいときますか」と聞いてくる。すいとくってなんやねん、すいとくことによるメリットとデメリットを提示せえや…

見てしまう人びと:幻覚の脳科学 by オリヴァー・サックス

我々は、現実をありのまま見ているわけではない。赤外線も見えなければ紫外線も見えないし、網膜に刺激がきてから知覚が成立するまでに約100ミリ秒の遅れが存在している。我々が見ている世界は常に現実から遅れ、脳が処理した映像を「見せられている」と言え…

地上最後の刑事 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) by ベン H ウィンタース

書名からして出オチ感半端ないけれども、人類が滅亡しかかっていて小さい村に一人だけいる刑事──とかそういう意味ではなく、半年後に小惑星が地球に衝突して人類はあぼーんするよという世界で懸命に刑事稼業に励む刑事さんを追っていくお話だ。こういう大味…

だれの息子でもない by 神林長平

SF

今は亡き伊藤計劃という作家と、神林長平先生を思わせる作家の対話形式のフィクション『いま集合的無意識を、』の中で神林長平のような作家は次のように語っている。 「もちろんそれは大きな脅威だったと思うけれど、それはむしろ、語るべきことを彼の内面か…

あえて信者になるということ

宗教の話ではあるが、宗教の話ではない。キリストだなんだのとそういう話ではなく、ある好きなコンテンツ制作者に対しての、態度の話である。小説にしろマンガにしろ、そうした「作品」は大抵の場合決まった値段で売られているが、実際的には「その人しか生…

You Are Here: Around the World in 92 Minutes by Chris Hadfield

Chris Hadfieldといえば100万人を超えるTwitterフォロワーを抱えるカナダの宇宙飛行士で、宇宙ステーションに滞在中日々Twitterに映像を投稿していた元気なオヤジだ。日本でも若田光一氏など、最近はSNSで宇宙からの写真、生活をアップしてくれる人が増えて…

ハケンアニメ! by 辻村深月

特に異常な事件に巻き込まれるわけでも、恋愛をメインにするわけでも、魔法が出てきたりドラゴンが出てきたりするわけでもなく、ある特定の業種で働く人たちを書く──基本的にはお仕事小説。ananに連載していたというから驚きだが、ばりばり働く女性のイメー…

全滅領域 by ジェフ・ヴァンダミア

SF

突如地球上に現れた謎の領域──そこでは生態系が通常とは異なる変化を遂げ、異様な雰囲気をまとっている……。調査隊が幾度も送り込まれ、その度に不可思議な事実が発覚するか、あるいは何事かが起こって帰ってこないのだ……と聞くと大変わくわくしてくるもので…

ドミトリーともきんす by 高野文子

日本では屈指の知名度と実績を誇る4人の科学者───朝永振一郎、牧野富太郎、中谷宇吉郎、湯川秀樹がそれぞれみんな大学生で、ドミトリーともきんすという寮に住んでいるという架空の設定で、それぞれの生活や、後に彼らが書く本の片鱗を伺わせるようなエピソ…

サイタ×サイタ (講談社ノベルス) by 森博嗣

Xシリーズ最新刊。レトロでシンプル。今回はあらすじだけを読むと、なかなか飛ばしているというか派手な感じ。なにしろ連続で発火現象を起こす危うい奴が街にいるのだからなんだかもうそれだけで危ない。爆弾ではなくたんに発火現象を起こしているだけだか…

エネルギー問題入門―カリフォルニア大学バークレー校特別講義 by リチャード・A.ムラー

これは素晴らしかったなあ。タイトルこそエネルギー問題入門だが、原題はEnergy for Future Presidents で、一貫して「これを聞いているあなたが将来米国Presidentになった時どうしたらいいか」という問いかけによって進行していく。著者はUCバークレー物理…

未来探偵アドのネジれた事件簿: タイムパラドクスイリ (新潮文庫) by 森川智喜

タイムパラドクス × 推理 = タイムパラドクス入り TIME PARADOX times DETECTIVE equals the entrance into TIME PARADOX 時空を飛び越え事件を解決するミステリはこれまでいくつも出てきたがここまで軽快に、簡単に時空転移、タイム・トラベルとその矛盾を…

フランクフルト学派 -ホルクハイマー、アドルノから21世紀の「批判理論」へ (中公新書) by 細見和之

正直に白状するとフランクフルト学派って何なんだろうというレベルから読み始めた。フランクフルト学派に連なる人達の人となり、そしてどのような人間的関係性と思想的関係性があり、後に受け継がれていった部分は何で、受け継がれなかったものは何かをキチ…

島津戦記・パラフィクション・エボラ

先月に引き続きコールドスナップ・対談集・未必のマクベス - 基本読書 2014年10月も終了致しましたので月報のような形で月を振り返っていこうと思います。10月もいろいろ読みましたけど、フィクションよりもノンフィクションが強かったんじゃないかなと思い…