基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

ミステリ

技術がもたらした価値観の変容が事件へと密接に関わってくるSFミステリ短篇集──『ベーシックインカム』

ベーシックインカム作者: 井上真偽出版社/メーカー: 集英社発売日: 2019/10/04メディア: 単行本この商品を含むブログを見るベーシックインカムと言うと、普通は全国民に一律3万なり10万なりといった一定額を定期的に振り込み続ける、最低給付保障をさす言葉…

日本の新本格ミステリに傾倒した著者による、もう二度と戻ってくることのない青春が蘇るような本格学園華文ミステリ──『雪が白いとき、かつそのときに限り』

雪が白いとき、かつそのときに限り (ハヤカワ・ミステリ)作者: 陸秋槎,中村至宏,稲村文吾出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/10/03メディア: 新書この商品を含むブログを見る前漢時代の百合ミステリで(僕の)度肝をぬいた『元年春之祭』の陸秋槎による学…

SFミステリアドベンチャーゲームの快作──『AI:ソムニウムファイル』

AI: THE SOMNIUM FILES(アイ: ソムニウム ファイル) -Switch 【CEROレーティング「Z」】 (【予約特典】スペシャルサウンドトラック~REVERIES IN THE RaiN~ 同梱)出版社/メーカー: スパイク・チュンソフト発売日: 2019/09/19メディア: Video Gameこの商品を含…

タイムループ&人格入れ替わり殺人ミステリ──『イヴリン嬢は七回殺される』

イヴリン嬢は七回殺される作者: スチュアート・タートン,三角和代出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2019/08/09メディア: 単行本この商品を含むブログを見るタイムループ物のミステリィとか完全に大好きなやつなので、この『イヴリン嬢は七回殺される』がそ…

極上の華文ミステリィ短篇集──『ディオゲネス変奏曲』

ディオゲネス変奏曲 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)作者: 陳浩基,稲村文吾出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/04/03メディア: 新書この商品を含むブログを見る著者は警察小説『13・67』で一躍日本で名を馳せた陳浩基であり、本書は著者による全17篇を収…

みすぼらしい探偵に落ちぶれたアドルフ・ヒトラーを描く、歴史改変奇譚──『黒き微睡みの囚人』

黒き微睡みの囚人 (竹書房文庫)作者: ラヴィ・ティドハー出版社/メーカー: 竹書房発売日: 2019/01/31メディア: 文庫この商品を含むブログを見るヒーロー物の要素と第二次世界大戦以後の戦争を統合して描いた、ギーク&ポリティカルとでもいうような『完璧な夏…

世界中のギャングから命を狙われる拳銃使いの親子──『拳銃使いの娘』

拳銃使いの娘 (ハヤカワ・ミステリ1939)作者: ジョーダン・ハーパー,鈴木恵出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/01/10メディア: 新書この商品を含むブログを見る『メンタリスト』の脚本家として知られるジョーダン・ハーパーの第一長篇がこの『拳銃使いの…

怪奇幻想小説の傑作──『ピクニック・アット・ハンギングロック』

ピクニック・アット・ハンギングロック (創元推理文庫)作者: ジョーン・リンジー,井上里出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2018/12/20メディア: 文庫この商品を含むブログ (1件) を見る本書は『ピクニックatハンギング・ロック』という大ヒット映画の原作…

無数のフィクション・キャラクターが入り乱れるホームズ・パスティーシュ──『モリアーティ秘録』

モリアーティ秘録〈上〉 (創元推理文庫)作者: キム・ニューマン,北原尚彦出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2018/12/12メディア: 文庫この商品を含むブログを見るモリアーティ秘録〈下〉 (創元推理文庫)作者: キム・ニューマン,北原尚彦出版社/メーカー: …

二つの事件が密接に絡み合う極上のフーダニット──『カササギ殺人事件』

カササギ殺人事件〈上〉 (創元推理文庫)作者: アンソニー・ホロヴィッツ,山田蘭出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2018/09/28メディア: 文庫この商品を含むブログを見るカササギ殺人事件〈下〉 (創元推理文庫)作者: アンソニー・ホロヴィッツ,山田蘭出版社…

恒星間宇宙船で起こる密室大量殺人事件──『六つの航跡』

六つの航跡〈上〉 (創元SF文庫)作者: ムア・ラファティ,加藤直之,渡邊利道,茂木健出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2018/10/11メディア: 文庫この商品を含むブログを見る六つの航跡〈下〉 (創元SF文庫)作者: ムア・ラファティ,加藤直之,渡邊利道,茂木健出…

存在しないものを奪い返す──『兄弟の血』

兄弟の血―熊と踊れII 上 (ハヤカワ・ミステリ文庫)作者: アンデシュルースルンド,ステファントゥンベリ,ヘレンハルメ美穂,鵜田良江出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2018/09/19メディア: 文庫この商品を含むブログを見る兄弟の血―熊と踊れII 下 (ハヤカワ・…

華文ミステリにして重い百合──『元年春之祭』

元年春之祭 (ハヤカワ・ミステリ)作者: 陸秋槎,稲村文吾出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2018/09/05メディア: 新書この商品を含むブログを見る華文ミステリである。著者の陸秋槎さんは現在金沢に住んでいるようだが、本自体は普通に中国語で書かれ、刊行さ…

サウス・セントラル・ロサンゼルスのシャーロック・ホームズ──『IQ』

IQ (ハヤカワ・ミステリ文庫)作者: ジョーイデ,熊谷千寿出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2018/06/19メディア: 文庫この商品を含むブログを見る日系アメリカ人であるジョー・イデによる『IQ』は、黒人を主人公に据え、『ベイカー街の脳をサウス・セントラル…

十年単位でじわじわと広まり、浸透していくような感動が──『ψの悲劇 The Tragedy of ψ』

ψの悲劇 The Tragedy of ψ (講談社ノベルス)作者: 森博嗣出版社/メーカー: 講談社発売日: 2018/05/09メディア: 新書この商品を含むブログを見るGシリーズ第11作目。はじまったのが2004年だから、もう14年目になる。途中で長い作中での時間・関係性の流れを表…

連続殺人鬼の娘は、サイコパスなのか?──『善いミリー、悪いアニー』

善いミリー、悪いアニー (ハヤカワ・ミステリ文庫)作者: アリランド,国弘喜美代出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2018/01/24メディア: 文庫この商品を含むブログを見る九人の児童を殺害した連続殺人鬼、ルース・トンプソンはその娘の告発によって逮捕された…

『銀河ヒッチハイク・ガイド』の著者による、あまりにも無茶苦茶な探偵小説──『ダーク・ジェントリー全体論的探偵事務所』

ダーク・ジェントリー全体論的探偵事務所 (河出文庫)作者: ダグラスアダムス,Douglas Adams,安原和見出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2017/12/06メディア: 文庫この商品を含むブログ (1件) を見るNetflixに『私立探偵ダーク・ジェントリー』というドラ…

人を殺しに、少年たちは二〇〇〇マイルの旅に出る──『東の果て、夜へ』

東の果て、夜へ (ハヤカワ・ミステリ文庫)作者: ビルビバリー,熊谷千寿出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2017/09/07メディア: 文庫この商品を含むブログを見る麻薬斡旋所で見張り役を任されていた15歳の少年イーストは、ふとした油断から警察のガサ入れを許…

墜落するプライベートジェット、生き残った二人のヒーローが直面する現実──『晩夏の墜落』

晩夏の墜落 上 (ハヤカワ・ミステリ文庫)作者: ノア・ホーリー,川副智子出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2017/07/06メディア: 文庫この商品を含むブログ (1件) を見る晩夏の墜落 下 (ハヤカワ・ミステリ文庫)作者: ノア・ホーリー,川副智子出版社/メーカー…

ゾンビが跳梁跋扈する世界で発生する密室殺人──『わざわざゾンビを殺す人間なんていない。』

わざわざゾンビを殺す人間なんていない。作者: 小林泰三,YKBX出版社/メーカー: 一迅社発売日: 2017/06/30メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る「全人類の長期記憶が一斉に不可能になったら」という展開を大真面目に描く『失われた過…

図書館から借り出される、書物としての探偵──『書架の探偵』

書架の探偵 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)作者: ジーンウルフ,青井秋,酒井昭伸出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2017/06/22メディア: 単行本この商品を含むブログを見る本書『書架の探偵』はジーン・ウルフによる最新刊である。本国ではいつ頃刊行されたのか…

救う側は誰が救ってくれるのか──『われらの独立を記念し』

われらの独立を記念し (ハヤカワ・ミステリ)作者: スミス・ヘンダースン,鈴木恵出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2017/06/08メディア: 新書この商品を含むブログを見る本書『われらの独立を記念し』はスミス・ヘンダースンの長篇デビュー作。79年から81年に…

能力者たちの騙し合いゲーム、参加者は全員嘘つき──『最良の嘘の最後のひと言』

最良の嘘の最後のひと言 (創元推理文庫)作者: 河野裕出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2017/02/27メディア: 文庫この商品を含むブログ (1件) を見る『サクラダリセット』の河野裕さんによる書きおろしの文庫小説である。街で起こる事件を能力者たちの力を…

正義の在り処を問う──『制裁』

制裁 (ハヤカワ・ミステリ文庫)作者: アンデシュ・ルースルンド,ベリエ・ヘルストレム,ヘレンハルメ美穂出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2017/02/23メディア: 文庫この商品を含むブログを見る昨年(16年)大変な評判をよんだ『熊と踊れ』という犯罪小説の著…

東京創元社編集者の本語り──『ぼくのミステリ・クロニクル』

ぼくのミステリ・クロニクル作者: 戸川安宣,空犬太郎出版社/メーカー: 国書刊行会発売日: 2016/11/17メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る北村薫、有栖川有栖、宮部みゆきなどそうそうたる面々をデビューさせ、東京創元社で編集から社長、会長…

拉致監禁された女子高生妊婦の凄惨な復讐/脱出劇──『メソッド15/33』

メソッド15/33 (ハヤカワ文庫NV)作者: シャノン・カーク,横山啓明出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2016/11/09メディア: 文庫この商品を含むブログを見る拉致監禁された天才女子高生の妊婦が、1ヶ月以上にわたる監禁生活で道具を一つ一つ集め、その全てを用…

怪物にだって論理は通用します──『アンデッドガール・マーダーファルス』

アンデッドガール・マーダーファルス 1 (講談社タイガ)作者: 青崎有吾出版社/メーカー: 講談社発売日: 2015/12/17メディア: 文庫この商品を含むブログ (8件) を見るアンデッドガール・マーダーファルス 2 (講談社タイガ)作者: 青崎有吾出版社/メーカー: 講談…

"議論"か、さもなくば"死"か──『十二人の死にたい子どもたち』

十二人の死にたい子どもたち作者: 冲方丁出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2016/10/15メディア: 単行本この商品を含むブログを見る冲方丁さんといえば〈マルドゥック〉シリーズを筆頭としたSF小説か、あるいは『天地明察』に連なる一連の時代小説、または…

『その女アレックス』に続くカミーユ警部三部作完結篇──『傷だらけのカミーユ』

傷だらけのカミーユ (文春文庫) (文春文庫 ル 6-4)作者: ピエール・ルメートル,橘明美出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2016/10/07メディア: 文庫この商品を含むブログ (3件) を見るランキング一位や賞をとりまくり、日本では60万部を突破した『その女アレ…

善良な始末屋のジレンマ──『その雪と血を』

その雪と血を(ハヤカワ・ミステリ) (ハヤカワ・ミステリ 1912)作者: ジョー・ネスボ,鈴木恵出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2016/10/06メディア: 新書この商品を含むブログを見るわずか175ページほどだが、読者がすぐに惚れてしまうであろう魅力的な主人公…