基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

文学

「折りたたみ北京」の郝景芳による、中国から見た1984年──『1984年に生まれて』

1984年に生まれて作者:郝景芳発売日: 2020/11/24メディア: Kindle版この『1984年に生まれて』は、郝景芳によって書かれた、中国の1984年前後から00年代頃までの情景が描かれていく長篇小説である。郝景芳はヒューゴー賞を受賞した「折りたたみ北京」をは…

地上で最後の一人となった女性による、美術と哲学と狂気の内面世界を描いた実験小説──『ウィトゲンシュタインの愛人』

ウィトゲンシュタインの愛人作者:デイヴィッド・マークソン発売日: 2020/07/17メディア: Kindle版デイヴィッド・マークソンによるこの『ウィトゲンシュタインの愛人』は、何らかの理由で地球上で最後の一人になった女性が、淡々とその生活と過去のことを記し…

全米図書賞受賞、あまりにも重厚に屈折した心情を描き出していく「親子」の物語──『歌え、葬られぬ者たちよ、歌え』

歌え、葬られぬ者たちよ、歌え作者:ウォード,ジェスミン発売日: 2020/03/25メディア: 単行本本の買い方にも種類がある。作家が好きなケースもあるし、SFだから、好きそうな題材だからといったジャンル買い、ジャケ買いなど。そういう意味でいうと、本書は圧…

孤独な少女の人生を描く、全米500万部の話題に劣らぬ内容を伴った超ベストセラー──『ザリガニの鳴くところ』

ザリガニの鳴くところ作者:ディーリア・オーエンズ発売日: 2020/03/05メディア: 単行本(ソフトカバー)この『ザリガニの鳴くところ』は著者ディーリア・オーエンズが70歳になってはじめて執筆小説であると同時に、またたく間に全米500万部、2019年のアメリ…

類まれなる蝋人形館を作り上げた女性の生涯を描き出す、傑作歴史小説──『おちび』

おちび作者:エドワード・ケアリー出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2019/11/29メディア: 単行本〈アイアマンガー三部作〉のエドワード・ケアリー最新作は、イギリスのロンドンにある蝋人形館マダム・タッソー館を創立したマリー・タッソーについての物語…

生態系を救うため、様々な過去を持つアウトサイダーらが結集する、パワーズ最新作──『オーバーストーリー』

オーバーストーリー作者: リチャードパワーズ,Richard Powers,木原善彦出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2019/10/30メディア: 単行本この商品を含むブログを見るこの『オーバーストーリー』はリチャード・パワーズの新刊である。『舞踏会へ向かう三人の農夫』…

日本で行われた大量無差別殺人事件、他者を犠牲に生き延びた少女は「悪」なのか──『スワン』

スワン作者: 呉勝浩出版社/メーカー: KADOKAWA発売日: 2019/10/31メディア: 単行本この商品を含むブログを見る異常な傑作『雛口依子の最低な落下とやけくそキャノンボール』で呉勝浩の名を衝撃と共に知った僕だが(それがどのような衝撃だったかは前書いた記…

すべての関係性を精算し、孤独に落ち沈んでいく個人主義の極地のような男を描くウエルベック最新作──『セロトニン』

セロトニン作者: ミシェル・ウエルベック,関口涼子出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2019/09/26メディア: 単行本この商品を含むブログを見るこの『セロトニン』は、フランスの代表的作家ミシェル・ウエルベックの2019年に刊行されたばかりの最新作の邦…