基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

SF

2033年、中国の日本侵攻によって東京が東西で分断された世界での事件を追うSFミステリ─『九段下駅 或いはナインス・ステップ・ステーション』

九段下駅 或いはナインス・ステップ・ステーション (竹書房文庫)作者:マルカ・オールダー,フラン・ワイルド,ジャクリーン・コヤナギ,カーティス・C・チェン竹書房Amazonこの『九段下駅 或いはナインス・ステップ・ステーション』は、マルカ・オールダー、フ…

『三体』の劉慈欣を代表するような作品が集められた、同時刊行の短篇集2冊──『流浪地球』『老神介護』

SF

流浪地球 (角川書店単行本)作者:劉 慈欣,大森 望,古市 雅子KADOKAWAAmazonこの『流浪地球』と『老神介護』は、『三体』で知られる中国を代表する作家劉慈欣の短篇集である。なぜ同時に二冊出てるんだ、と思うかもしれないが、KADOKAWAが翻訳権を得た劉慈欣の…

都市に人間が住めなくなるほど環境が悪化し、最後の原生地へと逃れた一群を描き出す、親子の愛憎の物語──『静寂の荒野』

静寂の荒野【ウィルダネス】作者:ダイアン クック早川書房Amazonこの『静寂の荒野』は、ニューヨークを拠点とするアメリカ人女性作家ダイアン・クックのはじめての長篇作品である。長篇は初だが、短篇ですでにデビュー済み。本邦でもすでに短篇集『人類対自…

ホームズがクトゥルーの古き神々と遭遇する大胆不敵なマッシュアップ──『シャーロック・ホームズとシャドウェルの影』

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シャーロック・ホームズとシャドウェルの影 (ハヤカワ文庫FT)作者:ジェイムズ ラヴグローヴ早川書房Amazon映画も含めたシャーロック・ホームズ関連作品はコナン・ドイルによる正典の他に数多くのパスティーシュ、クロスオーバー、二次創作で溢れかえっている…

宇宙飛行士の著者による、アポロ18号を主軸に据えあり得たかもしれない宇宙開発の歴史を描く宇宙SF──『アポロ18号の殺人』

アポロ18号の殺人 上 (ハヤカワ文庫SF)作者:クリス ハドフィールド早川書房Amazonこの『アポロ18号の殺人』は、アポロ17号でアポロ計画が終わり、その後宇宙開発が停滞に入ってしまった現代とは異なり、アポロ計画が18号まで持続し、さらに米ソの戦いが宇…

ジョン・ル・カレ×クリストファー・プリーストと評された、EUが崩壊したヨーロッパを舞台とするSFスパイスリラー──『ヨーロッパ・イン・オータム』

ヨーロッパ・イン・オータム (竹書房文庫)作者:デイヴ・ハッチンソン竹書房Amazonこの『ヨーロッパ・イン・オータム』は本邦初紹介のイギリス作家デイヴ・ハッチンソンによるSFスパイ長篇となる。本作は西安風邪の蔓延によってEUが崩壊し、みながみな好き勝…

『三体』三部作の裏側で起こってきたことに光を当てる、まさにこれが読みたかった! と思える公式スピンオフ──『三体X 観想之宙』

三体X 観想之宙作者:宝樹早川書房Amazonこの『三体X』は、劉慈欣による中国SF最大の話題作である《三体》三部作の、宝樹による公式外伝(スピンオフ)である。公式外伝といっても種類はたくさんあるが、本作が描き出すのは基本的には『三体』の第三部で起こっ…

今年も早川書房1500作品が50%割引の超大型電子書籍セールがきたので、SF・ノンフィクション中心にオススメを紹介する

早川書房の1500作品が最大50%割引という大型の電子書籍セールが来たので、僕が読了済みのものからオススメを紹介しよう。早川書房は定期的にセールをやるが、1500点級のセールを前回やったのは去年の6月頭なので、年に一回のセールとなる。これ以上安くなる…

宇宙ものから超能力もの、ポリティカルな作品まで幅広い作品が堪能できる、韓国の人気作家による極上のSF短篇集──『極めて私的な超能力』

極めて私的な超能力 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)作者:チャン ガンミョン早川書房Amazonこの『極めて私的な超能力』はSFだけでなくノンフィクションや労働小説など幅広いジャンルの作品を手掛ける韓国の人気作家チャン・ガンミョンによるSF短篇集だ。この…

科学とSFの永続的な相互作用について──『こうして絶滅種復活は現実になる:古代DNA研究とジュラシック・パーク効果』

こうして絶滅種復活は現実になる:古代DNA研究とジェラシック・パーク効果作者:エリザベス・D・ジョーンズ原書房Amazonマイケル・クライトンによるSF小説『ジュラシック・パーク』が刊行されたのは1990年のこと。小説の時点で世界的なベストセラーになってい…

コロナ禍になってからたくさんのパンデミックSFが刊行されたので一気に紹介する

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19年末からコロナ禍に入り、3年近い月日が流れている。数多くの変化がそれに伴って起こったが、そのうちのひとつは「パンデミックSF」の刊行が増えたことだ。パンデミックSFとは、感染症が広まっていく状況を描き出すSF作品のことだが、コロナ以後に企画・執…

『新しい時代への歌』のサラ・ピンスカーによる、今年ベスト級のSF短篇集──『いずれすべては海の中に』

いずれすべては海の中に (竹書房文庫)作者:サラ・ピンスカー竹書房Amazonこの『いずれすべては海の中に』は、(新型コロナウイルスをめぐる状況の)予言的な作品として話題になった『新しい時代への歌』のサラ・ピンスカーによるSF中心の短篇集である。2013年…

1400ページ超えの凄まじい物量で展開するパンデミック終末巨篇──『疫神記』

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疫神記 合本版 (竹書房文庫)作者:チャック・ウェンディグ竹書房Amazonこの『疫神記』は「ワシントン・ポスト」紙の年間ベストにも選出された、パンデミックSFの超大作長篇である。そのページ数は原著約800ページ、この邦訳版は1400ページを超え、並大抵の厚…

神林長平の最前線の境地が堪能できる、《戦闘妖精・雪風》13年ぶりの最新巻──『アグレッサーズ』

アグレッサーズ 戦闘妖精・雪風作者:神林 長平早川書房Amazonこの『アグレッサーズ 戦闘妖精・雪風』は、神林長平を代表する《戦闘妖精・雪風》シリーズの第4作めにして実に13年ぶりの新刊となる。シリーズの既作とその刊行時期を振り返ると、1984年に第一作…

知能の仕組みを解き明かし、人間を超えた汎用人工知能やマインドアップロードの可能性まで考察する──『脳は世界をどう見ているのか 知能の謎を解く「1000の脳」理論』

脳は世界をどう見ているのか 知能の謎を解く「1000の脳」理論作者:ジェフ ホーキンス早川書房Amazon人間は日々新しいことを学び続けている。民主主義についてや数学の理論など複雑な概念に限った話ではなく、たとえばアプリをダウンロードしたらその使い方を…

冬眠研究の最前線──『人類冬眠計画: 生死のはざまに踏み込む』

人類冬眠計画: 生死のはざまに踏み込む (岩波科学ライブラリー 311)作者:砂川 玄志郎岩波書店Amazonフィクション、特にSFの世界では「人工冬眠」がよく登場する。意図的に人間を冬眠状態におくことで、人間の一生ではたどりつけない星に向かったり、現代では…

未来の社会に労働用ロボットが横溢した社会から人間とAIの融合を扱った作品まで、多様な可能性を見出すAI・ロボットSF傑作選──『創られた心』

創られた心 AIロボットSF傑作選 (創元SF文庫)作者:ヴィナ・ジエミン・プラサド,ピーター・ワッツ,サード・Z・フセイン,ダリル・グレゴリイ,トチ・オニェブチ,ケン・リュウ,サラ・ピンスカー,ピーター・F・ハミルトン,ジョン・チュー,アレステア・レナ…

男だけを殺す感染症によって男性人口が激減した時、社会はどのような変化を遂げるのか?──『男たちを知らない女』

男たちを知らない女 (ハヤカワ文庫SF)作者:クリスティーナ スウィーニー=ビアード早川書房Amazonこの『男たちを知らない女』は、クリスティーナ・スウィーニー=ビアードのデビュー作にして、もし世界に男だけを殺す感染症が広まって、社会の構成要員がほぼ…

誰もがテレポートを実施でき、距離が存在しなくなった世界をどこまでも追求する、エネルギーに満ち溢れた四年ぶりのSFコンテスト受賞作──『スター・シェイカー』

スター・シェイカー作者:人間 六度早川書房Amazonこの『スター・シェイカー』は、三回に渡って大賞が出なかった(優秀賞は出てたけど)ハヤカワSFコンテスト久しぶりの大賞受賞作にして、いかにもデビュー作らしく、荒削りながらも圧倒的な才能を見せつけてく…

軍拡競争が過熱し、もはや何が敵の攻撃によるものなのかもわからなくなった未来を描き出す、スタニスワフ・レムの初邦訳長篇──『地球の平和』

SF

地球の平和 (スタニスワフ・レム・コレクション)作者:スタニスワフ・レム国書刊行会Amazonこの『地球の平和』は、レムの最後の長篇『大失敗』と同じ1987年に刊行された、最後から二番目の長篇SFとなる。レムの代表作の一つ〈泰平ヨン〉シリーズの最終作でも…

造語「メタヴァース」を生み出し、数々の起業家の世界観に影響を与えた伝説のSFがついに復刊!──『スノウ・クラッシュ』

スノウ・クラッシュ〔新版〕 上 (ハヤカワ文庫SF)作者:ニール スティーヴンスン早川書房Amazonこの数年メタヴァース=仮想現実が盛り上がっている。Facebookが社名を「Meta」に変更し、OculusQuestやVRchatが普及し、フォートナイトでのライブ・生活体験が当…

弾圧が行われているとされる新疆ウイグル自治区で、実際に何が行われているのか?──『AI監獄ウイグル』

AI監獄ウイグル作者:ジェフリー・ケイン新潮社Amazonこの『AI監獄ウイグル』は、近年弾圧が激しくなっているとされるウイグルで、実際に何が行われているのか、150人以上のウイグル人の難民、技術労働者、政府関係者、元中国人スパイにインタビュー取材…

第一次世界大戦中にインターネットや携帯電話が発展し、高度な監視システムが構築されたIFのドイツを描き出す改変歴史SF──『NSA』

NSA 上 (ハヤカワ文庫SF)作者:アンドレアス エシュバッハ早川書房Amazonこの『NSA』は、ドイツを代表するSF作家アンドレアス・エシュバッハが18年に発表した、ドイツが舞台の歴史改変SF小説である。歴史改変ものとは、「もし歴史のあの時点で結果がこ…

はるかな未来から少し先のニューノーマルまで、パンデミック後の多様な世界を表現する韓国SFアンソロジー──『最後のライオニ 韓国パンデミックSF小説集』

SF

最後のライオニ 韓国パンデミックSF小説集作者:キム・チョヨプ,デュナ,チョン・ソヨン,キム・イファン,ペ・ミョンフン,イ・ジョンサン河出書房新社Amazonこの『最後のライオニ』は韓国の作家6人がパンデミック、感染症をテーマに短篇を書いたSFアンソロジ…

2020年の読むべき日本SF短篇が一冊であらかたカバーできる、竹書房文庫の年刊日本SF傑作選!──『ベストSF2021』

ベストSF2021 (竹書房文庫, お6-2) (竹書房文庫 お 6-2)作者:大森 望竹書房Amazon2020年に発表された日本SF短篇の中から、大森望が傑作をよりすぐったのがこの竹書房から刊行されたアンソロジー『ベストSF2021』である。2019年作品版の『ベストSF2020』が202…

砂漠の美しさ、サンドワームの神話的な恐ろしさを見事に表現してみせた傑作映画──『DUNE/デューン 砂の惑星』

『DUNE/デューン 砂の惑星』公開時にIGN japanに寄稿した映画reviewを、年末ですし、Amazonでも買えるようになっているのでブログ用に編集して投稿してます。おもしろいので観てね。DUNE/デューン 砂の惑星(字幕版)ティモシー・シャラメAmazon はじめに ドゥ…

『火星の人』の著者最新作にして、宇宙SF&宇宙生物学SFの傑作長篇──『プロジェクト・ヘイル・メアリー』

プロジェクト・ヘイル・メアリー 上作者:アンディ ウィアー早川書房Amazonこの『プロジェクト・ヘイル・メアリー』は、火星に一人取り残されてしまった男の決死のサバイブを描くハード・宇宙開発SF『火星の人』でデビュー&大ヒットした、(リドリー・スコッ…

元NATO欧州連合軍最高司令官によって書かれた、ありうるかもしれない米中開戦を描く近未来軍事シミュレーション長篇──『2034 米中戦争』

SF

2034 米中戦争 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)作者:エリオット・アッカーマン,ジェイムズ・スタヴリディス二見書房Amazon近年、米国と中国の溝は深くなる一方だ。最近も、米国は中国の人権状況について懸念し、北京で開かれる冬季オリンピックを外交…

『三体』の劉慈欣による本邦初の短篇集、劉慈欣は長篇だけでなく短篇もおもしろい!──『円』

円 劉慈欣短篇集作者:劉 慈欣早川書房Amazonこの『円 劉慈欣短篇集』は、『三体』の著者劉慈欣による本邦初の短篇集である。中国での短篇集の翻訳かと思ったら、作品選択は原著者側によるもので、どのような意図があるのか訳者にもわかっていないらしい。た…

ハヤカワ文庫JAから700点以上が50%割引の大型セールがきたのでおすすめを紹介する。

SF

SFマガジン 2021年 12月号早川書房Amazon先日から早川書房から刊行されているSFマガジンではハヤカワ文庫JA全解説を3号連続で行っていた。僕も10点ぐらいの作品に解説を書いたのだが、その全解説がおわったこのタイミングで、ハヤカワ文庫JA700点以上の割引…