基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

献本御礼

更新世へのタイムトラベルを通して、現代人類とホモ・ハビリスのロマンスを描き出す異色の時間・文化人類学SF──『時の他に敵なし』

時の他に敵なし (竹書房文庫 び 3-1)作者:マイクル・ビショップ竹書房Amazonこの『時の他に敵なし』は、1982年に刊行されネビュラ賞も受賞した、マイクル・ビショップによるタイムトラベル・ラブロマンスである。今回が本邦初訳で、この時代にあらためて翻訳…

世界2900万部超えの怪物中国SF三部作、ついに完結──『三体』

三体Ⅲ 死神永生 上作者:劉 慈欣早川書房AmazonSFとしてはこの10年で最大の話題作である、作家劉慈欣による『三体』。その三部作が、先日刊行されたばかりの『三体III 死神永生』(ししんえいせい)でついに完結!中国本国で大いに盛り上がり、その後ケン・リュ…

新しいテクノロジーを前に、我々はどのように「会話」すべきか?『あなたが消された未来――テクノロジーと優生思想の売り込みについて』

あなたが消された未来――テクノロジーと優生思想の売り込みについて作者:ジョージ・エストライクみすず書房Amazon生物は遺伝子によってある程度その姿かたちや能力が決定付けられているが、近年のバイオテクノロジーの進歩によって我々はその「生まれ持ったも…

七つの作中作を通して殺人ミステリを数学的に定義しようと試みる本格ミステリ──『第八の探偵』

第八の探偵 (ハヤカワ・ミステリ文庫)作者:アレックス パヴェージ発売日: 2021/04/14メディア: Kindle版この『第八の探偵』は、7つもの作中作が入り乱れるイギリス作家による本格ミステリである。著者アレックス・パヴェージは本書がデビュー作となるが、異…

数学概念が人類に生まれつきそなわっていないことを示す、数と言語人類学──『数の発明――私たちは数をつくり、数につくられた』

数の発明――私たちは数をつくり、数につくられた作者:ケイレブ・エヴェレット発売日: 2021/05/08メディア: 単行本 はじめに 数の概念は、生まれつき備わっているものではない 数の概念がないなんてことがあるのか? 1〜3 おわりに はじめに 『ピダハン──「言…

『半分世界』の石川宗生による、なんでもないバックパッカーを描き出す紀行文──『四分の一世界旅行記』

四分の一世界旅行記作者:石川 宗生発売日: 2021/04/28メディア: 単行本この『四分の一世界旅行記』はSF・奇想短篇集の『半分世界』でデビューし小説家として活躍する石川宗生によるバックパッカーとしての旅行記である。四分の一世界旅行記と題されているよ…

冤罪事件を通して人間の本性と生物学的弱点、その克服への洞察に至る傑作──『冤罪と人類:道徳感情はなぜ人を誤らせるのか』

冤罪と人類 道徳感情はなぜ人を誤らせるのか (ハヤカワ文庫NF)作者:管賀 江留郎発売日: 2021/04/28メディア: Kindle版この『冤罪と人類』は日本で起こった大規模冤罪事件を取り上げながら、最後にそうした冤罪事件が起こる理由を人間の〈道徳感情〉に求め、…

新型コロナ後の世界はどうなるのか? 数年後から数千年後まで、様々な形で描き出すSFアンソロジー──『ポストコロナのSF』

ポストコロナのSF (ハヤカワ文庫 JA ニ 3-6)発売日: 2021/04/14メディア: 文庫この『ポストコロナのSF』は、日本SF作家クラブ編集による、アフターコロナの世界を想像するSFアンソロジー。書き手には、『ゲームの王国』で注目を浴びた小川哲、芥川賞を受賞し…

精神病院に偽患者を送り込みその脆弱性を明らかにした有名な実験は、実は間違いだらけだった──『なりすまし——正気と狂気を揺るがす、精神病院潜入実験』

なりすまし——正気と狂気を揺るがす、精神病院潜入実験 (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズIII-16)作者:スザンナ・キャハラン発売日: 2021/04/21メディア: 単行本(ソフトカバー)近年、かつて行われた有名な心理学系の実験が、再現実験の失敗やデータ…

物理学に美しさは必要か? という根本的な問題提起──『数学に魅せられて、科学を見失う――物理学と「美しさ」の罠』

数学に魅せられて、科学を見失う――物理学と「美しさ」の罠作者:ザビーネ・ホッセンフェルダー発売日: 2021/04/09メディア: Kindle版物理学者は、自然法則の中に理論の自然さや美しさ、対称性、単純さ、統一性を求める。それは、自然法則はエレガントでシンプ…

社会に分断をもたらした「自分自身の努力と勤勉さ」で成功したという考え──『実力も運のうち 能力主義は正義か?』

実力も運のうち 能力主義は正義か?作者:マイケル・サンデル発売日: 2021/04/14メディア: 単行本この『実力も運のうち 能力主義は正義か?』は『これからの「正義」の話をしよう』が大ヒットした、マイケル・サンデル教授の最新作である。『それをお金で買い…

ケン・リュウによる、中国、日本、米国の歴史と文化を横断的に取り込んだ珠玉のSF短篇集──『宇宙の春』

宇宙の春 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)作者:ケン リュウ発売日: 2021/03/17メディア: Kindle版本作『宇宙の春』は、中国と米国、作家と翻訳家を股にかけて活躍する作家ケン・リュウの日本オリジナル短篇集第四弾である。独立した話の短篇集なので、もちろ…

階層の異なる知性間の大戦を描き出す『天元突破グレンラガン』級のスペース・オペラ──『最終人類』

最終人類 上 (ハヤカワ文庫SF)作者:ザック ジョーダン発売日: 2021/03/17メディア: Kindle版この『最終人類』は著者ザック・ジョーダンのデビュー作にして、最後の人類となった少女が同胞を求めて多様な種族が存在する宇宙を冒険していくスペース・オペラで…

パワードスーツ、強化アーマー、遠隔操縦人型兵器の短編を集めた垂涎のSFアンソロジー!──『この地獄の片隅に パワードスーツSF傑作選』

この地獄の片隅に パワードスーツSF傑作選 (創元SF文庫)作者:J・J・アダムズ発売日: 2021/03/11メディア: Kindle版この『この地獄の片隅に パワードスーツSF傑作選』は、その名の通りパワードスーツ物を集めた特殊テーマ・アンソロジー。パワードスーツ物…

数万の兵力に匹敵する能力者同士が世界の覇権をめぐってしのぎを削る、てんこもりのファンタジー能力者戦記!──『隷王戦記1 フルースィーヤの血盟』

隷王戦記1 フルースィーヤの血盟 (ハヤカワ文庫 JA モ 7-1)作者:森山光太郎発売日: 2021/03/17メディア: 文庫この『隷王戦記』は、時代小説大賞を2018年に『火神子 天孫に抗いし者』で受賞しその後メディアワークス文庫だったり朝日新聞出版だったりとぽんぽ…

現実がSFになった世界を描き出す、芝村裕吏の統計SF──『統計外事態』

統計外事態 (ハヤカワ文庫JA)作者:芝村 裕吏発売日: 2021/02/17メディア: Kindle版この『統計外事態』は、ガンパレや刀剣乱舞のゲームデザインやシナリオで有名な芝村裕吏の最新のSFである。芝村裕吏は近年ゲームデザイナー・シナリオライター以外にも多数の…

蒸気錬金術が存在する世界で展開する、蒸気錬金式幻燈機によって生み出された幼女と三文作家の幻想紀行譚──『蒸気と錬金 Stealchemy Fairytale』

蒸気と錬金 Stealchemy Fairytale (ハヤカワ文庫JA)作者:花田 一三六発売日: 2021/02/17メディア: Kindle版この『蒸気と錬金』は、『戦塵外史』や『黎明の双星』の花田一三六、約10年ぶりの新刊となる。小説家としてはけっこうなブランク明けの仕事というこ…

家を見る目と意識を一変させてくれる、素晴らしいサイエンスノンフィクション──『家は生態系―あなたは20万種の生き物と暮らしている』

家は生態系―あなたは20万種の生き物と暮らしている作者:ロブ・ダン発売日: 2021/02/19メディア: 単行本家には時折ゴキブリやクモなどの外部の生物が紛れ込んでくることがあるとはいえ、そうそういつも見かけるものではない。大抵の場合、家には自分とその家…

「折りたたみ北京」の郝景芳による、AIテーマの短篇集──『人之彼岸』

人之彼岸【ひとのひがん】 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)作者:郝 景芳発売日: 2021/01/21メディア: Kindle版この『人之彼岸』は、「折りたたみ北京」を筆頭に中国のみならず世界で高い評価を受けているSF作家郝景芳(ハオジンファン)のAIテーマを中心に集め…

意外な形で大気と人間の関係を描き出してみせた化学ノンフィクション──『空気と人類 ―いかに〈気体〉を発見し、手なずけてきたか』

空気と人類 ―いかに〈気体〉を発見し、手なずけてきたか作者:サム・キーン発売日: 2020/12/17メディア: 単行本この『空気と人類』は、『スプーンと元素周期表』など様々な化学/科学系のトピックスを扱ってきた作家サム・キーンによる、気体についてのノンフ…

数学を通してミステリの自由に触れる、華文青春本格ミステリの傑作──『文学少女対数学少女』

文学少女対数学少女 (ハヤカワ・ミステリ文庫)作者:陸 秋槎発売日: 2020/12/03メディア: Kindle版この『文学少女対数学少女』は前漢時代の中国を舞台にした本格百合ミステリ『元年春之祭』や学園百合ミステリ『雪が白いとき、かつそのときに限り』の陸秋槎に…

言語や音楽は、自然界を模倣している──『〈脳と文明〉の暗号 言語と音楽、驚異の起源』

〈脳と文明〉の暗号 言語と音楽、驚異の起源 (ハヤカワ文庫NF)作者:マーク チャンギージー発売日: 2020/12/03メディア: Kindle版この『脳と文明の暗号』はマーク・チャンギージー『ヒトの目、驚異の進化 視覚革命が文明を生んだ』の続編というか、姉妹篇であ…

韓国の注目作家が紡ぐ、科学的でエモーショナルな絶品SF短篇集──『わたしたちが光の速さで進めないなら』

わたしたちが光の速さで進めないなら作者:キム・チョヨプ発売日: 2020/12/03メディア: 単行本(ソフトカバー)2020年は10年の区切りということもあって素晴らしいSF短篇アンソロジーが多数刊行され、SF短篇集も豊作だったのだけどここにきてまた凄いSF短篇集…

AIエンジニアによる犯罪を本格的な描写と共に描き出す、第8回ハヤカワSFコンテスト優秀賞受賞作──『人工知能で10億ゲットする完全犯罪マニュアル』

人工知能で10億ゲットする完全犯罪マニュアル (ハヤカワ文庫JA)作者:竹田 人造発売日: 2020/11/19メディア: Kindle版この『人工知能で10億ゲットする完全犯罪マニュアル』は、早川書房による第8回SFコンテストで優秀賞を受賞した作品だ。SFコンテストはここ3…

「折りたたみ北京」の郝景芳による、中国から見た1984年──『1984年に生まれて』

1984年に生まれて作者:郝景芳発売日: 2020/11/24メディア: Kindle版この『1984年に生まれて』は、郝景芳によって書かれた、中国の1984年前後から00年代頃までの情景が描かれていく長篇小説である。郝景芳はヒューゴー賞を受賞した「折りたたみ北京」をは…

金融から感染症、格差まで、すべては人の繋がり・ネットワークが関係している──『ヒューマン・ネットワーク 人づきあいの経済学』

ヒューマン・ネットワーク 人づきあいの経済学作者:マシュー O ジャクソン発売日: 2020/11/19メディア: Kindle版2020年はひときわネットワークが意識される年だった。インターネットのことではなくて、人と人とのネットワークの話だ。人付き合いが多く、よ…

地下を通して、数千、数万年後の祖先に我々は何を遺せるのかを考える一冊──『アンダーランド──記憶、隠喩、禁忌の地下空間』

アンダーランド 記憶、隠喩、禁忌の地下空間作者:ロバート マクファーレン発売日: 2020/11/19メディア: Kindle版この『アンダーランド』は、大自然を相手にした旅行記に定評のあるロバート・マクファーレンによる、地底をめぐる紀行文学である。マクファーレ…

二〇一〇年代最注目のSF作家による、未来の海上都市を舞台にした〈分断〉と〈結合〉の物語──『黒魚都市』

黒魚【クロウオ】都市 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)作者:ミラー,サム・J.発売日: 2020/11/19メディア: 単行本この『黒魚都市』は、2010年代にその頭角を現してきた、新時代のアメリカSF作家であるサム・J・ミラーによる二作目の長篇小説である。チャイナ・ミ…

ゼロ年代の海外SFの様相がわかる、危なげなく傑作揃いのアンソロジー──『2000年代海外SF傑作選』

2000年代海外SF傑作選 (ハヤカワ文庫SF)作者:エレン クレイジャズ,ハンヌ ライアニエミ,ダリル グレゴリイ,劉 慈欣,コリイ ドクトロウ,チャールズ ストロス,N・K ジェミシン,グレッグ イーガン,アレステア レナルズ発売日: 2020/11/19メディア: 文庫この『20…

政府に頼らず、社会から隔絶したモルモン教原理主義者の世界観から、いかにして抜け出したのか──『エデュケーション 大学は私の人生を変えた』

エデュケーション 大学は私の人生を変えた作者:タラ ウェストーバー発売日: 2020/11/17メディア: 単行本(ソフトカバー)この『エデュケーション』(原題:Educated A Memoir)は、モルモン教原理主義者で、政府や病院といった公的な機関に一切頼らない父と母に…