基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

歴史

入り組んだイスラエルの歴史、その問題を、解きほぐすように解説していくノンフィクション──『イスラエル 人類史上最もやっかいな問題』

イスラエル 人類史上最もやっかいな問題作者:ダニエル ソカッチNHK出版Amazon2023年の10月7日に勃発した、イスラム組織ハマスによるイスラエルへの大規模攻撃。本件については今なお目まぐるしく状況が動いていて日々ニュースが絶えないが、その背景には複雑…

既存の「わかりやすい」人類史を現代の知識・研究でとらえなおす、『ブルシット・ジョブ』著者の遺作となった大作ノンフィクション──『万物の黎明 人類史を根本からくつがえす』

万物の黎明 人類史を根本からくつがえす (翻訳)作者:デヴィッド・グレーバー,デヴィッド・ウェングロウ光文社Amazonこの『万物の黎明』は、世の中にはやってもやらなくてもいいようなクソどうでもいい仕事で溢れているのではないかと論を展開した『ブルシッ…

現在に至る種を広範囲にわたってまきつづけてきた悪魔的な天才──『未来から来た男 ジョン・フォン・ノイマン』

未来から来た男 ジョン・フォン・ノイマンみすず書房Amazonこの『未来から来た男 ジョン・フォン・ノイマン』はその名の通りフォン・ノイマンの伝記である。1903年生まれの1957年没。数学からはじまって、物理学、計算機科学、ゲーム理論など幅広い分野で革…

索引の歴史は、時間と知識についての物語である──『索引 ~の歴史 書物史を変えた大発明』

索引 ~の歴史 書物史を変えた大発明作者:デニス・ダンカン光文社Amazon主に重要な単語や人名が何ページに出てくるかを示すために巻末についている「索引」。索引はノンフィクションについていることが多いが、これに注意を払う人はあまり多くないだろう。調…

六隻の海賊船をたばね、世界最大級の船を襲った男の逸話──『世界を変えた「海賊」の物語 海賊王ヘンリー・エヴリ―とグローバル資本主義の誕生』

世界を変えた「海賊」の物語 海賊王ヘンリー・エヴリ―とグローバル資本主義の誕生作者:スティーブン・ジョンソン朝日新聞出版Amazon歴史上の海賊と聞いて多くの人が思い浮かべるのはおそらくフランシス・ドレークとか、黒ひげの名で知られるエドワード・ティ…

ほとんどの人は本質的に善良であると、強力に性善説を推し進める一冊──『Humankind 希望の歴史 人類が善き未来をつくるための18章』

Humankind 希望の歴史 上 人類が善き未来をつくるための18章 (文春e-book)作者:ルトガー・ブレグマン文藝春秋Amazonこの『Humankind』は、オランダで25万部以上の部数を重ね、『サピエンス全史』のハラリにも絶賛され対談をし、ピケティに次ぐ欧州の知性など…

歴史の影で忘れ去られていた女性暗号解読者たちの活躍に光を当てる一冊──『コード・ガールズ――日独の暗号を解き明かした女性たち』

コード・ガールズ――日独の暗号を解き明かした女性たち作者:ライザ・マンディみすず書房Amazon近年、ロケットのための計算に明け暮れていた女性たちを描き出したノンフィクション『ロケットガールの誕生』や、ディズニーの初期で制作に関わった女性たちの活躍…

無秩序な日本中世を振り返り、現代の当たり前を見直すエンタメ歴史ノンフィクション──『室町は今日もハードボイルド―日本中世のアナーキーな世界―』

室町は今日もハードボイルド―日本中世のアナーキーな世界―作者:清水克行新潮社Amazon最近日本に住んでいるフランス人や中国人YouTuberだったり海外YouTuberの動画をだらだらと見ていることが多いのだが、同時代を生きていたとしても国ごと、コミュニティごと…

『繁栄』のマット・リドレーによるイノベーション論──『人類とイノベーション:世界は「自由」と「失敗」で進化する』

人類とイノベーション:世界は「自由」と「失敗」で進化する (NewsPicksパブリッシング)作者:マット・リドレー発売日: 2021/03/03メディア: Kindle版『繁栄──明日を切り拓くための人類10万年史』や『進化は万能である──人類・テクノロジー・宇宙の未来』で…

忘れ去られた女性たちの活躍を蘇らせる一冊──『アニメーションの女王たち ディズニーの世界を変えた女性たちの知られざる物語』

アニメーションの女王たち ディズニーの世界を変えた女性たちの知られざる物語作者:ナサリア・ホルト発売日: 2021/02/26メディア: 単行本(ソフトカバー) この『アニメーションの女王たち』は、ディズニー・アニメーションの中で、アートに脚本にと活躍して…

外科手術時の消毒の重要性を提唱し医療を一変させた偉人の生涯──『ヴィクトリア朝医療の歴史:外科医ジョゼフ・リスターと歴史を変えた治療法』

ヴィクトリア朝医療の歴史:外科医ジョゼフ・リスターと歴史を変えた治療法作者:リンジー・フィッツハリス発売日: 2021/01/23メディア: 単行本この『ヴィクトリア朝医療の歴史』はその名の通りの一冊なのだけれども、「ヴィクトリア朝」は、医療史を少しかじ…

「最初の患者」たちが果たした役割を正当に評価する──『0番目の患者 逆説の医学史』

0番目の患者 逆説の医学史作者:リュック ペリノ発売日: 2020/12/15メディア: 単行本(ソフトカバー)この『0番目の患者』は、医学においてスポットライトがあたり、病気の名前を冠されることも多い、それを発見したり治した医者の方”ではなく”、その症例をは…

地下を通して、数千、数万年後の祖先に我々は何を遺せるのかを考える一冊──『アンダーランド──記憶、隠喩、禁忌の地下空間』

アンダーランド 記憶、隠喩、禁忌の地下空間作者:ロバート マクファーレン発売日: 2020/11/19メディア: Kindle版この『アンダーランド』は、大自然を相手にした旅行記に定評のあるロバート・マクファーレンによる、地底をめぐる紀行文学である。マクファーレ…

第一次世界大戦において魔術やオカルトはどんな働きをしたのか──『スーパーナチュラル・ウォー』

スーパーナチュラル・ウォー 第一次世界大戦と驚異のオカルト・魔術・民間信仰作者:オーウェン・デイヴィス発売日: 2020/04/27メディア: 単行本(ソフトカバー)現代は魔術や予言には厳しい時代であるといえる。21世紀の今ノストラダムスの大予言のようなも…

人類にとって壁とはなんなのか──『壁の世界史-万里の長城からトランプの壁まで』

壁の世界史-万里の長城からトランプの壁まで (単行本)作者:イアン・ヴォルナー発売日: 2020/03/28メディア: 単行本「壁」は物語的にはそそる物体である。敵と味方をわける物であり、内部のものを閉じ込めるためのものであり、守るべきものであり、破壊される…

生活にどれだけ深く砂が関わっているのかという視点から世界を捉え直すきっかけとなる一冊──『砂と人類: いかにして砂が文明を変容させたか』

砂と人類: いかにして砂が文明を変容させたか作者:バイザー,ヴィンス発売日: 2020/03/02メディア: 単行本砂なんてどこにでも溢れていて(都心に住んでいると砂と触れ合う機会はないが)いかにして砂が文明を変容させたか、と言われてもピンと来ないかもしれな…

どのようにして世界について考えるべきか──『哲学の技法: 世界の見方を変える思想の歴史』

哲学の技法: 世界の見方を変える思想の歴史作者:ジュリアン・バジーニ発売日: 2020/02/11メディア: 単行本この『哲学の技法』は英国の哲学者兼哲学系著述家であるジュリアン・バジーニによる、西洋をはじめとして、東洋やインド哲学が世界をどのようにしてみ…

神的存在を人格化せずにはいられないのはなぜなのか──『人類はなぜ〈神〉を生み出したのか?』

人類はなぜ〈神〉を生み出したのか? (文春e-book)作者:レザー・アスラン出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2020/02/10メディア: Kindle版人類はなぜ神を生み出したのか。神話の中にいる神はたいていの場合人間形態で、超越的な力を持っていながらも同時に歪…

自由は国家の成立過程の中で、どのように獲得されるのか──『自由の命運:国家、社会、そして狭い回廊』

自由の命運 上: 国家、社会、そして狭い回廊作者:ダロン アセモグル,ジェイムズ A ロビンソン,Daron Acemoglu,James A. Robinson出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2020/01/23メディア: 単行本自由の命運 下: 国家、社会、そして狭い回廊作者:ダロン アセモ…

『サピエンス全史』のハラリがはじめて現代の諸問題を真正面から取り扱った最新刊──『21 Lessons: 21世紀の人類のための21の思考』

21 Lessons: 21世紀の人類のための21の思考作者:ユヴァル・ノア・ハラリ出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2019/11/19メディア: 単行本『サピエンス全史──文明の構造と人類の幸福』で、「虚構を操る力こそが人類を生き残らせた」という観点から過去を。…

ネットワークという観点から近年の歴史を語り直す──『スクエア・アンド・タワー:ネットワークが創り変えた世界』

スクエア・アンド・タワー(上): ネットワークが創り変えた世界作者:ニーアル ファーガソン出版社/メーカー: 東洋経済新報社発売日: 2019/12/06メディア: 単行本スクエア・アンド・タワー(下): 権力と革命 500年の興亡史作者:ニーアル ファーガソン出版社/メ…

ジャレド・ダイアモンドが導き出す、国家はどのように危機を乗り越え、今どのような危機の中にいるのか?──『危機と人類』

危機と人類(上)作者: ジャレド・ダイアモンド,小川敏子,川上純子出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社発売日: 2019/10/26メディア: 単行本この商品を含むブログを見る危機と人類(下)作者: ジャレド・ダイアモンド,小川敏子,川上純子出版社/メーカー: 日本経…

エネルギーという唯一無二の普遍通貨から見た人類史──『エネルギーの人類史』

エネルギーの人類史 上作者: バーツラフ・シュミル,塩原通緒出版社/メーカー: 青土社発売日: 2019/03/25メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る人間の営みはいかにして多くのエネルギーを得るか、また存在しているエネルギーをいかに効…

どうして人間はこんなにも多くの本を破壊するのか──『書物の破壊の世界史――シュメールの粘土板からデジタル時代まで』

書物の破壊の世界史――シュメールの粘土板からデジタル時代まで作者: フェルナンド・バエス,八重樫克彦,八重樫由貴子出版社/メーカー: 紀伊國屋書店発売日: 2019/02/28メディア: 単行本この商品を含むブログを見る「書物」ではなく「書物の破壊」に注目し、そ…

いつ、どこで、誰が酒を飲んでいたか──『酔っぱらいの歴史』

酔っぱらいの歴史作者: マーク・フォーサイズ,篠儀直子出版社/メーカー: 青土社発売日: 2018/12/20メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見るアルコールの歴史や人間に作用する化学とは……みたいな本は僕もこれまで何冊か読んでいたが、本…

”時間”とは人間にとって何なのか── 『タイムトラベル 「時間」の歴史を物語る』

タイムトラベル 「時間」の歴史を物語る作者: ジェイムズグリック,夏目大出版社/メーカー: 柏書房発売日: 2018/08/27メディア: 単行本この商品を含むブログを見る「タイムトラベル」といえばこれを読んでいる多くの人は「あーはいはい」とその意味するところ…

人類はこれから何を目指すのか──『ホモ・デウス テクノロジーとサピエンスの未来』

ホモ・デウス 上下合本版 テクノロジーとサピエンスの未来作者: ユヴァル・ノア・ハラリ出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2018/09/06メディア: Kindle版この商品を含むブログを見るホモ・サピエンスが特別な地位を築き上げることができたのは、伝説や神…

社会科学者らが立ち向かう困難──『歴史は実験できるのか 自然実験が解き明かす人類史』

歴史は実験できるのか――自然実験が解き明かす人類史作者: ジャレド・ダイアモンド,Jared Diamond,ジェイムズ・A・ロビンソン,James A. Robinson,小坂恵理出版社/メーカー: 慶應義塾大学出版会発売日: 2018/06/06メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) …

ジェット推進研究所でひたすら計算し続けた女性たちがいた──『ロケットガールの誕生: コンピューターになった女性たち』

ロケットガールの誕生: コンピューターになった女性たち作者: ナタリアホルト,秋山文野出版社/メーカー: 地人書館発売日: 2018/07/10メディア: 単行本この商品を含むブログを見るジェット推進研究所(JPL)、という、NASAの中でも無人探査機などの研究開発に関…

辺境作家と歴史家の「ここではない何処か」を追求する読書会──『辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦』

辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦作者: 高野秀行,清水克行出版社/メーカー: 集英社インターナショナル発売日: 2018/04/05メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (1件) を見る『世界の辺境とハードボイルド室町時代』で自由に…