基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

2017-01-01から1年間の記事一覧

手遅れになる前に考えうる危険性を事前に把握しこれに対処する『ロボット法──AIとヒトの共生にむけて』

ロボット法--AIとヒトの共生にむけて作者: 平野晋出版社/メーカー: 弘文堂発売日: 2017/11/20メディア: 単行本この商品を含むブログを見る人工知能の発展著しい昨今であるが、法はまだその状況に追いついていないというのが実際のところだ。一番わかりやすい…

SF短篇の醍醐味が詰まった小川一水最新短篇集──『アリスマ王の愛した魔物』

アリスマ王の愛した魔物 (ハヤカワ文庫JA)作者: 小川一水出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2017/12/19メディア: 文庫この商品を含むブログ (1件) を見る小川一水さん久々の短篇集! 最近は《天冥の標》シリーズで超絶オモシロイ大長篇を書く化物という印象…

今年読んだものの中で記憶に残っているものを開陳する(小説篇)

はじめに 今年もたくさん読んだり観たりやったりして、頭から尻尾まで楽しい年だったな……という感触が残っているのだけれども、せっかくなのでブログに書いたものを中心に記憶に残ったものを紹介していこう。適当にリストアップしただけで40作品を超えたので…

奴隷少女は逃げる、どこまでも続く地下鉄道に乗って──『地下鉄道』

SF

地下鉄道作者: コルソンホワイトヘッド,Colson Whitehead,谷崎由依出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2017/12/06メディア: 単行本この商品を含むブログを見るコルソン・ホワイトヘッドによる本書『地下鉄道』はピュリッツァー賞、全米図書賞、アーサー・C・…

人類の生存圏を脅かす"新しい時空との対決"を描くイーガン最新刊──『シルトの梯子』

シルトの梯子 (ハヤカワ文庫SF)作者: グレッグイーガン,Greg Egan,山岸真出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2017/12/19メディア: 新書この商品を含むブログ (4件) を見るイーガンの新刊、文庫である。ただし原書の刊行は2002年。それはつまり15年間時をあけ…

言葉の解釈をめぐる、解決困難な諸問題──『自動人形(オートマトン)の城: 人工知能の意図理解をめぐる物語』

自動人形の城(オートマトンの城): 人工知能の意図理解をめぐる物語作者: 川添愛出版社/メーカー: 東京大学出版会発売日: 2017/12/18メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る本書は、同著者による数学的原理に裏打ちされた傑作ファンタジィ『白と…

ファンの行動力学──『ファンダム・レボリューション:SNS時代の新たな熱狂 』

ファンダム・レボリューション:SNS時代の新たな熱狂作者: ゾーイフラード=ブラナー,アーロン M・グレイザー,関美和出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2017/12/06メディア: 単行本この商品を含むブログを見るファンというのは怒らせると怖いものだ。うまくい…

スポーツロボットバトルが成立する"世界"まで含めて描く──『ストライクフォール』

ストライクフォール (ガガガ文庫)作者: 長谷敏司出版社/メーカー: 小学館発売日: 2016/06/24メディア: Kindle版この商品を含むブログを見る『BEATLESS』のアニメが間近に迫る長谷敏司さんによる、スポーツロボットバトルアクションSFがこの《ストライクフ…

権利闘争、開発秘話、任天堂、伝説のゲームの裏側──『テトリス・エフェクト―世界を惑わせたゲーム』

テトリス・エフェクト―世界を惑わせたゲーム作者: ダン・アッカーマン,小林啓倫出版社/メーカー: 白揚社発売日: 2017/11/01メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る今年はゲームとともに歩んだ人生録である『ゲームライフ――ぼくは黎明期…

人の意識を機械に移植できるのか──『脳の意識 機械の意識 - 脳神経科学の挑戦』

脳の意識 機械の意識 - 脳神経科学の挑戦 (中公新書)作者: 渡辺正峰出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2017/11/18メディア: 新書この商品を含むブログ (2件) を見る人の意識は機械に移植できるのだろうか。SFなどではおなじみのテーマだけれども、現実…

ハヤカワSFコンテスト大賞受賞作の、植物都市SF──『コルヌトピア』

SF

コルヌトピア作者: 津久井五月出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2017/11/21メディア: 単行本この商品を含むブログを見る本書『コルヌトピア』は第五回ハヤカワSFコンテスト大賞受賞作二作の内の一作。180ページあまりの短めの長篇で、欠点といえるような…

スター・ウォーズには全世界が含まれる──『スター・ウォーズによると世界は』

スター・ウォーズによると世界は作者: キャス・R.サンスティーン,Cass R. Sunstein,山形浩生出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2017/11/21メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見るけっこう変な本である。『実践 行動経済学』などの著作があり、オ…

『銀河ヒッチハイク・ガイド』の著者による、あまりにも無茶苦茶な探偵小説──『ダーク・ジェントリー全体論的探偵事務所』

ダーク・ジェントリー全体論的探偵事務所 (河出文庫)作者: ダグラスアダムス,Douglas Adams,安原和見出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2017/12/06メディア: 文庫この商品を含むブログ (1件) を見るNetflixに『私立探偵ダーク・ジェントリー』というドラ…

ウエルベックによって、処女小説のようにして書かれたラヴクラフト評論──『H・P・ラヴクラフト:世界と人生に抗って』

H・P・ラヴクラフト:世界と人生に抗って作者: ミシェル・ウエルベック,スティーヴン・キング,星埜守之出版社/メーカー: 国書刊行会発売日: 2017/11/24メディア: 単行本この商品を含むブログを見るラヴクラフトという名、あるいはクトゥルフ神話が日本におい…

時々落ち込んだりもするけれど、毎日エロいことしてまーす。──『JKハルは異世界で娼婦になった』

JKハルは異世界で娼婦になった作者: 平鳥コウ,shimano出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2017/12/06メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る異世界物も増えてくればいろんな職業物が出て来るもので、大阪のおばちゃんから鍛冶職人、娼館…

魔法と芸術そのものである、書物についてのファンタジィ──『図書館島』

図書館島 (海外文学セレクション)作者: ソフィア・サマター,影山徹,市田泉出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2017/11/30メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る本書『図書館島』はソフィア・サマターの第一長篇にして書物についてのファンタジ…

読めば絶対走りたくなる──『ランニング・サイエンス 「走る」を科学する』

ランニング・サイエンス作者: ジョンブルーワー,菅しおり出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2017/10/19メディア: 単行本この商品を含むブログを見る参った。暇はぜんぜんないのだけど、読んだら思わず走りたくなってきてしまった。週末にはランニングウ…

特殊な状況下での人を救う研究──『兵士を救え! マル珍軍事研究』

兵士を救え! マル珍軍事研究作者: メアリー・ローチ,村井理子出版社/メーカー: 亜紀書房発売日: 2017/09/22メディア: 単行本この商品を含むブログを見るマル珍軍事研究という書名から、てっきり軍事研究における「そんな研究があったのかよガッハッハ」と笑…

異常な試練にさらされた、きわめて平凡なヒーローたち──『レッド・プラトーン―14時間の死闘』

レッド・プラトーン 14時間の死闘作者: クリントンロメシャ,Clinton Romesha,伏見威蕃出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2017/10/18メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見るいやはや、あまり時間がなかったこともあって暇はなかったのだ…

クトゥルー神話☓聖杯戦争──『虚ろなる十月の夜に』

虚ろなる十月の夜に (竹書房文庫)作者: ロジャー・ゼラズニイ,森瀬繚出版社/メーカー: 竹書房発売日: 2017/10/26メディア: 文庫この商品を含むブログ (2件) を見るニュー・ウェーブの旗手、ロジャー・ゼラズニイ最晩年の作品がこの『虚ろなる十月の夜に』で…

勝てないゲームなんてほとんどない──『完全無欠の賭け: 科学がギャンブルを征服する』

完全無欠の賭け: 科学がギャンブルを征服する作者: アダムクチャルスキー,Adam Kucharski,柴田裕之出版社/メーカー: 草思社発売日: 2017/11/20メディア: 単行本この商品を含むブログを見るもし何らかの必勝法が存在し、競馬を当て当たりくじだけを買い続けル…

わたしたち人間はなぜ音楽を愛するのか?──『ドビュッシーはワインを美味にするか? 音楽の心理学』

ドビュッシーはワインを美味にするか?――音楽の心理学作者: ジョンパウエル,濱野大道出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2017/11/07メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る人間は音楽を聞く。通勤、通学のときはもちろん、家でゆっくりし…

クリストファー・プリーストの集大成的作品──『隣接界』

SF

隣接界 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)作者: クリストファープリースト,引地渉,古沢嘉通,幹遙子出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2017/10/19メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る『双生児』や『奇術師』で知られるクリストファー・プリーストの…

1900年代のイギリスを舞台にした、紙に命吹き込む魔術師の物語──『紙の魔術師』

紙の魔術師 (ハヤカワ文庫FT)作者: チャーリー・N・ホームバーグ,原島文世出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2017/11/07メディア: 文庫この商品を含むブログを見る時は1900年代はじめ、鉄道が普及しはじめ電信機も用いられつつある、科学勃興の時代に、同時…

早川書房の電子書籍版「海外SFセール」がきたので個人的オススメを紹介する

SF

早川書房が突然電子書籍版の海外SFセールをはじめたので、SFマガジンで海外SFブックガイドの連載を担当していてかつブログも書いている身なので、これはまあ、さすがになんかオススメとか書いておいたほうがいいかという気持ちになってきたので今この…

理性的な狂人──『人間をお休みしてヤギになってみた結果』

人間をお休みしてヤギになってみた結果 (新潮文庫)作者: トーマストウェイツ,Thomas Thwaites,村井理子出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2017/10/28メディア: 文庫この商品を含むブログを見るつい最近も僕は『動物になって生きてみた』という、2016年のイグ・…

スティーヴン・キングがホラーについて語り尽くす──『死の舞踏: 恐怖についての10章』

死の舞踏: 恐怖についての10章 (ちくま文庫)作者: スティーヴンキング,Stephen King,安野玲出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2017/09/06メディア: 文庫この商品を含むブログ (1件) を見る名著というのはだいたい何度も版を重ねるばかりか関係類者による新・…

読んだ直後から滅茶苦茶役に立つ──『アルゴリズム思考術:問題解決の最強ツール』

アルゴリズム思考術:問題解決の最強ツール作者: ブライアンクリスチャン,トムグリフィス,田沢恭子出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2017/10/19メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る『アルゴリズム思考術:問題解決の最強ツール』とは…

生命を作り変える技術──『CRISPR(クリスパー) 究極の遺伝子編集技術の発見』

CRISPR(クリスパー) 究極の遺伝子編集技術の発見作者: ジェニファー・ダウドナ,サミュエル・スターンバーグ,櫻井祐子,須田桃子出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2017/10/04メディア: 単行本この商品を含むブログを見るCRISPR/Cas9(クリスパー・キャス・ナイ…

静かで、ゆるやかな世代交代──『ペガサスの解は虚栄か? Did Pegasus Answer the Vanity?』

ペガサスの解は虚栄か? Did Pegasus Answer the Vanity? (講談社タイガ)作者: 森博嗣出版社/メーカー: 講談社発売日: 2017/10/19メディア: 文庫この商品を含むブログ (3件) を見る人類は細胞を入れ替えることで寿命を飛躍的に延ばしたものの、その代わりに子…