はじめに
ここ最近の他の月と比べると更新頻度がガガッと減っているけれども(27〜28更新から18更新へ)そういう時もあります。というか、原因は単純でメタルギアソリッドを延々とやっていたからなんだけれども。まだやってる。何十時間もやったはずなのだが、延々と終わらないゲームだ……。あとはあれだ、アリスソフトのランス03とかイブニクルとかやっていたら時間がね、なかったね。あとハースストーンというカードゲームの日本語版が始まったからそれを延々とやってたね(ゲームばっかりだな。)
10月はSFマガジン12月号も出ています。僕は海外SFブックガイド2ページと1ページ書評で『アルファ/オメガ』を担当しております。この号の特集、SF Animation × Hayakawa JA と題されていて実質伊藤計劃特集2のようになるのかと思ったらコンクリート・レボルティオと蒼穹のファフナーの話題がほとんどでそっちもなかなか面白かった。どっちも見てないんだけれども。
それにしてもこの発売月と「○○月号」が一致しない形式、いまだに違和感がある。月刊誌の場合40日先までの「○○号」に出来るらしいのだが、たぶん「出た月に売り切れるわけではなく、本屋で次の号が出るまで残り続けるから」2ヶ月先の号数にするのが有利だと判断されているのだろう。11月に雑誌を買おうと思ったらそれが10月号だったらなんか情報が古いような気がするしね(競合があればそれが実態でなくても12月号とついているほうを買ってしまいそうだ)
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2015/10/24
- メディア: 雑誌
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注目のフィクション
さあ、それでは雑記はこれぐらいにして10月のフィクション。フィクションは豊作の月だった。まず何をおいても必須、ド傑作だったのが円城塔『エピローグ』。人類はOTCの侵略によって現実宇宙を追われ、シュミレーション上の無数の宇宙に分散を余儀なくされている。人類はOTC打倒の為OTCの構成物質であり人類の理解を超越しているスマート・マテリアルを拾い集め、自分たちで収集、生成できるものと合わせて(キリストの聖遺物など)なんとか対抗している。それは理解不能な物に対して理解不能な凄いものをぶつける的な発想だhuyukiitoichi.hatenadiary.jp
現実宇宙を追い出された人類と人類を追いやったOTCの果てなき戦争、そんな世界で起こりえる数々の連続殺人事件、無茶苦茶だが、一貫したルールのもとの無茶苦茶であるという点で軸は通っている。そういう意味で言えば本書はかつてない(たぶん)スペース・オペラ(何しろ宇宙艦隊とか出てくるし)であるともいえるし、探偵ものであるともいえるだろう。もちろん、自己言及型メタフィクションでもある。
円城塔さんがこれまで描いてきた数々の作品を全て投入しスマートにまとめあげたような「円城塔全力全開総決算」感のあるド傑作なのだよ。
もう一つどうしてもオススメしたいのはニック・ハーカウェイの『エンジェルメイカー』で、これはこれで『エピローグ』とはまったく異なる破壊的な面白さだ。発売日が2015年6月4日なので紹介が遅れてしまったが、今年最も興奮したフィクションであることは間違いない(まだ見ぬ将来の刊行作も含めて)。一人の"なんでもない"男、ただし親は偉大なギャングで──という少年の成長物語のフォーマットながら、このなんでもない男が、世界を揺り動かすほどの大悪党へと成長していく様に心が踊る。huyukiitoichi.hatenadiary.jp
注目のノンフィクション
フィクションに比べるとノンフィクションは小粒というかあまり読めなかったけれども『人体600万年史:科学が明かす進化・健康・疾病』は頭一つ抜けて面白かった。人類の進化の過程を解き明かしながら、現代の健康や疾病の幾らかはかつての生活とほとんど我々の体が変わっていないのに生活習慣が変わりすぎたために起こっている「ミスマッチ病だ」とする過程をデータで丁寧におっていく。
身体は狩猟採集をしていた時から殆ど変化をしていないので、椅子に座ってばかりいる、炭水化物ばかりとっている、加工されたやわらかいものばかり食べてろくに運動しない生活が身体にあっているわけない。肥満や腰痛、痔といった「そうだよねえ」というものから禁止、強迫性障害、うつ病、クローン病、虫歯にアレルギーなどといったものは、文明と人体とのミスマッチの結果だとする理屈は実に説得力がある。huyukiitoichi.hatenadiary.jp
あともう一点、これは雑誌だが柴田元幸さん編集のMONKEY 7月号では村上春樹さんがロング・インタビューされていてこれが『職業としての小説家』のつづきみたいな内容でたいへんよかった。『思いもよらないことが起こって、思いもよらない人が、思いもよらないかたちで死んでいく。僕が一番言いたいのはそういうことなんじゃないかな。』とリアリティとフィクションについて語る村上春樹さんの言葉は小説の大ファンである僕にはよく響く。それは「キャラクターを突然無造作に殺せ」というのではなく、必然的な帰結、誰もが納得しながらも、しかし思いもがけず死んでいくという二つの困難なことを両立させろということなのだろう。huyukiitoichi.hatenadiary.jp
その他
森博嗣さん新シリーズが講談社タイガから。歴代のシリーズを読んできているファンには感無量の出来と内容。森博嗣世界が2世紀ほど未来に進んだら──という世界で、当然それは四季が興した技術が展開している世界だ。彼女がデザインした世界だといえるのかもしれない。その姿が目に見えるだけでファンとしては嬉しいが、完全にファンにしか通じない文章なので未読の人間は記事を読んで欲しい。huyukiitoichi.hatenadiary.jp
『ペルシア王は「天ぷら」がお好き? 味と語源でたどる食の人類史』は良い本なんだけど書名が……こういっちゃあなんだけどダメ。食に普遍コードは存在するのか? という内容で、たとえばフルコースのメニューが出てくる順番なんかは国が違ってもだいたい同じだったりする。計算言語学の手法を用いて、何千何万といったメニュー表を分析し「メニューの名前の長さが1文字増える毎に金額が12セント上がる」とかそうした分析手法が目白押しな「food Language」本なのだ。huyukiitoichi.hatenadiary.jp
メタルギアソリッド5
- 出版社/メーカー: コナミデジタルエンタテインメント
- 発売日: 2015/09/02
- メディア: Video Game
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マップがまたかなり作りこまれており、「自由○○」と謳いながら実際には全然自由じゃねえというゲームがある中でこのメタルギアは本当に「自由潜入」を達成させてくれる。真正面からグレランをぶっ放しながらいってもいいし、スナイパーライフルで制圧してからいってもいいし、右ルート左ルート崖上からの侵入ルートなど多様に考えられている。それでも兵の配置の少ない場所など「より、楽に」潜入できるルートもきちんと構築されていて様々な局面でその作り込みに感心させられたものだ。
ストーリーはまたガンガン映像的な象徴性を入れ込んで少ない分量でテクニカルに物語を書きたてていく。操作不可能なムービーシーンが減った結果、ほぼすべてのシーンが印象的な絵作りが行われている贅沢感。スネークを巡る物語に相応しい新しく革新的な切り込みの入れ方は、メタルギアソリッドのゲーム群を一体何処まで小島秀夫監督が作っているのか=ディレクションしているのかという疑問はずっとあったがやはり小島秀夫監督はいまだにその能力が衰えてないんだ! と思って嬉しかった。
少年兵をガッツリストーリー内にもりこむなどの部分も素晴らしかったけれども、現実世界の表現規制によって徹底的に射殺が不可能なつくりにされているのは惜しい。ストーリーの最終盤がカットされているのも惜しい。ゲームとしては最高の出来で、ストーリーは「その先」が見たかったという内容ではある。
ハースストーン
- 出版社/メーカー: Blizzard Entertainment
- 発売日: 2014/12/17
- メディア: アプリ
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僕はMTGプレイヤーなのでハースストーンも楽しんでいるのだが、デッキがシンプルに、カードの効果も割合シンプルなものが多く短い対戦時間の中に判断に迷う瞬間が多々訪れるのがいい。MTGはカードも増えて様々なタイミングで効果を発揮する複雑なものが多いため読み切れないことが多いのだが、ハースストーンはまだ現状買えるパックが3つしかない為、敵のカードを把握した状態で読み合いが可能である。
システム的に面白いのは、課金してパックを引くのだが、既に持っているカードを売り払うことでレジェンド級レアなどのいわゆる「SSR」を作成することができること。このシステムのおかげで「あのカードが欲しい」「あのカードがなければデッキが作れない」となった時は無駄に何十万も投入せずとも狙ってつくることが可能だ。
良心的というか、それが本来あるべき形、落とし所の一つだろうと思わないでもない。引きたいカードがあれば出るまで回し続けろがデフォルトになっているジャパニーズ・ソーシャルゲームはひどい。
花とアリス殺人事件
- 作者: 道満晴明,岩井俊二
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2015/10/09
- メディア: コミック
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道満晴明さんはマンガが上手い。あまりにも面白かったから何かを書きたいのだが何を書いたらいいのかわからないぐらいすべてがうまい。コマごとのシンプルさがうまくキャラクタの演技のつけかたがうまく絵作りがうまくそれがまとまって一冊になるとすべてがうまくてそれ以外いえなくなってしまう。喋りはどこか狂っていて現実の話かとおもいきやいきなりファンタジックな要素が当たり前のように居座っている。一般受けするのかどうかすらよくわからないが、とにかく「凄い」のは確かである。
これから読む本
- 作者: 神林長平
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2015/10/21
- メディア: 単行本
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- 作者: ジョン・G・ストウシンガー,等松春夫,比較戦争史研究会
- 出版社/メーカー: 国書刊行会
- 発売日: 2015/10/27
- メディア: 単行本
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- 作者: ジョン・G・ストウシンガー,等松春夫,比較戦争史研究会
- 出版社/メーカー: 国書刊行会
- 発売日: 2015/10/27
- メディア: 単行本
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