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基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

Hatching Twitter by NickBilton

Twitter社の歩みを多彩な人間を通して追った一冊。ノンフィクションのくせに劇的に演出をするところが鼻につきまくりだが、まあこういった伝記本は大抵そうだから我慢しなければなにも読めない。ただし面白さはピカ一。IT業界における成り上がりっていうのは、もう現代におけるひとつの物語の類型、つまるところ神話になりつつあるのではなかろうか。

栄光に挫折、一瞬で何十億もの大金を手に入れ天上まで成り上がったかと思えば、あっという間に裏切られ落ちていく。近寄ってくる人間は金によって権力やその力を取り込もうとする魑魅魍魎共であり、そうした力に呑まれなかったときはじめて世界を変える力を発揮することができる。成功と失敗のプロセス、振り幅の広さとして物語として必要な要素がひと通り揃っている。

こうした劇的な軌跡は、FacebookGoogleも通ってきた道である。ところがその中でもTwitter社が面白いのは役者のキャラクタがノンフィクションのくせに立ちすぎていることはまずあげられるだろう。まず目をひくのは農家から出て都会に出てきて次々とWeb Serviceを成功させていくエヴァン・ウィリアムズ。ブログ作成サービスBloggerGoogleに買収され、その次にポッドキャストの会社を立ち上げそれも成功させる。

そしてなんといってもTwitterだ。発案者自体は彼ではないということになっているが、それでも彼が起業家として数々のWeb事業を立ち上げ、成功してきたことは興味深い事例である。技術的に特異な部分があるわけではないが、それでも彼の発想、着眼点が毎回優れていたことの証左だろう。ブロガーも今では日本語のようになってしまっているが、社名が「Blogger」であることからもわかるように元をただせば彼が発明した言葉だ。もっとも概念の発明者であったかどうかはよくわからないが。

GoogleFacebookも、どちらもCEOを安定させるのに苦労している。ただ最終的には舵取りは中心となっていた開発者、発案者がとるようになっていく。いずれひくことになるが、それでも安定化させ、自身もそれ相応の立ち位置に落ち着くパターンだ。Twitter社の場合はこれがひどくて、何度もCEOをすげ替えた挙句、社内で内紛が起き、かつて会社の中心に居た人間が何人も追い出されていく。

そのまま去っていく者がいれば、いつまでも執着し最終的に会社へと復帰し自分を追い出した張本人を逆に叩きだす執念を持ったヤツまでいる。追い出されたCEOがその途端にTwitter社の情報をザッカーバーグに漏らす場面などもあるが、完全に悪役のソレである。本当に現実の話なのか著者を疑いたくなるような物語性だ。最終的に起業者であり資金の出資者であるエヴァン・ウィリアムズ(以下Ev)まで追い出されるんだからこの内紛の激しさもわかろうというものだろう。

仮に能力がずば抜けていて、いなければならない人物であれば追い出されることもなかったのだろうが、自身の知人を何人も採用し重要な役職につけるようなあからさまな縁故採用を続けたことによって、役員会議の決定で追い出されてしまうのだ。まあ、そりゃしょうがねーよと思わないでもない。追い出し追い出され、恨み恨まれの連続で、やっていることはまるで子供だが、物語的な面白さとしては申し分がない。

主役級だけが面白いのではなく、脇役も魅力的だ。途中EvにCEOとしての修行と称して仕えるCampbellという老人が出てくる。彼はエリック・シュミット、ラリーページのGoogleの立役者二人の指導者であり、あのジョブズも彼に師事しているというシリコンバレーの伝説的人物だ。Evも最初はしぶしぶだったのだが最終的には週一のミーティングを受け入れ、彼の指示を受け入れていく(あんまり聞かないんだが)。で、最終的にEvはCampbellにまで裏切られる(これもまたドロドロしていて笑える)。

企業の成長と立ちはだかる苦難

登場人物がみなうさんくさくダメダメで面白いのだが、企業の成長とそれに伴う苦難もまた面白い。たとえばFacebookに買収をもちかけられるときの場面など、まだレベル上げも終わっていないのにいきなりラスボスに出会ってしまったみたいな緊張感を持って演出されていて笑える(どうもどこからどこまでが現実にあったことで、どこからどこまでがこのライターの想像なのかわからないんだよな)

When Ev and Biz arrived at Facebook's campus, they were given what seemed like an endless tour, then ushered into a small office space with Mark. The room was gray and relatively sparse , looking more like a Russian prison than part of the office of the hip social network. Given the limited seeing options, Biz and Ev chose a tiny two-seater couch that butted up against the wall. Facebook's boyish CEO had rushed to take the only other seat in the room, an almost high chair that sat above them an a higher plane.Facebook and its CEO looking down on Twitter and its CEO.
"Should I close the door or leave it open?" Ev asked.
"Yes,"Mark replied
Ev looked at Biz, who shrugged. "Yes I should close it , or yes I should leave it open?" Ev asked.
"Yes,"Mark said again.
Ev decided to play it safe, leaving the door half-open and half-closed.Mark started talking, pausing slightly as he spoke from a script in his head.

ロシアの刑務所みたいな灰色の部屋で高い椅子に座り相手を見下ろしてミーティングに挑むってそれ物語じゃなくて本当なのか? と思わず疑問を持ってしまうような内容。でもソレ以上に凄いのがその後の謎のやりとり。ドアを開けとこうか? 締めとこうか? とEvが聞いているのにザッカーバーグがYesとしか答えない。とりあえず安全側として半開きにしておいたという話だがなんなんだそれ、意味がわからなすぎる。これも駆け引きのうちなのだろうか。 

華々しい社交界や食事会に誘われ、のこのことついっていってみればやれ合併しろだのやれ買収されろだのという話が続く。数年前まで農家で暮らしていたような人間が今年の100人に選ばれスーパースター達と一緒に談笑していて喜んでいる様などまるっきり成り上がり者で面白い。シリコンバレーではもちろん自分たちの会社を売って遊んで暮らすことを望んでいる人たちも大勢いるわけだが、独立して自分たちの会社をやっていこうとする人間にとってはこれぐらい恐ろしい場所もないのかもしれない。

”Holy shit!” Biz, said as he almost fell out of his chair, wasted. "We just got drunk with the guy who was almost the fuking president!"
But it didn't take long for them to realiize their answer was onece again going to be no. They were determained to keep Twitter independent.
"We gotta stop doing these meetings with famous people," Ev said. "They keep tryig to buy us!"

上記はアル・ゴア元副大統領と会った時にやはり買収(合併)を持ちかけられた時の話。断ればいいだけじゃないか、と思うかもしれないがTwitterみたいな技術的な特異性が何もないサービスなんか打つ手を間違えるとあっという間にコピーされて終わる。実際Mixiも恥ずかしげもなくパクってたし。Facebookにも買収されかけていたわけであって、そうなっていたら今頃Twitterは実名を出せ! なサービスになっていたかもしれないなあ。

あと面白かったのがイランの大統領選挙で、不正が疑われた為にTwitterを中心として抗議運動が急遽持ち上がった時の話。イランは検閲が厳しく電話のようなそれまで通常やりとりに使われていた雑誌や新聞は軒並み政府の規制がかかっていたのだが、Twitterは無事だった。その為若者を中心にして情報発信が広まり、SNSが政治と密接に関わった事案として当時かなり話題になった事件だ。

当時は僕もTwitterを始めたばかりだったから(2009年頃の話)わりかし印象に残っているのだが、Twitter社は当初メンテナンス予定だった時間を「クリティカルな問題故にメンテナンス自体は実行しなければならない」が、「イラン国内でのTwitterが果たしている役割を考え、メンテナンス時間を変更することにした」とアナウンスしていた。「おお、英断だねえ」とはたから見ているとそれだけ思うだけだが、決定している首脳陣からしてみれば大慌ての会議だったようだ。

そりゃそうだよなあ……ほとんど間をおかずに世界的なサービスになってしまい、前年比何十倍といった成長が続いている時である。いつもどおりメンテナンスしようとしていたら急に「イランで政治上重要なやりとりに使われているからメンテナンスをどうするか決めないといけない」なんて言われても「はあ? イラン??」といったところだっただろう。『We're clearly not smart enough to understand Iranian politics (省略) We dont know who the good guys are or who the bad guys are.』

それでもそんな状況で良い判断をしたと、今でも思うけれども。

世界的なサービスになり、現在五億人を超えるユーザがいるTwitter。最初はほんの十人ばかりの企業があれよあれよというまにそれだけの数のユーザを相手にする企業になれるというのはこの時代の面白さだが、それと共にスケールのデカイ問題に巻き込まれていく。サービスが世界的になれば問題も世界的に拡大していくのだ、といういい証左だろう、イランの件などは。でも傍から見ている分には、それもまた面白いんだよなあ。想像もつかないことが次々と勃発するから。

Twitterというツールは、おそらく今後も人々の間でなくてはならない「情報を発信するツール」や「孤独を減少させるためのツール」としてしばらく生き残っていくだろう。同時にエゴを丸出しにさせたり、馬鹿発見器と言われながら負の側面も露わにしていくだろう。開発者たちが思ってもみないことが現状いっぱい起こっている。日常使っているサービスの裏側にいろんなドラマがあるというのを知ることは、楽屋裏をのぞくようでたいへんたのしい。

Hatching Twitter

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