気に入らない点はいくつかある。
一冊の本として人間の共同体でのコミュニケーションを語り、人間のつながりを生むものとして現代でも行われるスキンシップ行動のルーツを求め、「進化」という観点から人類の起源を探り、さらには「宗教・文化」とは何か、なぜ生まれたのか、という話へと発展して行くその広さは素晴らしい。
ただまとまりはあまり感じられない。一つ一つの話は面白いがつながりは薄く盛り上がりも特になく唐突に本が終わる。あと著者の「私はこれが正しいと思う」という主観が入りすぎていると思う。もちろんそれは正しいのかもしれないがそれを前提に話が進んでいくので「おいおい」と思う。
だからといってつまらないとは限らない。そうだったのか! と膝を打つような話が数多く紹介されていて雑学的に知識が増えていく。それはやはり一本筋の通ったデッカイ木を自分の中に打ち立てるような快感ではないが、林を作るような面白さにつながる。
たとえば「頭を使って長生きしよう」という章ではIQと健康と死の関係について語られる。ざっくり書いてしまえば、十一歳の時点でのIQが一ポイント下がるごとに、七七歳までに死ぬ可能性が一パーセント高くなることがわかった。たとえば正常とされるIQはだいたい八五〜一一五だというが、IQ八五の人が七七歳を迎えられる確率はIQ一〇〇の人より一五パーセントも低くなってしまう。
面白かったのは中国が抱える時限爆弾、と言う箇所で、一人っ子政策を行った中国では実際に効果が出て人口が減ったものの働き手を欲したことから生まれてくる一人の子供はほとんどが男子になってしまい、今では中国は男あまり国家になってしまって、これからもなっていくという。
現代の中国では女性一〇〇人に対して男性一二五人といういびつな比率になっていて、あと10年後には人数でみると三七〇〇万人の男性があぶれる。ひょっとしたら10年後、日本に嫁を求めてくる中国人が大挙して押し寄せてくるかもしれない(笑)
内容が多岐にわたっているためここでスッキリとまとめることはできないがこんなふうにして「人間」についての現代最先端っぽい(よく知らない)「科学」的な知見が挙げられていく。適当に面白そうなところを読むだけでもええかも。

- 作者: ロビンダンバー,Robin Dunbar,藤井留美
- 出版社/メーカー: インターシフト
- 発売日: 2011/07
- メディア: 単行本
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