基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

500日間の集大成

 よく考えてみれば本の感想以外でエントリーを書くのは前身である楽天ブログから合わせても初めてである。何も最初からストイックに本の感想だけ書き続ける方向性でいこうなんて考えていたわけではないのだけれども、単純に書きたくならなかったから何一つ書かなかっただけである。あまりにも他の事を書かなかったので、今こうして本に関係ないことを書いているとひどく居心地が悪い。ひどく恥かしい。何でこんな思いをしてまで書かないといけないんだろう。道理に合わないことをしているような気がする。一度書きはじめてやっぱりもう少しで年が終わるのだからその時に締めくくりにして書こうそうしようと思っていったん書くのをやめたが、なんだか〜〜が終わったら本気出す、みたいないつまでも出来ない展開が予想できたので嫌な事は早めに終わらせてしまう事にする。そういえば今までブログ記事のタイトルといえば、本の題名と作者名を書くだけで何一つ考えなくてよかったのであるがどんなタイトルをつければいいのかさっぱりわからん。まあ適当に。

 そもそも何のためにこんな思いをしてまでこれを書いているかというとそろそろブログを始めて500日が過ぎようとしている上に、今年ももうすぐ終わりだし一年の締めくくりとして年間ベスト? 500日ベスト?でも書いておこうかなと。1年の締めくくりとはいっても読んだ本が300冊以上ある上にジャンルとかも何ら一貫性が感じられないばらばらなものばかりなのでひどくごちゃごちゃしたものになるのだが。

 それプラスこれ以上読んだ本が増えたら収拾がつかなくなりそうなのでここらでいっちょ整理しておこうかなと。前置きもこれぐらいにして本題に入ることにする。

 読んだジャンルは多い順で、SF97冊、歴史40冊ぐらい、ライトノベル30冊、ノンフィクション27冊、ミステリ26冊、文学22冊、あとはファンタジーとかホラーとか武侠がいくつか。さらに分類不可が30冊ぐらいあるような無いような。かなり適当だが数えるのも面倒くさいので。

SF

 やはりまずはSFから

膚の下 (下)

膚の下 (下)

 膚の下は言うまでもなく選ばれる。この作品の衝撃を抜くものは1年と半年がたっても未だ現れていない。時が過ぎて過去を美化する効果によってこのまま永遠の殿堂入り作品とかすことがほぼ決定されている作品。何しろこの作品がなかったら今こうしてだらだらとこんなことを書いている自分もいないはずである。読み終わった時に、居ても立ってもいられなくなって感想を書きだしたのがそもそもの始まりなのだから。

グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)

グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)

 鮮烈なイメージを頭の中に残していった作品。この作品によって飛浩隆の名が脳裏に刻みつけられた。当然続編であるラギッドガールもなのだが、シリーズとして扱っている。SFの根幹たるエロとヴァイオレンスを体現したような作品であるといえる。正直いってこのシリーズが終わるまでは死ねない。そんな作品に出会えたことは幸運だ。

 今年はティプトリーをたくさん読んだ年でもあった。もちろんたった一つの冴えたやり方をはじめとするもろもろの短編集も、当然のごとく面白かったのだが個人的にはこちらの方がよかった。何よりここに書かれている死生観はとてつもなく圧倒される。最初の250ページではここまでの傑作だとは到底思えなかったがその後の加速度といったら・・・。

 今思えば極端な話だがそれでこの作品の面白さが損なわれるわけではない。過去の名作を持ち出して何を今さらという感じかもしれないが読んだのがここ最近なのだから仕方がない。感想を読み返してみても読んだ当初の熱狂ぶりが伝わってくる。約35年越しにこうやって感動を巻き起こしてくれる小説の面白さがたまらん。30年前のゲームなんてやる気にならないもんね。

とりあえずSFからはこの四冊。どれをとっても外れということはあり得ない、と個人的には思っている。

歴史

 次に歴史である。正直水滸伝を歴史カテゴリに入れるのはおかしいと思うのだが入れてしまったのだからしょうがない。 

 言うまでもなく北方謙三の傑作。もちろん十九巻、楊令伝までを入れての評価である。十九巻という長丁場ながらも一切緊張感を失わない展開に、言うならば男が闘って死ぬだけの単純な(しかも北方謙三の書く男がこれでもかというほど男を発揮して死んでいく)話にも関わらず飽きが全くこないのは恐ろしい。

泣き虫弱虫諸葛孔明

泣き虫弱虫諸葛孔明

 これも歴史カテゴリに入れていいのかどうか迷う一冊ではある。タイトルにはそそられるものの、分厚さにひいてしまってあまり読む気がしなかったのだが1ページでも読みはじめてしまったらもう分厚さなんて何の気にもならない。それどころかこんなにページ数があって、なんて幸せなんだろうと感謝すらするだろう。笑える。とにかく笑える。作者も明らかに楽しんで書いている。作者も楽しい、読者も楽しい、印税で作者も楽しい。幸せスパイラルである。

秘曲 笑傲江湖〈1〉殺戮の序曲 金庸武侠小説集 (徳間文庫)

秘曲 笑傲江湖〈1〉殺戮の序曲 金庸武侠小説集 (徳間文庫)

 水滸伝よりもよほどこっちを入れる方がおかしいのだが、ジャンルがよくわからないので歴史で。一巻を読んだのは約2年前でまだこのブログを始めてもいなかった。その時はあまり面白いと感じずに読むのをやめてしまった。しかし何故か突然読みたくなり二巻から読み始めたがこれがまた突っ込みどころ満載なのだけれども、不思議と面白いから突っ込みどころがむしろ良い点になっているというキン肉マン現象が起こっていた。とにかくこの笑傲江湖の面白さを伝えるためには言葉を万と使わなければなるまいのだがここにそんな枠はないし、そもそもちゃんと感想を万と言葉を使って書いているので割愛である。

文学

 何気に文学も多少読んでいたようである。読んだと言ってもまだそんなのも読んでいなかったの? とバカにされるような基本的なものばかりで恥ずかしいといえば恥ずかしい。いやいやでもやっぱりこうして何年も伝え残されていくのだからそれだけ情報の強度も高い。面白いものばかりなのである。面白くなかったら残れなかったのだ。 

 文句なしに面白い作品である。正直最後の部分は軽く読み返しただけで体の奥底から震えが止まらなくなってくる。図書館で借りて読み終わった後すぐに本屋に走って買いに行ったのはこの作品ぐらいではないか。手元に置いておきたい作品。これで150ページしかないのは凄い。面白さは物語の長さに比例しないのだなと心底実感した。今自分の感想を読み返してみたらあまりにもくだらないことを書いていて噴飯ものだ。

 実はまだ二巻までしか読んでないのだが充分である。何しろこの先ある重要人物が死ぬと聞かされてしまって、なんだか読む気がしなくなってしまった。だが二巻までは面白くて仕方がない。何より笑える場面が多いのだ。フョードルがおれの金はおれがいないとダメなんだよぉ! と叫ぶ場面は腹を抱えて笑ったし、スメルジャコフが父親に向かって「なんで神は星とか光を三日目に作ったのに一日目から世界には光があったの?」という質問をして、父親が答えられずに「これが答えだよ!」と右ストレートをブチ込む場面はここ最近じゃ一番笑ったかもしれない。

 正直いってサリンジャーの書いている短編は意味が分からない。バナナフィッシュに最適な日とか、何かわかりそうで実は全然わからない。あるいはわからないことでわかっているのかもしれないとかわけのわからないことを考えたりもする。ただわからないというだけで、そこから確実に何かを受け取ってはいる。ここには書かないし、人に言う事もしないけれども、何かは受け取っている。恐らくそれは作者が込めた意味とは違っているだろうけれどあまり関係がないことのような気もする。サリンジャーの何が好きかっていったらそれはひとえに文章である。エズメのためには何度も読み返した。

ノンフィクション

 思ったよりノンフィクションも読んでいるのだなぁ。新書も結構読んだような気がするが、ろくなものが無い。何だか一時得たものがあったような気がするのだけれどいつのまにか消えてしまう。ってそりゃ自分が悪いのだよ。まあ逆恨みである。

利己的な遺伝子 <増補新装版>

利己的な遺伝子 <増補新装版>

 利己的な遺伝子。価値観を根底から覆されてしまったと言っても過言ではない。一つ問題があるとすれば、あまりに崇拝するあまり何かあるとすぐに利己的な遺伝子を思い出して、利己的な遺伝子にはこう書いてあったとそこから思考が出発することが多くなってしまったことだ。これはいかん。しかしそれぐらい凄い本であることは確か。

フェルマーの最終定理 (新潮文庫)

フェルマーの最終定理 (新潮文庫)

 サイモン・シンは凄いっすよ。暗号解読ももちろん凄いノンフィクションなのだけれども、二冊入れるのはなんとなくあれなので先に読んだフェルマーの最終定理。読み終えたときに勉強になったとかそんなこと関係なくて、シンプルに傑作小説を読み終えたときのような読後感に包まれる。

おわりに

 さてさてこんなところである。普通こういうのってベスト10! とかベスト20! とかそれでなくてもせめてベスト15! とか数をうまく合わせてくるのだろうが適当に選んでいたら結局12冊というなんとも中途半端な数になってしまった。これ以上増やす事も減らす事も出来そうにないので、もうこのままいくしかないのだが。ここに入れるかどうか迷った作品もいくつかあって一応書いておく。

 「マイナス・ゼロ/広瀬正」「永遠の王/T.H.ホワイト」「魂の駆動体/神林長平」「果てしなき流れの果てに/小松左京
マイナス・ゼロは言わずもがな、傑作。本当なら入っているぐらい面白いのだが、入ってないところを見ると深層心理的にはそこまで面白いと思っていないのかもしれない。永遠の王はラスト30ページはぶっちぎり、文句なし、殿堂入りするぐらいに揺さぶってくれるのであるが、上巻はまだいいとして下巻の大半が致命的なまでにつまらないので残念ながら。他の二作はどちらもベストに入れた作品には劣るかなと思い入れずに終わる。何はともあれこれでやりたかったことは出来た。満足だ・・・。もうブログをやめてしまってもいいぐらいには満足だ。ただ本を読んだら感想を書くのが習慣化してしまっていて、しばらくはこのまま書き続けるだろうけれども。