- 作者: よしもとばなな
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2009/04
- メディア: 文庫
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上記で引用されている一部分だけを読めば、よしもとばななってそんな常識が無い人なのか! というなんだかいやぁ〜な気分がするでしょう。自分もしましたし。『人生の旅をゆく』の中で繰り返される内容があります。それはノウハウに支配される人々への反感であって、それが居酒屋の件でも充分に発揮されている。そこを読んでいない、認識していないと居酒屋の件の見方も変わってくるのではないか。たとえば「すいか」の一つ前のエッセイ「忘れ物」ではよしもとばななが、百貨店にベビーカーを買いに行ったら(旅行に出たのだがベビーカーを持っていくのを忘れたから)販売はしていないと断られ、取り寄せもダメか? と何度聞いても断られたという話が書かれています。ここでよしもとばなながいやぁ〜な気分になると言っているのは、何度取り寄せもダメなの? と聞いても「申し訳ございません、当店では販売できないのです」とニコニコして繰り返す機械のような人間がいることなのだ。
で、そんなよしもとばななが気分を良くするのは「ああ、それだったら少し先の〜〜という店にありますよ」という柔軟な反応をする店員と会った時だ。同じ返答、システムに縛られた対応しかできない人間のことを機械と同じようなものだといって嫌悪し、柔軟性のあるその時々で違った対応をする人間に好意を寄せる。そういったよしもとばななの一貫した姿勢が、このエッセイの中では読みとれる。それがこの部分
人びとは全ての「不確定要素」を恐れている。私もそうかもしれない。だから何でも「確定」した対応をしたら大丈夫な気がしてしまう。でもきっとその方法の中には未来はない。そういう気がする。
もちろんダメだと言っている百貨店の店員に向かって、何度も「どうしてもダメ?」と聞くよしもとばななは空気読めないオバハンということになるのだろう。居酒屋の件も同様だ、だがこの本を読めば、居酒屋にいって酒を持ち込んで、それを柔軟な対応で許してくれたバイトの女の子が怒られて、システムに支配された店長に怒られていたらよしもとばななは怒るだろうというのが容易に想像がつく。一貫した姿勢とは、このことだ。それを読んだとき、自分にはいやぁ〜な気分は残らずに一種のすがすがしさを感じた。この空気の読め無さも含めてよしもとばななだなーと。