基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

読書日記

最近は小説を読むときになるべく、書かれている情景を思い浮かべようとしている。ただこれが結構難しい。世の中にはどうも小説を読む際に「情景を思い浮かべながら読むタイプ」と「文字だけで認識して読むタイプ」の二つのパターンがあるようで、当然ながら一々絵を展開しながら小説を読む人よりかは、世の中の「小説をたくさん読む人」は後者のタイプが多い。僕も文字だけで物語を認識しながら今まで読んできた。

だから憧れがあった。恐らく情景を認識しながら読むタイプでかつ、小説を読むことが好きな人たちは「文字だけで認識して読むタイプ」へと憧れを持つだろうが(たくさんすらすらと読めるから)こっちからしてみれば情景を思い浮かべながら読んだ方がより、面白いだろうと思うゆえに憧れはこちらにもある。

たとえば、今はスティーブン・キングの小説を読んでいるところなのだけれど、状況描写があってもそれを頭の中にうまいこと想像することが出来ない。こんな状況

ここの運動場は、よそよりもずっとでっかい。完全な正方形で、一辺が七十メートルあまり。北側は外塀で、その両端に監視塔がある。塔の上の看守は双眼鏡と散弾銃を持っている。正門はこの北塀にある。トラックの荷役場はぜんぶで五つある。(中略)東側はスリット形の小窓がならんだ分厚い石の壁だ。第五官房区はこの壁の裏側にある。西側は管理棟と診療所だ。*1ゴールデンボーイ

これだけの説明が一度になされる。正直いって、まったくどんな場所なのか想像できない。えっと、一辺が七十メートルっていうと僕の中学の時の校庭よりだいぶせまいな……とか、北側ってどっちだよ、とか、監視塔とかポンって書かれても、監視塔なんか見たこと無いし、どんな形なのか想像もできない。え、灯台みたいになってんのかな? あんまり位置が高すぎると咄嗟の時に散弾銃を持っている意味がないからプールの監視員ぐらい?

あとトラックの荷役場ってなんやねんって感じだし(想像はできるが)、だいたいトラックの荷役場は、この監獄空間のどこにあるの? さらにいえば、小窓の形であるスリット形っていうのがよくわかんないし(これは常識として知らないのは恥ずかしいのかもしれないが僕は知らない)この壁の裏側ってその壁は何の意味が合ってそこにあるんだろう? とか考えるとわけがわからなくなる。

普段情景を思い浮かべながら小説を読んでいる人は、いったいどのあたりまで想像しているんだろう? 自然に、僕のように悪戦苦闘しなくてもすらすらと浮かんでくるもなのだろうか? 映画を見ているように小説を読もうと思っても、僕の貧弱な想像力によって、監獄はファンタジックな監視塔に囲まれ、グラウンドの縮尺は想像するたびに乱高下し、とても現実の物語とは思えない異空間がそこには現出してしまう。

「他の人がどのように物語を読んでいるのか」というのは、シンプルでいてそれでいて今のところちゃんとした答えがまったく得られることのない、奥深い質問だなあと思う。そんなことを考えながら、最近小説を読んでいるのでした。でもこの読み方、結構気に入っているのだ。完璧に想像できなくても、「映画的な読み方」に近づくことはできるから。

たまには、読み方を変えてみるのも一興だと思いますよ。

*1:p.28