基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

群衆の心理

僕はとにかく人が集まるというそれ自体が嫌いで、学校も嫌いだったしオタクだがコミケには絶対に行きたくないしライブにすら行きたくない。人間というやつは群れると羞恥心がなくなったり、とにかく個人では絶対にしないようなことをしでかすようになる。コミケ係が名言をいってまとめられていたりするが、あれだって一人かつ真顔ではとてもいえないだろう。場の特殊性というか、同じ人種が集まっているからという安心感があってこそであり、そういう前提の上で行われる行動に近寄りたくないのだった。

群衆中にあるときの心理状態は単独である時とは異なり、いわゆる特殊状態にある。本書はそうした群衆が一般的にいってどのような性質を持っているのかを分析した本である。たぶん古典。そんなに明快かつ意外! な仮説や結論が出るわけではないけれど、まあ確かにそうだよねとうんうん頷きながら読む本。本書はそんなに厳密に群集の定義をしているわけではないが、主に扱っているのは街頭の群集や、名目をもった群衆(陪審員、議会の集会)などである。

さて、群衆には本書によれば3つの特徴があるという。1.単に大勢の中にいるというだけで、不可抗力な力を感じるようになる。さらに単独であるならば絶対にしないようなこともするようになる。コミケとかオタクの集まりみたいにね。2.精神的感染。感情や行為が感染しやすい。ライブが嫌いなのはみんなやたらとテンションが高くてキモいからだ。僕はどんなに好きなバンドのライブでも座って聴きたい。3.は暗示を受けやすいということだ。群衆の中にいると感情的になり論理性をなくしたやすく扇動される。ほんとかよ。

まあ本書のまとめはこれぐらいでいいだろう。この後もそれぞれの内容をもう少し細かく検証していくだけで大した内容ではない。ああでも指導者が暗示をかけるときにとるべき手法とかはちょっと面白かったかな。指導者は群衆を意のままに操りたかったら1.断言。2.反復。3.感染。を目指すべきであるという。ようは群衆というのは感情に支配され理性がなくなっている獣のような状態なのだから、シンプルな表現を繰り返して暗示をかけろというのだ。

普通群衆の指導者になることなんてないだろうと思うだろうが、いやいや今はネット全盛の時代ですからね。ある意味今ほど群集の「心理」のみが表出している時代もないのかもしれない。物理的肉体が集まるのは大変だし、ネットにはしょっちゅう炎上案件が発生しているから、この群集心理操作法を極めていけば炎上を敵対者に引き起こしネット上から抹殺することも不可能ではない。

あと本書では群衆について感情だけで動くとか理性がないのようにボロクソいっているし僕も全くその通りだと思うけれど、それが楽しいことはまったく否定しない。オタク同士で集まって普段はできないことをやるのは楽しそうだし、ライブで大勢の一体感を感じるのも楽しそうだ。僕はデモや学生運動に参加したことはないが、参加した人に聞いた話ではパワーが底から湧いてきてなんでもできる気がしたし、一体感がすごくて楽しかったといっていた。

群衆を指導する立場にたってみれば大きな力を発揮できることにもつながるだろう。自分が群衆として一時の特殊心理状態に浸るにせよ、指導もしくはちょびっとコントロールするにせよ、特殊な心理状態というやつは知っておいて損はないはずだ。とくに人が集まった時にいかに信用ならなくなるかを知っておけば、ネットのくだらない争いに巻き込まれることもなくなる(ほとんどくだらないが)

群衆心理 (講談社学術文庫)

群衆心理 (講談社学術文庫)