基本読書

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レビューで実際にリポグラムに挑戦バージョン『りぽぐら! (講談社ノベルス ニJ- 33) by 西尾維新』

・この記事は一部をのぞいて以下の10文字を禁止した状態によって書かれています。
「せ」「た」「つ」「て」「の」「ほ」「む」「り」「る」「わ」
・この記事は西尾維新さんの『りぽぐら!』のレビューになります。
・りぽぐら!が文字数を制限して書かれている実験小説の為、このレビューでもそのルールを一部踏襲しています。
・引用部については制限を外しております。
・制限なしのレビューはこちらを参照ください。りぽぐら! (講談社ノベルス ニJ- 33) by 西尾維新 - 基本読書
・下記から制限レビューが始まります。ではでは。



いかなお話をチャレンジお話と表現すればよいのかいまいち不明なんじゃけれども今回お手元に存在しますお話は100人に聞けば100人がチャレンジ話と返答するであろうまごうことなきチャレンジ話にゃ。200ページを超えますが中には短いお話が三個存在しますにゃ。それは何かがおかしい。いかにページ数を増幅しますかといえば、短いお話三個が、筋書きは同じままにそれぞれ4回ごと反復されますにゃ。以上を面白くします方法に、お話は下記規則に沿い、書かれますにゃ。

① 最初に短編小説を制限なく執筆。
② 五十音46字から、任意の6字を選択。
③ 残った40字を、くじ引きで10字ずつ、4グループに分ける。
④ その10字を使用しないで、①の短編小説をグループごと4パターン、執筆する!
⑤ 濁音・半濁音・拗音・促音は、基本の音と同じ扱い。音引きはその際の母音とする。
⑥ ②の6字は、どのパターンでも使用可。

ようは短いお話1バージョンごとに、10文字が禁止状況に。46字から10字、常時使用不可なわけにゃ(ランク3は禁止文字が16字に。上記はランク1に相当。)。禁止文字がヤバイ場合なんとかこうにか異次元な表現をしなければならないにゃ。短いお話におけますおもしろさはひとまず横にずらし、表現が毎度毎度どう変化しますかを愉快に感じるかが、今回は重要にゃ。

故に、ベーシックに短いお話を楽しく思うことが目標ならば、今回は買う意味はないにゃ。短いお話三個ゆえ、立ち読めばよいにゃ。短いお話自体は、著者色を感じない、ばらばらな傾向を見せ、これぐらいばらばらな方が俺は好きにゃ。故に俺は満足にゃ。ちなみに1作目は急遽妹が人殺しかもと、思いをはせますお兄ちゃんが主役なお話、2作目は人生をかけ、金取りいくさ(カイジ風味)、3作目は星進一を回想させます超異次元社会お話、どれも限界突破なおもしろさはないが、それなりにおもしろいにゃ。

疑問は同じ筋な短いお話を、使う言葉をがんじがらめにされ、それを面白く表現できるかということにゃけど。ラストからいえばそんなに面白くないにゃ。が、そこまで面白くなくないかといえば、そこそこというところかにゃ。なかなか面白い表現に会うこともなくはないにゃ。例をあげれば「い」が使用不可ならば「胃」は「消化器官」に変化し、「い」も「し」も使用不可ならば……言いかえが思い浮かばないにゃあ……。単語が禁止され、文章がガンガン変化し、一人称が変化し、口調が変化し……とどんどん表現が変化していくにゃ。

一例を引こう。

 この世で一番大切なものは、確かにお金ではないのかもしれない──人はお金では幸せになれないのかもしれない。ただし、この世で一番不要で、もっとも人を不幸にするものが借金であることは、僕にとっては疑いようがない。

これががんじがらめとして「せ」「た」「つ」「て」「の」「ほ」「む」「り」「る」「わ」*1が禁止されますと、下記へと変化しますにゃ。

社会上、お金は高価値な概念や──しかし、一番やない。人はお金じゃあ、幸福になれん。やけど、社会上一番不要、一番不価値なもんが、負債やちゅうことは、俺には明快や。

大阪弁になり、一人称が俺に変化を起こすにゃ。違う人かにゃ。借金は負債に変化し、世は社会に変化し表現として多く変化を伴うにゃ。細かくみれば、多く差異が存在。例にあげます10語を禁止実行しますと、こんなにも言語を構築しますことがつらいと理解しますかにゃ。これぐらいは難易度からすれば玄関にゃ。驚くぐらい文章が一変し、それがおもしろいにゃ。

10文字禁止じゃと、言語はうまいこと構築されないにゃ。それなおかげか、言語に無限な未来を感じ、逆に日々使用可な言語に、自由を意識しますにゃ。そんな中に起こります言語苦闘は、なかなか面白いし考えも拡散しますにゃ。ところがいかんせん既知なお話ゆえに、最初は面白い表現も、すぐに飽きが伴うことが避けられないにゃ。

あと人気著者故か、豪華に15人も絵師を使用。表現がばらばらゆえ、これもおもしろいにゃ。フェスティバル企画なゆえに、面白いとか、つまらないとか、いうべきじゃないかもしれないにゃ。チャレンジ、試みはなかなか面白いので、レビューに少しでも興味がわけばどうぞにゃ。馬鹿か著者はと思うならばおうちへ帰ろう。エンドレスエイトが面白くなければ、もちろんおうちへ帰ろう。

同じく文字が消え、使用不可が進行し、プラスお話も面白いとなれば、有名なSF御三家、左京に新一を除くラスト1人が書きました『残像に口紅を』をどうぞ。残像に口紅を / 筒井康隆 - 誰が得するんだよこの書評 最初から禁止されます状況から書きますか、禁止なし状況から禁止状況へと移行しますかは差異が存在しますゆえに、単純に比較はできないにゃ。しかし文字減少を主軸に、お話へはめます御三家ラスト1人と比べますと、西尾維新さんには悲壮な気もしますにゃ。

余白にプラス。禁止文字を、横文字を使用し置き換えを行う、これはどうかと思うにゃ。もちろん「自由」が使用不可ゆえにFreedomを使用なんて、そういうことじゃないけれど。例をプラスにあげれば感謝が使用不可ゆえにサンキューを使用なんてことが、ちょくちょく確認されます。「おいおいそれはオーケーか」と少し残念に思うにゃ。しかし日常に取り込まれ状態ゆえに、禁止も変かにゃ。

制限解除

…………滅茶苦茶難しい。四十六文字中十文字制限されただけで全然元の表現ができない。いま、5分ぐらい息を止めた後思いっきし息を吸う感じで気持ちよく言葉を吐き出している。ううん、制限なく言葉が使えるのは、なんて素晴らしいんだろう……。もう二度とやらないぞ。というか西尾維新先生、横文字を使うなんて残念だなんて言ってマジですいませんでした。横文字を使わないとまともに文章を構築できない時というのが確かにある。そしてこの難易度でちゃんと小説を構築してみせるのは、思っていた以上に大変だということがわかった。ちなみに語尾が「にゃ」なのは「た」も「て」も「る」も全部使えないと大阪弁にするしかないが、大阪弁は西尾維新先生の例で使われてしまっているので無理やり別のものに変えた。

いや、ほんと難しかった。なにしろ筒井康隆を打てないのでSF御三家の左京と新一をのぞいたラスト1人などという極端に意味不明な消去法的な表現を考えださなければいけないのですから、なんだそれといったかんじでしょう。この1500文字程度の記事を書くのに1時間超えるぐらい時間がかかりましたからね。表記の統一なんかする気力もないし、たぶん気づかないで使ってしまっているところがいくつもありそうだ。思っていた以上に西尾維新先生は凄かった。感服いたしました。あ、本自体も僕よりもっとレベルが高いけどだいたいこんなかんじなので「これになにか意味があるのか」と思った方はお帰り推奨であります。

りぽぐら! (講談社ノベルス)

りぽぐら! (講談社ノベルス)

残像に口紅を (中公文庫)

残像に口紅を (中公文庫)

*1:ここだけ例外としておいてくだせー……