ゆるゆる。ほのぼの。読書好きが図書館に入り浸って本の世界に入り込んで本浸りのシリーズ。とても心地よい。
六巻で完結。なんと第45回星雲賞候補参考作。かといってばりばりのSFかといえばそんなこともなく、ごくごくゆる〜いファンタジーというのが実態。本が好きでメガネで地味めな女の子と絵的にはわりとかっこいいがなんだかほわほわしている男の子が入学し、卒業していくまで物語。赤猫の悪魔により、妙な本ばかり集まる高校の第二図書館で本のつじつまをあわなくさせてしまう紙魚を、本の世界に入って排除する仕事を契約してさせられるようになる。
排除するといっても別に襲いかかってくるわけでも探す時にドラマがあるわけでもない。入ると速い時には1コマで片付いてしまうし、長い時でも一話あれば終わってしまう。紙魚は紙魚という名前の癖に魚ではなく猫の形をしているから「あ、いた。てやっ」という感じで簡単に取得できてしまう。ねこねこかわいい。ゆるゆるとたくさん出てくる架空の本のあらすじを楽しんだり、架空の本の内容に合わせて女の子がするコスプレを楽しんだりするお話、というのが一番ぴったりくる。
ノーストレスゆるゆる本だ。SF的には充分につじつまのあったお話はその時点で存在をはじめるだとか、紙魚によって本の内容が書き換わってしまうといった設定がおもしろいし、若干メタ的な要素も出てくるけれど、まあそこまで重要なわけでもない。現実に存在している本に入っていく内容だったらそれはそれで面白そうだと思ったけれども、「つじつまの合わない本」の中は世界が存在せず書き割りとしてしか存在できないとか喧嘩売りまくりの内容なのでちょっと厳しいか。
図書館でだらだらと過ごすところとか、出てくる人達がみな本好きで一分の隙もなく本を読んでいるところとか、いろんな図書館が出てくるところとか、ドラマ的な部分ではなく心情や環境にたいしての魅力が大きい。もちろん架空のお話の中に入り込んでいくのは「あはは、こんな話ないだろ」みたいなものから「ちょっとよんでみたいかも」というものまで様々で、たのしい。
そのうちキャラクタも増えていくがみなのほほんとしていて心地よい。恋愛もべたべたに進行するのではなく、ほんのちょっとずつ進行し地味めな女の子の魅力が描かれていくほのぼの進行なので好みだ。恋愛て少しでも配分を誤ると威力がデカ過ぎて本筋が引っ張られてしまうからあんまり好きじゃないんだよね、個人的に。設定的にいくらでも続けられそうなお話だがほぼリアルタイム進行で3年で卒業。
うーん、しかし、いいなあ、本の世界に入れるのは。仕事でいいから入りたいものだ。実際に入り込んだらなんだか恐ろしいことが起こりそうではあるけれども。本シリーズ、入り込んでくのはミステリばっかりなんだけど、自分が殺されちゃったりしたらどうなっちゃうんだろう。とまあなんだかいろいろ想像が広がっていくお話なのだ。ゆるゆると楽しみたい方はどうぞ。六巻でまとまっているしちょうどよい。
- 作者: 竹本泉
- 出版社/メーカー: エンターブレイン
- 発売日: 2013/03/25
- メディア: コミック
- この商品を含むブログを見る