基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

SFマガジン 2015年 04 月号から連載開始しましたとかいろいろ

先日こんなお知らせをしたばかりですがSFマガジンcakes版で「SF BOOK SCOPE」連載開始しました - 基本読書 今度は紙版のSFマガジンでも連載を始めさせていただくことになりました。*1 とはいえお話自体は先にこっちで何か書きませんかと連絡もらっていたので(cakes版は昨年の12月に突如持ち上がった企画ですし)前後してしまったところはありますが。しかしまあなんというか、SFマガジンはSFファンからすれば憧れの地ですから自分の文章が載っているのは単純に嬉しいです。

SFマガジン 2015年 04 月号

SFマガジン 2015年 04 月号

そもそも何を載せているのかといえばまず連載物として、2014年12月から2015年1月の間に出た海外SFをまとめてレビュウしています。これは次号以降も載ります。僕の前のページで香月さんが日本SFをまとめてレビュウしているので、僕は海外SF担当といったところでしょうか。もちろんその能力はあると考えていますが、いきなり任せていただき、ありがたいことです。そいでもう1ページ、注目の新刊SFレビュウということで神々廻楽市さんの『 鴉龍天晴(がりょうてんせい) 』について書いています。こっちはcakesに書いた物の圧縮版みたいになっていますが、2分の1以下の文章量になっているのでほぼ書きなおしてます。でもその分エッセンスをぎゅっと凝縮したものになっているのではないかと。
鴉龍天晴(がりょうてんせい) (ハヤカワSFシリーズJコレクション)

鴉龍天晴(がりょうてんせい) (ハヤカワSFシリーズJコレクション)

架空歴史物でファンタジィとSFがごった煮状態で日本東西戦争みたいな無茶苦茶な作品なんですがそれがまあ隅から隅まで配慮が行き届いている。細やかな歴史へのこだわりと、架空部分の構築っぷりが見事で、ボテンシャルの宝庫。個人的に物凄くおすすめの作品なのでぜひぜひ。5年後とかに尋常じゃない作品を書いていそうな感じ。しかし心底自分が面白いと思ったものについて存分に面白いといえる場を提供してもらえるんだから、こんなに嬉しいことはありませんな。

4月号の話、ハヤカワ文庫総解説について

自分の話ばっかりしてもあれなので早速読んでいる4月号の話でもすると、いやーこれはまあ素晴らしいですね。ハヤカワ文庫SF総解説。表紙からして余白なくカバーが詰まっていてぐっときますけど、中身がまた良い。総解説たって、なんか文庫裏みたいなしょぼいあらすじが抜粋されてそれで終わりなんでしょ? とか思っていたのですが、ちょっと舐めてました。もちろん一冊につき1000文字とかそんな分量があるわけではないですけど、書き手一人一人の個性の出る程度の分量(300文字ぐらいかな?)で書かれていて、ぱらぱらとめくるだけで愉しい。こっちも積極的に手をあげればよかったな。

全てが300文字程度というわけではなく、長大なシリーズ物など(たとえばローダンとか)は2ページ見開きで解説が書かれております。これいのいいところは、普通だったらもう二度と取り上げられることもなさそうな作品に目を通すきっかけになることですね。たとえばローダンとか恥ずかしながら読んだことがないんですが(だってそんな何百冊も読めないもの……)、見開きの紹介を読んでいて読みたくなってしまった。ローダンもなんか空気みたいに供給され続ける存在で「あってあたりまえのもの」と思ってしまっていたけどいやはや、こうやって長文の解説を読むと奥が深い……。

それは多くの人にとっての客観的に評価されるものではないかもしれないけれど、みな自分の人生において「特別な作品」というものがあります。この解説の割り振りはもちろんさまざまな事情や押し付け合いによって決められたものではあるでしょうけれども、「特別な思い入れ」のある作品について語るそれぞれは、たとえ文字数が少なかろうが熱量に溢れていて、作品以外の「各人の思い」みたいなのが見える。ああ、良い特集だなあと思ったのでした。

『新 SF観光局 第44回』と電子書籍について

読みながら書いているのですが大森望さんの『新 SF観光局 第44回』で紹介されていておりました。『レビューサイト「基本読書」(主なSF書評は『冬木糸一のサイエンス・フィクションレビュー傑作選[kindle版]』にまとまっている)でおなじみの冬木糸一氏ほかによる』と紹介されております(おなじみだったのか)。Kindle本まで拾い上げてもらい嬉しい限り。単に電子書籍つくってみたい! という動機からだったので出すこと優先、質はまあテンションを下げない程度にと誤字だらけで送り出してしまったこともあり、正直売れる度に胃が痛くなるんですが、それはまあ。もう少しきちんと作りこんでおけばよかった、とほほ。

でも電子書籍をわざわざつくった目的のひとつは「ログが溜まりすぎて検索性能が極端に悪くなったブログとは別に、パッケージングされた不動の形」として提示したいというのがあったので、その目的はきちんと果たせているのかなとも思います。ようは「わーこのブログちょっと読んでみたいな~どこから読もうかなー」という時に2000記事もあると、検索性は悪いし一覧性は悪いしでちょっとどうしようもない。でもその時に電子書籍があれば「ここに主要なものはまとめといたから興味があるならこれから読んでね」といえる。「一覧記事」をつくってそれを提示するのもいいんでしょうけど、なんだかなあ。

ちなみにこの電子書籍、出してからちょうど2月の末あたりで1年になるわけですが、2月3月の初動で100冊ぐらい売れて目標数達成、その後1月に地道に3〜10冊ぐらいずつ売り上げております。100冊という目標はそもそもKindleなどの普及がそこまで進んでいないこと、書評を必要とする層が極端に少ないこと、そもそもSFを好む層が少ないことなどからだいたいこんぐらいかな、という数字を出したんですが、まあそれぐらいはいるということですね。こういうふうに継続的に売れていくのをみると、ブログのような常に来客がある自分メディアを持っているのは大きいなと思います。

でも当然これで商売にしようと思ったり、生きていく支柱にしようと思ったらまた別のやり方を考えてないといけないでしょうね。宣伝し、知られなければ存在しないのと一緒ですから、電子書籍作家として本気で売ろうと思ったらい宣伝を集中的、戦略的にやるか、あるいは自身の知名度をあげるかをしないとお話にならないでしょう。Kindleに出しました! 売れるかなーじゃ売れる訳ありません。市場も整備され品揃えもよくなりプロの作品とせっていかなければいかないんですから大変な話です。

話がまた自分のところに戻ってきてしまっていますが、まあそんなところで。今後共ブログも連載もご贔屓によろしくお願い致します。もちろんブログもガシガシ更新しますから。しかしこうなってくると冬木糸一のサイエンス・フィクションレビュー傑作選2014年版とか、冬木糸一のサイエンス・ノンフィクションレビュー傑作選214年版とかいろいろ出したくなってきますね。やることリストに放り込んでおきます。じゃまた。

冬木糸一のサイエンス・フィクションレビュー傑作選

冬木糸一のサイエンス・フィクションレビュー傑作選

*1:cakes版のSFマガジンが出来たばっかりにわざわざ紙版のSFマガジンと言わないといけなくなったのが地味に面倒くさい!