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基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

Poor Numbers by MortenJerven

その他のノンフィクション 洋書

2010年にガーナのStatisticalServicesはGDPの上昇率を60%だと見積もった統計を出してきた。成長率60%ってなんやねん、アホか、どうやったんだと疑問に思うところが、単純に前年までの計算が極度に間違っていたからだ。その後より正確さを増した為、60%もの急成長を果たし低所得国から低所得国の中でも真ん中の国家へと格上げされたことになる(low to lower-middle-income country. )。

それがガーナだけの特殊事態かと思ったら大間違い、アフリカのGDP調査におけるそのお粗末な状況、不正確さ、複数の調査機関で出てくる数字に10%以上開きがある上にランク付けしたものなんて、何から何まで順位がばらばらになっている。そのどれを参照したかで議論がまったく変わってくるなど「実際問題、アフリカにおけるGDPの数字はどの程度正確なのか。そして、なんでそんなことになっているのか」について書かれたのがこのPoor Numbersだ。

GDPとはGross Domestic Productの略で日本語だと国内総生産にあたる。市場で取引された資材とサービスにかかった生産が計上されており、前年度からの伸び率などをみて成長率を出したりする、もっともポピュラーな指標のひとつといっていいだろう。多くの議論がこれを下敷きにするわけなので、この数値がそもそもまるで当てにならないとなったら正しい議論が成り立たなくなることはいうまでもない。

差し出される数値をみていくと唖然とするばかり。調査方法はお粗末極まりなく不確かな情報、エラー要因となるえる方法がとられていることが多い。そもそも市場自体の整備が為されておらず、記録されない取引が多すぎると、調査自体が困難だという事情もある。データがほとんど取得できなかった分野に関しては、人口から値を推測で出したり、似たような状況にあった隣の国の値を流用してみたりするので、値が正確になるはずがない。

またGDPについては基準年(BaseYear)を設定してその価格から総生産を評価しなおしているのだが、基準年が現在と離れすぎると、「技術の進歩が早い分乖離が大きくあてにならない状態」になってしまう。IMFはこの基準年について5年に一度更新するすすめを出している。が、アフリカでの基準年は実質10年以上放置されていることがほとんど。その間に携帯電話普及率があがり自由主義への傾向が加速しグローバル経済の中にアフリカが組み込まれていくといった変化があるのだから10年も前の基準が多くの場合あてにならない。つまりはだいたいにおいて「過小評価」されているといえよう。

ガーナの例で言えば2010年から大幅に成長率があがった前の基準年は1993年だった。実質17年前の基準年を使っていたわけで、これは他のアフリカ諸国も例外ではない(ナイジェリアの基準年は1990年)。著者が調べた限りではWorld Bank とthose published by the national statistical agencies での比較結果は情報の食い違いが大きく発生している。

※たとえば3つの調査機関、CBN,FA,FOSが出しているナイジェリアにおける年ごとの作物生産量を見る(%Growth)。1987年CBN⇒14.8、FAO⇒-8、FOS⇒-35.4 1988年CBN⇒1.6、FAO⇒0.7、FOS⇒41.4 お前ら一体何を見てその値を出してるんだとツッコミも追いつかないようなばらばらの値で、本気でやっていることとはどう考えても思えない。CBN⇒Central Bank of Nigeria. FOS=Food and Agriculture Organization. FOS=Federal Office of Statistics.

アフリカの経済を論じ行く末を想像するために必ず参照されるといってもいいGDPの値がそもそもまるで正確じゃありませんでしたとなったら、そのデータを基にしたあらゆる議論の正確性など消え去ってしまう。データの正確性、それも信頼され参照元になることの多いGDPのような値がそのような不正確な状況の下に置かれているというのは衝撃だ。