基本読書

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失われた未来

失われた未来

失われた未来

 1999年から2000年にかけて、毎日新聞にて連載されたのがこの「失われた未来」です。内容はやはりその時タイムリーな21世紀にかけて、21世紀へと期待をかけていた数々の未来と現実とのギャップを語るとかそんな感じ。しかしもう21世紀も10分の1過ぎようとしている今ではふーんそんな風に未来へ期待を持ってたんだーとしか思えません。面白かった話としては、ゴジラの話があります。以下引用。

 ゴジラの生みの親、田中友幸氏は、かつてゴジラ映画のヒットの秘密を「親に代わって子供に説教してやることだ」と語った。
 「説教の内容は何でも良い。生き物を大切に、とか、家族愛を大事にといった正論であればあるほどいい。こういう気恥かしい正論を、今の大人は子供に教えていない。そんな頼りない大人に代わって、ゴジラ映画は子供に説教してあげるのだ。すると親は、何か子供のためになったような気がして、また次のゴジラ映画を見に行こうという気になる」

 もちろんこれはゴジラが放映された当時の手法であって、現在に応用できるものではないでしょう。ただ創作のヒントみたいなものはここにあるなーと。それは多分時代性の反映です。自分たちが失ってしまったものを、エンターテイメントの中に見出して安心するのでしょう。田中友幸氏が語っている内容も、子供というよりかはむしろ大人に焦点を当てているように思えます。ゴジラが始まったのは1954年で、このときから大人が気恥かしい正論を言わなくなったのかどうかは知りませんが(多分戦争が終わったあたりから本格的に言わなくなったと思うのだけど)ちょうど気恥かしい正論なんてまっぴらという若い世代と、気恥かしい正論を真に受けて育ってきた世代の波みたいなものがあったんじゃないかなーなどと想像すると面白いです。失われた、あるいは失われつつある価値観を作品の中に反映させる…それがウケるコツかもしれませんねえ。