基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

今さらだけどアバター観た。

 今さらだけど観てきましたが……いやあ! これは大変素晴らしかった! 観る前はね、凄く凄く躊躇してたんですがね。あんなに気持ち悪い青い人間たちを、そう何時間も見れたもんじゃねえよ! って。うん……でもあくまで個人的なことを言えば実際最後まで気持ち悪かったんですけどね。キスシーンとかうげぇ……なんだこのがっくり感……と思いながら観ていましたし。ただそれは作品が悪いというよりかは、圧倒的にこっちのせいだといえます。演出としてはちゃんとあの青い身体に感情移入できるように構成されていて、説得力はありました。わたしの場合あまりにも長い期間「気持ち悪い……」と思い続けてきたので、嫌悪感が覆せないほどに根を張りすぎていたようです。これは失敗した点ですね。ただそんなことはどうでもよくなるぐらい映像が素晴らしかったし、物語の構築度も素晴らしかった。身も蓋もないことを言ってしまえば、わたしは「お金がかかっている」映画を観たいのだ。湯水のように金が使われていって、特にツッコミどころのなくひたすら気持ちが良い映画が観たいのだ。そういう気持ちに、しっかりとアバターは答えてくれて、素晴らしいと思った。

あらすじ

 ストーリーは単純明快。美しい緑の生い茂る惑星パンドラに、人間達はとある鉱物を採取する為に来ていた。しかしそこには先住民がすでにいて、鉱物を得る為の交渉は難航を極めていた。そんな時に元海兵隊員の足が不自由な主人公はやってくる。足が不自由でも問題ないのは、彼が「アバター」によって先住民の身体に意識を移し替えることが出来るからだ。その身体で彼は大地を走り、ジャンプしすることができる。同じ姿になった後、彼は先住民に溶け込み、情報を流しながらもその文化を獲得していく。しかし同時に人間達は先住民を追い払う準備を着々と進めていて……、主人公はどちらの側に立つのか。身体を棄てるのか、捨てないのか。

レビュー

 ストーリーの単純明快さはこの場合凄く良かったと思います。なれない3Dメガネなんかつけさせられて、慣れない3D、慣れない構図、慣れない青い馬面、異世界、そういったものを次々と突き付けられて、その上重厚なテーマ、ストーリーを語られてしまったら頭がパンクしてしまう。それから何と言っても映像的な演出が凄い。山あり谷ありの深さのある地形は3Dという表現にぴったり当てはまっているし、何より先住民の身体の大きさが良かった。普通の人の二倍ぐらいあって、手足が異常に長いんですが、そのおかげで「世界」をがっしりと味わっている感覚がある。「圧倒的な自然」の演出として、木やら葉っぱやら何やらが全部デカいんですけど、そういったデカい自然に「全身を使って」ぶつかっていく。わたし達は都会に住んでいたりすると、全力で走ったり飛んだり跳ねたりする機会なんて学校を卒業したらもう存在しない。それはやっぱり不満足なはずなんですよ。だって、使える身体があるのに使えないんだもの。走ろうと思ったら走れるはずなのに、走れない。飛べないし。だから身体のボテンシャルを全部絞り出すかのような、アバターの疾走感にはしてやられた、と思った。そしてそれは人間の体のサイズではそこまで感じ取れなくて、あの大きさだからこそなのだ。

 主人公の足が不随になっているとか、そういった細かい点が全部効果的に働いていました。彼は最初は不遇の状況下にいるわけですが、アバターを使用して身体を移し替えればその状況下から抜け出すことが出来る。彼が車椅子で登場した瞬間、映像を通してわたし達にはそれが伝わって、彼が新たな「肉体」を得る喜びを自然に追って行ける。テーマ的にも、「で、身体を乗り換えることが出来るようになった時、実際それってありなの? 本来の「自分」っていうのは、別け難く「身体」とセットになっているものなんじゃないの?」というのが浮かび上がったり、そこから一歩進んだ「身体を捨てちゃうっていうのはどうよ?」にもちゃんと踏み込まれているんですよね。直接的には描かれないですけど。だから人間に身体は必要か? という「身体論」としても面白いと思いました。そう言う視点はこの映画をよく言われているように、ただ単に過去のアメリカと先住民に置き換えてみていたら出てきずらいだろうと思う。大筋が単純でも、細かいところ、ディティールには思想が現れていて、とっても良かった。こんなに最後まで見に行かなかった自分が言うのはあれだし、もうみんな観ているかと思いますが、ぜひとも映画館で観た方がよろしいです。