二日後には映画が公開される『インシテミル』ですが、原作も文句なしに面白かったです。映画化もされるぐらいなので著者は最近ミステリィ業界ではかなりの成長株、米澤穂信先生。文章にもキャラにも特筆するものがあるわけでもないですが(読みやすいけど)展開のさせ方が非常にうまいと思いました。
本書の簡単なあらすじはこんな感じ。『超高額の時給につられて集まった12人の男女。だが彼らを待っていたのは、参加者同士に殺人をけしかける犯人当てゲームだった、とある施設に閉じ込められた彼らがけしかけられるのは、より多くの報酬を巡って参加者同士が殺し合う犯人当てゲームだった』
いわゆるクローズドサークルですね。ちなみにクローズドサークルとはミステリィ用語で、Wikipedia(クローズド・サークル - Wikipedia)から引用すると『何らかの事情で外界との往来が断たれた状況、あるいはそうした状況下でおこる事件を扱った作品を指す。』ということになります。
このクローズドサークルという言葉と、そのシチュエーション、ミステリィ好きの人間には割と当たり前というかピカチュウは黄色い、レベルの常識的知識なのですが、一般的にはそんなに知名度があるわけではないですよね。
しかし最近のミステリィはその専門の書き手であればあるほどミステリィ的ガジェットを「知っていて当たり前」という前提で書いてくるんですよね(キャラクターの誰もがクローズドサークルの事やミステリィのお約束に詳しすぎるなど)。
本書はその「常識」をひっくり返してきます。個人的にはここが、一番面白かったかな。文庫版の解説にもありますけれども、ミステリィの常識を客観的にみなす、メタミステリィとしても読めるわけです。
バトルロワイヤル的な要素もあり(武器的な意味で)、ミステリィの謎解きとしても大変面白く、メタミステリィとしても読める、非常に幅が広い作品だと感じました。なかなかオススメ〜
- 作者: 米澤穂信
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2010/06/10
- メディア: 文庫
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