もう二年か、と思いつつ。内容自体は半分以上が伊藤計劃:第弐位相のブログなのでこの本について言う事は特にないのですが。これも一種のブログ本と言えましょう。ただテーマごとにまとめて読みやすくするブログ本とは違い、性質はまったく違うのですが。ブログまで含めて伊藤計劃氏の書いたものを全て本にしてやろうという執念です。ブログの他には漫画や小説が収録。ちなみにブログも全部が収録されているわけではないようです。面白かった話なんかがこの本には載っていなくてアレェーと思ったり。
読んでいて考えていたのは氏の映画評はめちゃくちゃ凄いな、と。いやはや。何が凄いのかと言えば、もう何もかもと言うほかなく。膨大な過去作品への知識、フィクションが生まれ出てくる土壌としての文化、政治、経済、兵器、戦争、撮影技法の知識、役者の知識、全てが混然一体となって一つの作品を捉えている。要するに、同じ映画を見ていても受け取る量が圧倒的に違う。
そしてそれが何より面白い。作品の見方がどんどん変わる。ある文脈からはぼんくら映画でも、別の文脈から見れば傑作と言える、そういう見方を与えてくれる。しかしこういうのを読まされて何が困るかって、こうして本の感想を書くのが非常に悲しくなってくることで(どうしたって僕が書いているようなものを批評とはいえない)。
本書で書かれているようなもの、これこそが批評である(もちろん本書の内容はそれだけではない。が、まあいいでしょう)
- 作者: 伊藤計劃,早川書房編集部
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2011/03
- メディア: 単行本
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