基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

はじめまして数学

これはいい……。凄くいい……。

最近、数学や科学をもう少し常識程度に知っておかねばならないだろうと一人勝手に考えていて、この『はじめまして数学』を読み始めたのですが、これはシンプルに読み物として面白く、また子供から大人まで広く楽しめるように書かれていると感じます。数学を楽しもうと思うすべての人に価値があるでしょう。

内容は「自然数」から始まる非常に簡単な数学エッセイ。全三巻で構成されている。なんだろう。どうしてこんなに面白いんだろう、って考えてみるとですね、数字の組み合わせが、想像力を飛躍させるからなのじゃあないかな、そしてそのことに気が付かせてくれるからじゃないかな、って抽象的に思うのですよ。

たとえば二巻には、スペースシャトルの通常周回軌道は地表からの高さ、すなわち高度にしてどれくらいでしょうか? という質問が出てきます。答えはほんのすぐそこ、300kmです。東京から名古屋まで、高速道路で三時間の距離。さて、では地球を一周した長さはどれぐらいでしょうか? と質問は続きます。答えはおよそ40000km。

今少し書いた部分のエッセイの目的は、数の大きさを具体的に想像できるように掴むこと。『これは数学を応用する上で、最も大切なことです。有限の大きさの数には、無限とは異なる難しさもあります』*1

そして、数学のいいところにまで触れてくれます。僕は、正直数学をしっかりと学んでこなかったことを、今更ながらにちょっとミスったかなあ……と控えめに後悔していたところなのですが、その事をずばり書いてくれている。先に少しだけ書いてしまえば、数学は「客観」がどういうことなのかを教えてくれるのです。

 数学では比較的容易に、自分自身の考え方の正否が確かめられます。例えば、結果の分かっている計算を、二種類の異なる方法で計算してみましょう。それは、計算手法には関係なく、必ず同じ結果になるはずですね。もし、ならなければ、それは自分の考え方のどこかに誤りがあったことを意味します。他に理由はありません。
 数学は、自分で自分に嘘をついて、ごまかしてしまう心さえ無くせば、誰に頼ることもなく、自分の力だけで、正しい考え方を身につけることができる、極めて稀な学問なのです。

主観とは「私はこう思う」ということです。「私は幽霊はいると思う」などです。もし幽霊が誰にでも見えるものならば、これは客観となります。まったく客観のない主張を正しいと断定することはできないでしょう。数学は客観性のある学問なのです。「私は1+1は3だと思う」といったって、誰も相手にしてくれません。

本書を読んでいて一番感動したのは、「虚数」の箇所。簡単に説明すると−を二乗すると+になる。+を二乗すると+になる。そこで、二乗すると−になるなる数を生み出したのです。これが虚数です。虚数自体に感動したというのも、もちろんあるのだけれども、これを考え付いた数学者の想像力に感動しました。

これは数学嫌いな人や、今までまったく触れてこなかった人には積極的にお勧めしたいなあ。まあネット書店にも楽天ぐらいしか在庫が無い上にたぶん本屋にもどこにもないので(僕も探し回ったけど無かった)図書館とかで借りたらどうでしょうか。

*1:p.156