基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

子供の科学 2011年 06月号

ここ半年ぐらい購読していたが全て面白かった。

徹底して子供向けにわかりやすく書かれているが、技術の集積である。伝えたいメッセージも明快でわかりやすい。この雑誌を読んで育つ子供がいるというだけで、日本の未来に希望が持てるぐらい。投稿してくる小学生、中学生の知的レベルは明らかに僕より上だし(笑)

今号で面白かったのは『極限環境でくらす生き物たち』という特集。南極、深海、乾燥地と三種類の極限環境と、そこで暮らす生き物たちの紹介が行われるが、どの生物も環境に適応する為にとてもユニークな進化というか、対応をしていて、僕より頭いいなあ(笑)と思いながら読んでた。

たとえばコウテイペンギンが住む南極は-20度にもなる極寒の地で、その中で生きる為にペンギンは人間がおしくらまんじゅうをするようにみんなで集まる。これはハドリングと呼ばれる行動で、ハドリング内部の温度は30度に保たれるという。

問題はハドリングの外側が寒いことで、「ハハァ、外側のペンギンは自己犠牲の精神を発揮して死んでから壁となって仲間を守るんだな」とか僕は考えていたのだがなんと順番に寒い外側から暖かい内側に移動して全員が均等になるように配置換えをするのだと言う。人間だとズルをするヤツが現れそうなものだが、ペンギンは凄いなあ! でもひょっとしたらズルするやつもいるかもしれないけど。

深海ではクジラの死骸が底に落ちていって、これを栄養源とする鯨骨(げいこつと読む)生物群集なんていうものが形成されるらしいし、深海の異世界ップりハンパない。世界観が地上とまるで違う。

子供の科学の記事は凄くわかりやすくて、分析しながら読んでいたのだけれど、絶対に科学やテクノロジーをそのまま説明したりしない。たとえば子供の科学では一番最初に、最新の研究発表内容を紹介する記事がくる。今号では1秒間に2000万コマも撮影する超高速動画撮影技術の説明がされていた。

言葉だけで聞くと何百万画素とかの例もあるし、数字が大きいからと言って何が凄いのかよくわからないけど、こんなたとえ話で説明してくれる『2000万分の1秒という時間は、光でさえ15mしか進むことができない短い時間です。このような短い時間で起こることが研究できるようになるので、新素材の開発、超小型電子部品の品質向上、細胞加工などの生命工学の分野で役立つと期待されています』

その技術がどれだけ凄いのかを、具体的でわかりやすい例えを使って説明し、さらにそれが身近な分野でどう役に立つのかを説明してみせる。プロの技だなあ。

また今号面白いとおもった事の一つに、『「想定外」という言葉』という短いエッセイがある。想定外という言葉の持つ意味と危険性を鋭く分析したエッセイで、短いながらも読んだ時びっくりしてしまった。少し引用しましょう。

 (福島原発に設置された津波対策の堤防は5.7mという数字を受けて)……2001年6月に、東北大学箕浦幸治教授が大学の広報誌「まなびの杜」16号に発表した「津波災害は繰り返す」の中に、869年に起きた「貞観地震(推定マグニチュード8.3以上)」について、
「…仙台平野の海岸で最大で9mに達する津波が、7・8分間隔で繰り返し来襲したと推定されました。相馬市の海岸にはさらに大きな津波が来襲したようです」として、さらに「年代を測定したところ、過去3000年間に3度、津波が遡上したと試算され…規模も貞観津波に匹敵すると推定されます…津波による海水の遡上が800年から1100年に一度発生していると推定されました。貞観津波の来襲からすでに1100年余の時が経ており…仙台湾冲で巨大な津波が発生する可能性が懸念されます」と書かれているんじゃ。
 1000年に一度のことを「想定」して備えるのか、という意見もあるが、起きたら重大な被害をもたらす事故や災害については、慎重すぎるくらいに臆病になって、科学者や技術者は歴史や事実と向き合うべきだ。キミが将来科学者になったら、「想定外」という言葉を使わないでほしい。そういったとたん、それ以上考えることをやめてしまうから。…ワシからのお願いじゃ!

これを読んで思ったのは、想定外という言葉のうかつさと、それ以上に1100年のスパンを現実のレベルで観測し、現代において1100年前に起こったものと同様のレベルの津波がくるかもしれないと予測をつけることができる科学者? 歴史家の知見の凄まじさです。それだけの長いスパンで物事をかんがえることができるのか……。

いやはや、最初にも書きましたが、これを読んだ子供たちが大人になると、未来は明るいかも、と思えますよね?