基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

Five Billion Years of Solitude by LeeBillings

Astrobiologyという分野。宇宙生物学みたいな感じだろうか。地球以外への生物探査や、地球によく似た人間が移住できるような惑星の発見についての詳細な一冊。太陽系外にそうした惑星を探すにあたって、地質学、化学、生物学と多様な面からの科学的知見がワンテーマでまとめられているのでなかなかおもしろかった。著者はアメリカの科学ジャーナリストで、Amazonで検索する限りではこれが初めての著書のようだ。

一般向けノンフィクションなので一人の天文学者が夫を亡くしてそれでも私がんばるわ的なドラマエピソードや、天文学者へのインタビューとして繰り返し繰り返し「俺達がこの宇宙に生物が人間だけじゃないってことを証明してみせるぜ」「世界をひっくり返してやる!」みたいな内容が多数挿入されているのが興ざめだけど、そんなところに文句をいったことでしょうがない(めちゃくちゃ書いている)。

主に話に出てくるのは宇宙生物学関係者でFrank Drake、Greg Laughlin、James Kasting、Sara Seagerの4人ぐらいだったかな。Frank Drakeはかの有名な地球外知的生命体の存在可能性の見積もりを出す「ドレイクの方程式」を提唱した人だし、その他の人々も各惑星ごとの大気圏の研究者であったり、地質学系の研究者であったりと様々な分野に散らばっている。太陽の寿命を提示しながら数十億年ぐらいで地球は人間の住める環境じゃなくなっちゃうよ〜みたいなことまで手広くカバーするのだが、数十億年後のことは今はちょっと……という気分になる。

最初の太陽系外惑星1992年に見つかってからその後、800を超える太陽系外惑星が発見されていて、今も日々新しく惑星に関する新たなもあがっていて全然追い切れない。たとえばさっきたまたま読んでいた今月号の子供の科学では、水蒸気が主成分の待機を持つ可能性のあるスーパーアースを確認といった記事がある。大きさや重力のよく似た惑星も随時見つかっており、統計を用いた仮説では地球型惑星はこの宇宙には20億程度の見積もりだという試算もある。

望遠鏡などの機器も発達し、次々と太陽系外惑星も新しい情報も見つかっているにも関わらずどうにも憂鬱な雰囲気で筆が進むのは宇宙生物学を取り巻く現状がなかなか厳しい環境にあることも一因としてあるのだろう。NASAの予算は年々がりがりと削られていき、私営の観測所は地球外生命体発見のための調査にはなかなか使用できない。次々と太陽系外惑星は見つかってはいる。そしてこれから先もしもっと本当に地球そっくりなサイズ、水があって酸素があってメタンがあって……という惑星が見つかったとしても、さらに調査をすすめるにはもっとたくさんの機材、何よりスペースが必要になってくる。

もちろん悲観的なことばかりではなく、また人間ドラマ的な小賢しい描写ばかりでもなく、きっちりとサイエンスノンフィクションとしての責務は果たしている。特に具体的にどうやって太陽系外惑星の大気状態などを知るのかといったことや、地球における大気の状態が今までどうやって変化してきて、ある変数が変わると全体がどう変わっていくのかといった「惑星大気学」みたいな部分が新鮮で面白かった。

「我々はいつか来るとはっきりわかっている地球の終わりに向けてただ孤独で待つか、一方で惑星のゆりかごを超えて、空の向こう側まで惑星を探しに出て行くかのどちらかを選ぶことが出来る」と著者は書いている。本書に出てくる研究者たちはもちろん後者に打ち込んできた人たちで、その身を天文学、地質学に費やしている。未来は地球外惑星にあると信じきっているような人たちだった。遠くを見ている人たちの話は面白いんだよねえ。

Five Billion Years of Solitude: The Search for Life Among the Stars

Five Billion Years of Solitude: The Search for Life Among the Stars