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機械獣が跋扈する世界を思う存分冒険する──『Horizon Zero Dawn』

Horizon Zero Dawn 通常版 - PS4

Horizon Zero Dawn 通常版 - PS4

『Horizon Zero Dawn』はこれまで『KILLZONE』などのFPSタイトルを開発してきたゲリラゲームズが新たにオープンワールドに挑んだ大作である──などという前提情報/開発会社がどうとか以前に、2015年のE3で公開された、広大な自然を機械の獣たちが歩き回り、人間の文明は矢と槍で戦うレベルまで退行してしまっているポストアポカリプスな世界観とグラフィックに一瞬で惚れ込んでしまった僕である。
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とはいえいきなりオープンワールドに挑戦して傑作がつくれるわけでも……と思っていたけれども、これが嬉しい誤算で大変レベルの高い一品である。サブクエは残っているが、一旦メインストーリーをクリアしたので総評をあげておくことにする。

簡単に総評

まず、ゲリラゲームズは相当他のオープンワールドゲームをうまくパクったなと思った。たとえばしっかりとしたキャラクタ性を持つ主人公を立て、世界の行末を左右する物語に投入する流れやゲームシステムはウィッチャー3を彷彿とさせる。世界や機械を乗りこなすシステムはFar cryを。そうやってオープンワールドのシステムをパクりながら、それを統合するグラフィック(やUI)は文句なしの出来栄えで、砂漠、サバンナ、豪雪とそれぞれまったく違った素晴らしい風景をみせてくれる。

一ヶ月ぐらいかけてちまちまストーリー進めるかな……と思って手を出したら一週間で30時間ぐらいかけて無心でプレイしてしまうぐらいには続きが気になるシナリオで、サイドクエストや世界観構築もよく出来ている。いくらか不満点もあるが、基本的には独自の世界観をガッツリと示した、大満足な大作ゲームといったところだ。

シナリオ、世界観について

1000年後の未来を舞台にし、豊かな自然、その中を我が物顔で歩き回り人間を襲いまくる機械の獣たち。さまざまな習慣、文化を持つ部族が点在する人類の勢力が均衡している──という世界観がまず素晴らしい。いったいなぜ世界はこのような状態になったのか? という大きな謎は物語開始地点では誰も知らないが(疑問にすら思わない)物語が進む度に過去に起こった"厄災"の真実が判明していくことになる。

主人公となる女性のアーロイはたくましく、自分の何十倍も大きい機械獣たちを相手に飛び回り跳ね回り罠を仕掛けさまざまな矢を放ち殺しまくる! 親がおらず、異端児として部族から爪弾きにされて育った彼女は、自分の母親は誰なのか、ルーツはどこにあるのかを辿るため(と諸々の事情によって)旅に出る。個人的な探求の旅と世界に何があったのかを探る冒険は道を同じくし、ストーリーの訴求力はかなり高い。

オープンワールドといえば自身の選択によって世界の命運が変わる物も多いが、本作はルート分岐はない分アーロイの物語としてしっかりと完結させている。ラストバトルに至るまでの流れは、大作オープンワールドゲームだったらこれぐらいはやってもらいたい! という水準を超えている派手なものなのでお楽しみに。

バトルについて

嬉しかったのが、バトルが大変におもしろいところである。R1で弱槍攻撃、R2で強槍攻撃、L2で弓の照準と動作自体は非常に単純ながらも、使える飛び道具の数が多い。長弓、短距離弓、そのそれぞれに属性矢、爆裂矢、必中矢などの特殊な矢が選択できる。ロープキャスター(獣を地面に縛り付ける)や、トラップも複数あり、「これ……無理じゃね……??」みたいな超デカ物を相手にいろいろな戦い方ができる。

普通に矢を打ってたら一発でHPの増減がわからないレベルでしか減らせない大物も(最初、倒し方がわからなくて相手が追ってくるマップギリギリのところに陣取って40分ぐらい矢を打ち続けて倒した)、倒し方がわかってしまえば新しい武器やレベル上げなどをしなくても1分程度で処理できたりする。特にトラップは適切に扱えばとても強く、普通だったら倒せない相手をサクッと倒せるのがきもちい。

レベルによって上がるのは基礎体力とスキルポイントで、スキルは戦闘を便利にするもの(矢を狙う時の時間の流れを遅くしたり)も多いが基本的に重要なのはプレイヤースキルの向上、敵の行動パターンと弱点の分析である。そのためプレイするうちにどんどんうまくなって効率的に機械の群れが倒せるようになっていく快感がある。

機械獣をハックして乗り物にできたりするシステムもあるのだけど、この作り込みはいまいちに感じた。全25種の機械獣のうち乗れるのは3種類ぐらいだけで、あとのはハックは出来るものの、ペットのように連れ回したりは不可能なので物足りない(ハックした場所で勝手に戦ってくれることはあるけど)。結局すぐ足りなくなる素材を集めるためにもほとんど機械獣のハックを使うことはなく徒歩で移動していた。

サイドクエストとか

サイドクエストのシナリオもめっぽうしっかりしていて、ボリュームも多い(一個30分〜1時間ぐらいか)。ただ、僕の中でのサイドクエストの到達点は今は『ウィッチャー3』になっているので、そこまでの作り込みではない、という感じか。総じて世界の背景を感じさせる内容のクエストが多いのは素晴らしい点。

機械獣について

全25種と聞くと相当少なく感じられる。実際そのうちの何体かはボス格でほとんど出くわすことがないことを考えると、フィールドを歩いていて出くわすのはおなじみの数体のみで新鮮味が感じられない──というマイナス点はある。

ただ一体一体のデザインは異常に優れているし、それぞれに部位の概念があって部位ごとに破壊判定があったりするので、これはそうしたトレードオフの結果なのだろう。こちらの行動の先読みまでする高度なAIや、実在の動物の行動を模倣したリアル感もあいまって実に魅力的にこの世界を彩ってくれている。

次回作に期待。

と、たいへん楽しんだのだけど、なんというか現世代のオープンワールドゲーの良いとこを詰め込んでみましたみたいな作品なので良くも悪くもその限界も露呈しまっているように感じた。それもこれもゼルダの"オープンエア"を横目にゲームをしていたせいだとは思うが、バトル・アクションもマップの移動も、まだまだ"自由"とは程遠いなという感じで、次はもっと進化したオープンワールドを遊んでみたいものだ。

今回はシナリオは素晴らしいとは言え、選択肢が物語に分岐を与えたりと言った要素がほとんどないし、機械獣についてもまだやれるべきことは多くありそうだしで進化の余地はまだ残っている。新規IPの立ち上げとしては抜群にうまくいったとおもうので、このままゲリラゲームズにはこの路線で次をつくってもらいたいものだ。