基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

ゴールデンスランバー/伊坂幸太郎


あらすじ

逃げろ!オズワルドにされるぞ!

感想 ネタバレ無

間違いなく面白い。

全く無駄のない数々の描写に、圧倒された。
これは伊坂だからという点もある。少しでも不思議な点、不自然な点があると期待してしまう。伊坂ならやってくれる──
そのせいでさりげない描写でも伏線として機能して、のちのち生きてくる。

あとやっぱりなんといっても会話が最高。こんな会話、伊坂にしか書けねえ。
逃げろ!オズワルドにされるぞ でしびれた。
何故か泣けた。

帯に、現時点での集大成と書いてあるように、確かに伏線、会話、ストーリーとどれをとっても完成度の高さはほかの作品を圧倒しているように思えた。しかし作品自体の面白さが、他の作品よりも飛びぬけているかというかと、少し疑問に思ってしまうのが小説の難しいところか。

ラストの終わり方に納得のいかない人も多いのではないかと想像する。

それにしてもマスコミは酷い言われようだな。まぁそれだけの事をしているのであるが。序盤はスロースタートで、中盤から駆け足かな。加速していく。

話がでかくなればでかくなるほど、ほころびもでかくなる。そのほころびを悟らせないようにするのが、作者の力量だと思う。
そろそろさすがに、伊坂幸太郎がいつもあとがきでいっている現実とはかけ離れた部分が多い、という部分を読者に納得させられなくなってきたのではないか。ここがギリギリ限界点といった感じがする。

正直いってラストああくるとは全く予想してなかった。やられた!っと言う感じだ。読み終わった後は誰かれ構わず、これを読め!とつきつけたい衝動に駆られた。

そういえば伊坂幸太郎を好きだという人間はよく聞くけれども、嫌いだという人間をあまり聞いた事がない。何故こんなに伊坂が一般人に受け入れられるのか、感覚としてはわかるのだがうまく言葉に出来ない。

信頼、というもののなんと美しい事よ。

感想 ネタバレ有

七美が最高すぎる。まさかラストも七美が持って行くとは。まさか真の主役は七美ではないか?ゴールデンスランバーの格ゲーが出たら間違いなく隠しキャラだな。間違いない。

それにしてもドラマにしたらおもしろそうな話だ。何しろ派手なのがいい。ただ過去と現在が入り混じるのはわかりずらいから変えた方がいいか。

それからラストで助けたアイドルが出てくるところ。今まで散々アイドルを助けたアイドルを助けた、って強調していたのも、やはり伏線だったのか。やはりラストは予想外な出来事で締めくくりたいよね。

しかしテレビで散々犯罪者だ!と騒ぎたてられているのに、それでも犯人じゃないと信じてくれる人たちがいるっていうのは、なんて心強い事なんだろうと読んでいて思った。もちろん現実じゃそううまく行くはずもなく、息子はやっていないなんて主張をするオヤジがテレビで放映されたなんて話とんと聞いた事がないからな。あるいは、いたとしても映っていないだけか。

人を信じる事が出来る奴は、人から信じられる事が出来るのかもしれない。


 「俺なんて、ドストエフスキーのこと昔、刃物を持ったエスキモーだと思ってましたけどね。ドスとエスキモー」


笑った。いったいどこからこんな発想が出てくるんだ。だいたいドスって日本語じゃねーか。


 「すぐに返信しないタイプの子かもしれないっすよ。受信がうまくできなかった、とか。センター呼び出し、してみました?」
 「俺がセンターだったら、激怒するくらい、呼び出したよ。メールはありません、って。こっちだってそんなの重々分かってるっての」

アホすぎる。激怒するくらい呼び出したよってとこが滅茶苦茶面白いな。普通ここにこうやって改めて書くと全然面白くないような気がしてくるんだが、ドスとエスキモーも激怒するくらい呼び出したも全く色あせずに面白い。

それにしても三浦のキャラがよくわからん。何の面白みもないキャラだったような気がする。確かにかなり役に立った事はたったのだが、印象が弱い。死んでしまったし。

俺は犯人じゃない、と書いて車のサンバイザーに挟んでおいて、しばらくたって戻ったら、だと思った、って書いてあったとかいうところを読んだとき不覚にも泣いた。卑怯じゃろ・・・。


 「名乗らない、正義の味方のおまえたち、本当に雅春が犯人だと信じているのなら、賭けてみろ。金じゃねえぞ、何か自分の人生にとって大事なものを賭けろ。おまえたちは今、それだけのことをやっているんだ。俺たちの人生を、勢いだけで潰す気だ。いいか、これがおまえたちの仕事だということは認める。仕事というのはそういうものだ。ただな、自分の仕事が他人の人生を台無しにするかもしれねえんだったら、覚悟はいるんだよ。バスの運転手も、ビルの設計士も、料理人もな、みんな最善の注意を払ってやってんだよ。なぜなら、他人の人生を背負ってるからだ。覚悟を持てよ」


覚悟を持てよ──
間違いなくこの本の中での1,2を争う名シーンだ。いったいこの文章を完成させるのにどれぐらいの時間をかけたのか。よく練り込まれていると感じる。
名乗らない、正義の味方のおまえたちって格好良すぎるだろ・・・。大絶滅の感想でも書いたけれど、人を告発する事は誰だってできる。わかりやすい悪に向かって悪口をいい、正義の味方になることは誰にだってできる。それが問題なのだろう。まったくかっこいいぜオヤジ。

それから最後のたいへんよくできました、か。やばいなぁ。白ヤギさんとかの話も伏線だと思ってたんだが大したこと無かったな。なんかまだ書いてない事があるような気がするけれどこのへんで。

2008/7/16 読了