- 作者: 大塚英志
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2006/06
- メディア: 文庫
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オリジナリティはないけれど小説の中で動いてくれるキャラクターの作り方について
よく言われる批判として、オリジナリティが無いというのがあげられるが、実際ほとんどのキャラクターにはネタ元だったり似たようなものだったりがあるよねって話。こっから長々とロードス島戦記がいかにオリジナリティ溢れていないかについて触れられていたり、全てにネタ元があることについて書かれている。ようはほとんどの作品にとってオリジナリティ何てものは存在しなくて、批判に使われるオリジナリティが無いが本当に意味しているところは、設定に意味がないということなのだよって話である。たとえば左右で眼が違うキャラクターを出したり、猫耳ツンデレ何でもいいけれどそういうキャラクターを作ったとする。問題なのは猫耳であることが物語に密接に絡みついてこなかったり、ツンデレというキャラが本当に何の意味もなくただツンデレだったりする場合である。こういう場合人はありきたりの設定を使ってオリジナリティが無いと感じるという。
キャラクターからドラマを生み出す
左右の眼の色が違うのならばそれに物語と密接に関連した理由を考えなければならないのである。たとえばハンター×ハンターだったらクラピカという眼の色が感情の変化によって変化するキャラクターが出てくる。クラピカの一族はその目の色が変わる特殊な性質によって、様々な組織から目を狙われ一族を皆殺しにされている。クラピカの目的は一族を皆殺しにした幻影旅団という組織を捉えることである。つまりこのようにドラマといかに不可分に結び付いているかが問題なのである。結局物語なんていうものはありきたりなパターンの組み合わせである。というよりも人が面白いと感じるのにはやはり一定の法則があるわけで、そうするとパターン自体は数が限られてくる。パターンの組み合わせをいかにうまくやるかが作者の個性となるわけである。
お話の法則
面白いとされるお話の基本的なパターンも紹介されている。
1.何かが欠けている(お金がなかったり、救急医療制度がなかったりという状態)
2.課題が示される(新しいレシピを覚える、今の技術では治せない患者さんが出現する)
3.課題の解決(レシピや治療法を身につける)
4.欠けていたものがちゃんとある状態になる(お金が入ってくる、救急医療が確立する)
言われてみればほとんどの物語はこのパターンに当てはまるようだ。ハンター×ハンターでたとえるならば、
1.何かが欠けている→ゴンには父親が欠けている
2.課題が示される→ハンターになって父親を探す
3.課題の解決→とりあえずハンターになる
4.欠けていたものがちゃんとある状態になる→まだ
大長編ともなると、最初に挙げられた大きな目標を追いながらも、小さい目標も同時に追い求めることになるのだろう。カイトを助けに行ったりクラピカを助けたり、その全てにとりあえずこの法則は適用できそうだ。ジョン・アーヴィングも確か自分の著書で、私にできる事は自分のキャラクターに試練を与えてそれを克服させることだけだ、というようなことを言っていたし。まあパターンにそって考えるだけじゃなく、時にはパターン外の思考をすることが実は一番大切なことなのかもしれない。まったく新しいものを作り出すことも才能か。清涼院流水みたいな。
細部なんか矛盾したっていい
これは読んでいて自分に当てはまるので痛かった部分である。週刊連載の漫画で、先週は右腕についてた時計が左腕になってるじゃねーか! みたいな些細な矛盾を指摘したって別に何の意味はないという話。関係ない細部なんかいくら矛盾してもいいけれど、神が宿るのは細部だという話。多くの小説家志望の人たちが、自分の創った細かい世界設定にがんじがらめにして話を動かせずにいるけれど、話を動かすために世界設定があるのだとすればわかりやすい。つまり都合が悪ければ矛盾していようがなんだろうがどんどん変更していけやこらあってことなのである。そして神が宿るのはどこの細部かといえば、主題が光る細部なのである。