- 作者: 小松左京
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2006/07
- メディア: 文庫
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「漫画星雲の手塚治虫星系の近傍にSF惑星が発見され、星新一宇宙船船長が偵察、矢野徹共感が柴野拓美教官とともに入植者を養成、それで光瀬龍パイロットが着陸、福島正美技師が測量して青写真を作成・・・・・・・。いちはやく小松左京ブルドーザーが整地してね、そこに眉村卓貨物列車が資材を運び、石川喬司新聞発刊、半村良酒場開店、筒井康隆スポーツカーが走り……」(『SFへの遺言』)
やはり手塚治虫の功績は大きいなあ。草創期の人間も今はもう、みんな高齢もしくはすでに亡くなっていたりと寂しい限りである。中でも小松左京と筒井康隆の影響力が自分にとって絶大で、恐らく自分より先にこの二人はいなくなってしまうだろうことを考えるとどうしていいかわからなくなる。筒井康隆と小松左京のいない世界はさぞやつまらんだろうと思うのだけれど、新しい人たちがいるので大丈夫と思う他ない。伊藤計劃のような例もいるけれど…。
さて、内容に関して言えばおおむね楽しめたものの、納得のいかないものもいくつかあった。小松左京の何が好きかといったら読み手に伝わってくるような作者の本気というか、俺はこれがかきてえんだよ! というのがわかるところだ。日本沈没明日泥棒果てしなき旅の果てにとそのどれもに本気が込められている。似たような作家といえば夢枕獏だろうか。獏さんは感情移入しているのかどうなのかしらないが、場面場面でボロボロと泣きながら書いているらしい(本当かどうかは知らないが)。似たようなものを、小松左京からも感じるのである。ここのおさめられているショートショートの半分以上は何だか、書かされているとでもいうような窮屈さを感じた。もちろんプロだからその上で何を書くのかが重要なのだが、もしくは以下に書かされている感を、(手抜き感といってもいいかもしれないが)感じてしまったのだから仕方ない。良いものをあげると表題作の一生に一度の月や、宇宙に思いを馳せる話はどれもこれも素晴らしい。宇宙に対する思いというか、SFに対する思いを語らせたら小松左京は日本一だ。間違いなく。