- 作者: M
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2007/12/25
- メディア: 単行本
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Mの正体について最初はあまりに映像的な展開の数々、突然挿入される圧倒的な解説長台詞。章ごとのヒキの感じがどう見ても週刊マンガで、これはどう考えても漫画家が書いた小説だろ…。などと邪推していた。しかし良く考えたらこれは映画のノベライズであり、展開が映像寄りなのは当然といえる。しかしその場合問題なのは、映画をそのまま文章にしたのか? というものである。L change the WorLdを観たことがないので分からないが、恐らく完全ノベライズなのだろう。映像として出されたものをそのまま文章にしたようなちぐはぐ感を、本書からは受ける。小説家が書いたとは思えないんだよなー。裏にも第一線で活躍する作家と書かれているけれど、別に小説家とは書いていない。漫画家だって作家だし、他にも数多く選択肢はある。
しかし映像は想像して読む事が出来る。これを読めばもう映画を見る必要はないだろう。なんて書いておきながら実際の映画と、この本の内容が全然別物だったら笑える。いや、笑えないわ。
また注意しておきたい点がある。ここで語られている世界は映画版のパラレルワールドであることだ。幸いにしてL change the WorLdの前篇に当たるデスノートの映画を見ていたので、何故Lがこんな状況に追い込まれているのかが理解できた。見ていないと多分何もわからないまま始まって、よくわからないまま終わってしまうだろう。
コンな人にお勧めである。
デスノートが好きで、映画版デスノート二部作を見ている。しかしL change the WorLdを観るガッツはない。あとLの性格がこんなんじゃねーよ! って怒りだしたりしない。そんな人にはお勧め。
地味ながらも、細菌テロをたくらむテロ組織vsLという構図はでかく、アメリカ大統領まで絡んでくる。実はスケールのでかいことをやっているのだが、関わっている人間があまり多く描写されないのでスケールが小さく感じてしまうのが難点。しかしラストはやはり素晴らしく。ここだけでもいいので映像でみたいなと思わせる展開であった。なるほど、何一つ忘れられないという設定をこうやって使ってくるかとしきりと感心した。
反面どうしても気になってしまう点もある。最後の方で急に出てくる、性善説のオンパレード。どいつもこいつも実は善い人であったー。どひゃーなんだそりゃあ。アメリカ大統領にまで子どもたちが笑顔を失わない未来をつくることを約束させてるし、そんな善人だったっけ? L君は? なんか敵キャラが改心するだけならまだいいんだけど、実は最初っからいい人でしたーっていう展開が受け付ないんだよね…。本家本元のデスノートが、正義の反対はまた別の正義であるみたいなことを書いていたとしても、こっちのLの正義は決して否定されることはないんだよなー。