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鹿鼎記 2 天地会の風雲児/金庸

鹿鼎記 2 天地会の風雲児

鹿鼎記 2 天地会の風雲児

あらすじ

 昨日は少年宦官
 今日は反清の志士
 明日の命は運次第。
 女の子二人現れて
 両手に花のいかさま稼業
 少年の未来はどっちだ!?(ヒロインルート選択的な意味で)

単行本版の表紙がひどい

 ろくてーき第二巻。どーでもええけど表紙がそそられない。もう、まったく何にもそそられない。なんか拍子に冴えないおっさんがコスプレしてこっち見てるんだけど・・・なにこれ怖い。上の画像だと小さくてよく見えないかもしれないけれど、ちょっとこの表紙はどうかと思うんだよ。一巻も妖怪にしか見えない少年のドアップだったし。しかもデフォルメされた可愛い妖怪ならまだしも、なんかリアルに怖い少年のドアップだし。ちょっとひいた。

ドSショタvsツンデレ二匹

 二巻にて、ようやくヒロインが出てきた。それも一気に二人も。これがまた金庸らしいヒロインというか、非常にキャラ付がシンプルでわかりやすい。それにしてもこの二人に対する少年の行動が、どう考えてもその辺の親父…なのに少年というなんとも面白いギャップを生み出している。たとえば、ヒロインの一人、淋剣屏。彼女は少年との初対面時、豚の死体の腹の中に入れられて誘拐され、目の前にドサっと出されたのだが当然のように穴道(ツボのようなもの、身動きが取れなくなるツボがある)を突かれている。当然淋剣屏は動けなくて、少年が適当に穴をついて解放してやろうとするのだが…。

 韋小宝はいきなり彼女の右胸を指さした
 「ここかい?」
 郡主はにわかに顔を真っ赤に染めて、大きく眼を見開いた。瞬きなどできるはずもない。韋小宝はまた「ここかい?」と左胸を指さした。
 「ここかい?」

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 AAみづらっ! 何はともあれそれをやっていいのはアイドルマスターのプロデューサーだけだろっ! まあそんな感じでヒロイン1はいとも簡単に韋小宝に陥落させられてしまう。あまりにたやすく陥落せしめたので、ひょっとして恋愛の奥儀は韋小宝に学べばいいのではないか? と思ったぐらいである。彼に学ぶとしたら何だ? マッサージしてやるよ、といっておもむろに胸をつくのが正しいんだろうか? ドラゴンボール金庸世界だったら許されても現実世界じゃ許されないぞ! そんなことは置いといて。何よりヒロイン1は可愛い! 今どき珍しい純情系のキャラ描写である。今だったらこんなヒロインやろうとしても、読者はもうそれぐらいじゃ満足しないからやめろ、と言われてしまうような、そんなヒロイン。胸つつかれて顔真っ赤にして、韋小宝に「あなた」と呼べ! さもないとお前の顔に亀を掘りつけてやるぞ! と脅しつけられ、顔を真っ赤にしながらあ…あ…という! グゥレィト! もう一人は凄まじいツンデレなのだが、ひょっとしたら次の巻でもうツンデレではなくなっているかもしれないので注意が必要である。そもそも本当にヒロインかどうかまだ判断がつかない。とにかく後半から盛り上がっていって、ラスト50ページが一番面白かった。今まで散々二人をイジめてきた韋小宝が、情にほだされて牢の中にいるヒロイン2の思い人を釈放するあたり。

真の「英雄」とは?

 どうもこの作品の中で、本当の英雄とは何か? という問いを行っているような気がする。この作品の中で最も眼をひく対立構造といえば反政府組織の偉い地位についていながら、同時に皇帝の側近でもあるという点。そして次に、世の中にはびこっている英雄豪傑とは真逆の位置にいる韋小宝と、自称英雄豪傑を歌っている方々との対比

 英雄好漢といえば聞こえがいいが、実際この作品の中では英雄好漢とは表向きそういっているだけで、みんな腹の中はかけ離れている。みんながみんな、英雄好漢を演じているだけだといえる。そして実際、それだけで英雄好漢としての条件は満たしているのだ。余計なことはいわずに、英雄としての態度さえ保っていれば、腹で何を考えていても、誰も気づかないし、どれだけ卑劣な行いをしてもバレなければ誰にも文句を言われない。さらには建前を全面に押し出し卑劣な行為を必死に正当化しようとする。相手が誘拐したんだからこっちも誘拐してやれ! とかこいつらは平然としでかすのである。

 そこにきて韋小宝といえば、英雄好漢などといった言葉、表面だけにとらわれずに淡々と「リスクマネージメント」を行っているように思える。たとえていうならば、武士だのなんだの精神論を語っている江戸時代に立ち向かう合理主義、のような感じ。韋小宝はもちろん異端であって、自分自身異端であることを認識している。だからたまに英雄のような行動をとっても、自分は英雄の真似ごとをしているのだ…と割と自覚的である。だが世の中で英雄好漢どもだって、真似ごとをしているわけであってその点では韋小宝と大差ない。違う点は自覚しているか、していないかだけである。さてさて、これからどうなっていくのやら。