基本読書

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宇宙を織りなすもの/ブライアン・グリーン

宇宙を織りなすもの――時間と空間の正体 下

宇宙を織りなすもの――時間と空間の正体 下

雑感

 副題として時間と空間の正体、とついている本書。実に900ページにも及ぶ長丁場で、さすがに読み切るのに時間がかかりました。内容も非常に多岐にわたり、主に時代順にそって語られるのですがこれ一冊読めば現代の宇宙論に関しては一通りの知識がそろうのではないでしょうか。たとえば11次元に関する話だったり、量子力学光速度不変の法則、M理論、ひも理論、ビッグバン、と本当によりどりみどりです。逆にいえば、個々テーマとした本を今までに読んできた人ならばそれ程真新しい内容とはいえないでしょう。広く浅く、というほど浅くはないのですが、やはり専門的に描かれた他の書籍と比べると劣ってしまいます。

 たとえば11次元に関する話だったらミチオ・カクのパラレルワールド 11次元の宇宙から超空間へ』の方が一冊まるまるそれに語っているだけに詳しいし、ビッグバンから始まる宇宙創成の話だったら『宇宙創成』の方が詳しいし、ひも理論は同作者の『エレガントな宇宙』の方が当然、詳しいです。それらの本に無くてこの本にあるものといえばやはりそれらを一度に語ってしまえるがゆえの贅沢さでしょう。核として人類永遠不変のテーマ『空間と時間』を語っていく。最新物理学であるM理論ひも理論をすべて一つのテーマに注ぎ込む贅沢さが、ここでは味わえるのです。

どんな話?

 本書の流れはおもに三つにわけることができる一つめは物理学のこれまで。ニュートン率いる古典物理学からアインシュタイン相対性理論、さらには量子力学までを非常にわかりやすい説明を加えていく。二つ目は<<現在>>ここでは主に量子力学相対性理論を使って、宇宙のどんなことが明らかになったか──? ということが明かされる。具体的には、宇宙ははたしてどのように生まれたのか、何故我々の時間は過去から現在、そして未来へと流れていくのだろうか? などなど。三つ目は物理学の<<これから>>である。ひも/M理論の解説から始まって、それらを利用してわかった真実、宇宙の空間次元は三次元ではなく、十次元であることや、ここが仮想現実である可能性はあるのだろうか? またSFファンはたまらないテレポーテーションとタイムマシンは可能だろうか? という質問に答えている。どちらも今はまだわからないが、とりあえず不可能だという結論は導き出せていない、といった状況。とっても長いけれども、その分内容はぎっしりと詰まっている。