- 作者: 新城カズマ
- 出版社/メーカー: 角川学芸出版
- 発売日: 2009/08/08
- メディア: 単行本
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第1章 さまよえる跛行者
第2章 塔の中の姫君
第3章 二つの顔をもつ男
第4章 武装戦闘美女
第5章 時空を超える恋人たち
第6章 あぶない賢者
第7章 造物主を滅ぼすもの
補章A キャラクター作成チャート
第8章 賀東招二・新城カズマ対談―ベストセラーライトノベル作家に聞く「キャラクターと物語作りの現場」
補章B 物語について
さまよえる跛行者などはキャラクターの分類で、たとえばこんなキャラクター。『満たされぬなにかを求めて、あるいは欠けているものを探し求めてさまようキャラクター達』となります。このキャラクター像の特徴としては、何かが欠けている状態から始まり、それを埋めることを目的としてさまようという点があげられます。大塚英志のいくつかの本ですと、ここまで書いて終わっているところですがこの物語工学論の場合もう一歩踏み込んで例を充実させています。たとえば欠けているものは何かといったときに、病気、負傷・怪我・四肢の欠損 などと細かく例をあげて、かなり深いところまでパターンわけしている。本書最大の特徴といえばやっぱりこの詳細な類例ということになるのだろう。その分専門性に特化しすぎて、物語の書き方にあまり興味のない自分のようないわゆる野次馬にはあまり価値のあるものではないけれど、それはゲームが好きだからといってゲームプログラミングの本を読んでも楽しくないという類の価値のなさだ。その分、物語を作ろうとしている人間にとっては価値が増しているといえる。
しかし自分自身はこのやり方には結構疑問なんですよね。物語がいくらパターンの構成からできているといっても、それは既存の作品を無理やりパターンに当てはめていっているだけで、作るのとはまた別の話なんじゃないかなあと。だいたい、こういった物語工学論は誰にでも物語をたやすく作れるようにしよう、という目的で書かれていると思うのですが、小説を書くやり方なんか本当に人それぞれですから。まったくプロットを決めずに書く人もいれば、大まかな方向性だけ決めて書く人もいる。プロットを立ててもまったく守らない人がいれば、プロットを立てて半分ぐらい守る人もいる。そういった多様性に対応しきれないのですが、そんなことは書いてる側としては承知ですよな。ここで書かれている物語工学論はなるほどそれはその通りかもしれないけど、この教えだけでは「自分だけの作品を表現する、自分だけの手段」については何もわからないのではないかと思うのです。