- 作者: 土井隆義
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2008/03
- メディア: 新書
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まあそれは置いといて、現代の生きづらさとはどのようなものでしょうか。本書ではその現代の生きづらさを、「優しい関係」という言葉で表しています。その内実は、日々友人の顔色をうかがいながら、空気を読みながら、友人とのあいだに争点をつくらないようにして生きている。お互いの反感を表に出さないように気をつけ、自分の発言が相手の心情をそこねないように極力ぼかした表現のみに限定される。その高度なやり取りは、大勢の人間との交流を不可能にし(相手を深く分析しなけりゃならんので)個人個人の関係性が島宇宙化していると。
んーそんでもってなんでそんなことになっちゃったの? という話が本を読んでいてもよくわからなかったので、そこは飛ばして。現代は決定的に自己の承認欲が満たされない状態にあるのですよ。たとえばマズローの欲求段階説というのがあって、人は一番下の段階にある欲を満たしたら次の欲を、それを満たすとまた次の欲を、という風に段々欲の階層をあげていくのですが、その一番上にあるのが「承認欲求」なのですね。人から認められたい、という欲求です。今の日本では基本的に何でも手に入れられるのですが、この承認欲求だけはなかなか満たせない。割となんでもできる時代ですので、他人より突出した何かを持つのが難しいのですね。そして突出した部分がないということを認識してしまうと「自分なんか生きていても何の意味もない…」という結論にもいきついてしまう。その自己承認を手軽に行える手段がケータイで、「だれかとつながっていたい」という欲求が過度なケータイ依存を生みだしたりもしている。
面白いなーと思ったのが、「手に入れることの困難さは、その価値を増大させる」て部分で、これを現代に適用するとどんな目標にもリアリティが感じられにくくなっているのは、目標に魅力がないわけではなく有り余る選択肢の存在が個々の目標の魅力を減退させるからであり。選んだ瞬間に選ばれなかった選択肢の価値があがってしまうからだ、となるわけです。何かを手に入れた瞬間に、手に入れられなかったものの価値があがってしまうんですね。モノや機会が溢れかえっている現代特有の病とでもいいましょうか、この本の中では、その結果暴力的な方向に行かざるを得なくて、だからみんな自殺するのだで終わってしまっているんですけれどもそれじゃあ無責任ってものですよ。
- 作者: 東浩紀
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2009/12/18
- メディア: 単行本
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グローバル・ベーシックケイパビリティとクォンタム・ライフログ。その構想は、地下室人の世界への「貢献」を、その現実的可能性/反現実的消費を含めたうえで算定し、計算して資源を割り当てる相厚生経済学の可能性。地下室人を地下室に放置しながらその宿命から仮想的に解き放つ可能性、言いかえれば、富はそのままにして、尊厳だけを無限の可能性から調達することでその総量を爆発的に増やす可能性を示唆している。そして、もしその可能性が本当につかめるのならば、ぼくたちは、地下室人を地下室に放置し、彼らになにも要求せず、尊厳を傷つけず、ただ世界の豊かさを拒否させておき、それでも世界全体は普遍的合理性に則って運営されるような、そのような世界を作ることが出来る。
まだほんの数十ページしか読んでないのでこのお話がどこに行きつくのかさっぱりわかりませんけれど、心踊りますなあ。