基本読書

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かっこいいだけではかっこ悪い──惑星のさみだれ8巻

惑星のさみだれ 8 (ヤングキングコミックス)

惑星のさみだれ 8 (ヤングキングコミックス)

 いやほんと面白いですねこれ。一巻ずつ読んで感想書くとか言っておきながら一気に全部読んでしまった。巻数を増すごとにどんどん面白くなってきているのが信じられない。登場人物がめちゃくちゃ多いんですよ。死んでしまった人も含めれば主要人物だけで12人、それに一人一人にパートナーがいるので24人(人間じゃないけど)それに普通の生活圏における人達もいますし、後半戦における最大の見どころはありすぎて困るので一つ一つ解説していきます。惑星のさみだれ全体についての説明は、そのうちまた別のエントリで書きます。とりあえずここでは8巻限定で。6巻と7巻についてもまた個別に書きます。あんまり毎日毎日さみだれさみだれーー!! って書き続けるのもあれなんで、一日で全部消化したいです。以下ネタバレ

敵に個性が生まれた。

 今までの敵の泥人形は、何を考えているのかわからないし、ただ単に敵に向かっていくだけの存在だったのが、色々と質問を重ねることで、ついに自己とは何なのかという問いに辿り着く。自分の姿かたちを自由に変えられるせいで自己がわからなくなる極悪キャラクターといえば、真っ先に思い浮かぶのはネウロのサイですけれども、あそこまで深く書かれなかったのは残念ではあります。具体的に書けば、「殺しちゃった」ところで道が途切れちゃったのが残念だったかなあと。これがまた、紆余曲折を経て味方になるとかだったらとっても少年漫画チックじゃあないですか。かつての敵が味方になる! 王道ですよね。まぁネウロはあっちが本道で、さみだれではほんのワンエピソードという扱いですから仕方ないわけですけれども。

 「受け継がれる意志」というのは、作品を通しても結構大きく見えてくるテーマだと思いますが、十一体目も風巻さんに泥人形とは何かという問いに対しての答えを出させ太陽くんを大きく成長させるキッカケになったことを思えばもうこれ仲間といえなくもないですけど(そうか?

白道さんがべらぼうにイカス!

 イカスとか最近聞かないですよね。どーでもいいですけど。白道さんとりあえずまだ生きてて良かった! 本当に良かった! これからしばらく後もまだ生きてそうで良かった! それぐらい死相が見えていた白道さんですが、この巻だとめちゃくちゃかわいいんですよ。主人公に惚れていて、しかし主人公たちの「地球を砕く」という自分との対立する思想を唯一メンバーの中で知ってしまった人間としての葛藤が白道さんにはあるわけですが、その状況に対するアンサーが素晴らしい!

 好きな人が悪い奴だった!! という展開は、結構世の中に溢れてるんじゃないかなあ、と思います。特に少女マンガなんかでは。読んだことないですけど。そう言う時のアンサーって、理性的に行けば「好きになるのをやめる」のが一番いいことでしょう。何しろ歩む道が違う。歩む道が違うのに、そのまま思い続けるのはつらい。しかし感情的に行くならば「悪い奴だろうがなんだろうが好き」なんですよね。だから少女マンガ、ケータイ小説なんかじゃ、好きな男のために、一緒になって悪いことをする例が多いんじゃないかと。いや、読んでないのに多いとか何言ってんだよってあれですけど。でもそんなイメージありますよね? 好きな男の人のために、自分を殺して追従する女の人みたいな。

 白道さんが取った選択は「おめーらが地球破壊しようってんならべつにそりゃかまわねーけど。止めさせてもらう! そして、勝ったら付き合ってよ!」
 合理的な選択かどうかはともかくとして、感情も殺さず理性も死んでないかっちょいい判断だと思います。イカスぜ白道さん!! あと普段は理性的なキャラクターなのに恋に関してはめちゃくちゃ照れてる白道さんがイカスぜ!

かっこいいだけではかっこ悪い

 8巻に出てきたこの言葉、今までの「惑星のさみだれ」全部にかかっていてとってもいい言葉です。「かっこいいことはなんてかっこ悪いんだろう」というアルバムが発売されていてこの辺からインスパイアされてのセリフかなーとも思います。

かっこいいことはなんてかっこ悪いんだろう

かっこいいことはなんてかっこ悪いんだろう

 7、8巻は特にこの傾向が強いです。6巻が極度にシリアスな話だったせいか、そのバランスを取るかの如くシリアスな場面に一粒のユーモアが入ります。特に南雲さんがもうずーーっとその役割を担ってきて、彼の過去話からして他のメンバーとは一線を画している。

 そもそもかっこ良さってなんなんでしょうねえ。顔がかっこいい、スタイルがいいからかっこいいとはまた違うのは言うまでもないわけですが。そしてかっこいいだけではかっこ悪いっていったいどういうことなのか…。ちょっと時間がないからまた帰ってきたら書きます。焦っていてぐだぐだなので下に書いてあることもあまり読まないでもらいたい…。あとで直すから!

 南雲さんの過去、いくらでも感動させようと思えば感動させられそうなのに、オチはアレ、途中までめちゃくちゃかっこいいのに、最後はわざと抜けてみせる。彼最初から今までずーーっとオチ担当みたいな扱いなんですが、人がすぐ死ぬ世界観でかっこよさを失わずに、それでいてオチ担当も担い続けるというのは並大抵のことじゃあないでしょう。彼が亡くなった東雲半月に代わってみんなの父親役を引き受けながら、また別の面を担っているところが面白い。

 7巻における三日月と夕日の、子供たちにとってのヒーローになろうとする姿も「かっこよくてかっこわるい」めちゃくちゃ感動的な場面、子供たちが敵に襲われて、洞窟に隠れていたら発見され今まさに殺されようとしている、その瞬間に表れる「二人のヒーロー」。そんな最高にかっちょいい場面なのに二人の決めポーズは戦隊物を模倣したようなもの(これも半月さんのポーズで、二人はちゃんと受け継いでいる)正直いって、戦隊ものとして見たらかっこよくてもこの場で見ると凄くかっこ悪いポーズ。でもそこが、めちゃくちゃかっこいい。しかもそんなポーズを決めておきながら、一目散に逃げ出す始末、微妙にかっこわるい。でもそのあとの、長いこと伏線として捨てられていた「落とし穴」を使って、いつ役に立つかもわからない努力が実を結んで敵を撃退するという流れは、もうほとんど完璧に近かったと思います。あっぱれ! 7巻についてはまた書きます。飛ばしちゃったんで。

努力と才能

 それにしても半月さんとの闘い、サイコスタッフでも書かれていた、努力する者と才能を持つ者の対比がここでも書かれていて、さりげなく書かれている闘いでも、一つ一つのテーマが面白い。そういえばサイコスタッフに出てきた、神から与えられた力みたいなものは夕日が半月から受け取った闘いのためのスキルとかぶる。夕日は当然、自分が持っていた才能にうぬぼれることはなかった。三日月がぼこぼこにしてくれたおかげでもあるし、そしてそこを乗り越えた今受け取った才能、能力を自分のものとして半月師匠を背負って、乗り越えていく! 燃えるねぇ! じゃこんなとこで。