基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

歴史を目撃せよ──天冥の標 3 アウレーリア一統/小川一水

一巻を読んだときからこの小川一水による入魂の十巻シリーズが、大大大傑作になるのはわかっていたし、SF界(そんなものがあるとして)では長いこと語り継がれる存在になるであろうことはわかっていた……。最初に書いたエントリーで小川一水のワンピース!!(全力を注ぎこんだ的な意味で)──天冥の標〈1〉―メニー・メニー・シープ - 基本読書小川一水のワンピース」と言っていることからもそれは明らかだろう。

つまり、漫画界におけるワンピースと同じぐらいのスゲェ小説が、ついにはSF界にも現れちまったぜ、という意味で言ったわけだが……、三巻まで読んで、確信が深まった。これは、完結したら、伝説になる。間違いない。伝説になるであろう作品を、刊行にあわせて、ドキドキしながらじっくりと読み進めることができる幸せを、現時点の僕たちは大切にするべきである。今しか味わえない感動というものがあるのだ。

三巻で確信を持ったのは、一巻と二巻はそれ単体でもとてつもなく面白くて、単体の作品としてよくまとまっている(三巻もそれは同じだ)という評価だった。一巻は正統派のSFとして、29世紀の発達した科学、社会、宇宙中に広がっていった人類を書く。二巻は近未来を舞台として、突如として発生し、世界中に広まっていくパンデミックとの戦いを書く。そして三巻は、24世紀を舞台にして、超エネルギーを持つ動力炉をめぐって、「アウレーリア一統」が海賊との戦いを繰り広げるスペースオペラになっている。

どれ一つとっても最高の面白さだ。そして驚異的なのは、三巻にてようやく一巻と二巻に何が起こったのかが分かり始めたことだ。三巻の本筋スペースオペラ、海賊との戦いはそれはもちろん胸が躍る。自身の身体を改造してしまい、「酸素がいらない」種族になった主人公たちの、特殊な艦隊戦は読んでいるだけで叫びそうになるし、そもそも彼らがなぜそういう自分の身体を極端に改造するようになったか──? という、いってみればただの過去エピソードなのだがこれも非常にSF的で読ませる。

そういう面白さにさらにプラスして、一巻で出てきた用語と出来事、そして二巻で起こった出来事の繋がりが、単語のレベルから具体的な事象、イベントのレベルに至るまで確認できることによって、狂喜乱舞するのである。「ああ、これがあれかぁ!」「あの人たちはこうやって生まれたのか……!」「こいつはあの時のあいつの子孫か!!」「こいつはあの時出てきたあいつじゃないかーー!!!」と、本筋の物語+別の大きな物語へと繋がっていく快感で、二倍に面白い。ほとんど、反則である。

面白い物語はここにある。歴史を目撃せよ! と大上段にめちゃくちゃ偉そうに語ればそうなる。いやでも本当に僕は好きだな。たぶんほとんどの人は好きだと思う。SFをあまり読んだことがない人でも、たぶんいけるとおもう。もし読んでハマっている人がいたら、僕と一緒に次巻以降を楽しみに待ちましょう。

天冥の標 3 アウレーリア一統 (ハヤカワ文庫 JA)

天冥の標 3 アウレーリア一統 (ハヤカワ文庫 JA)