あらすじ(文庫裏より引用)
大量破壊兵器の衰退に伴い台頭した近接せんとうへいき体系・機甲兵装。『龍機兵』と呼ばれる新型機を導入した警視庁特捜部は、その登場要員として姿俊之ら3人の傭兵と契約した。閉鎖的な警察組織内に大きな軋轢をもたらした彼らは、密造機甲兵装による立て篭もり事件の現場で、SATと激しく対立する。だが、事件の背後には想像を絶する巨大な闇が広がっていた……"至近未来"警察小説を描く実力派脚本家の小説デビュー作。
いやーこれは面白かったですよ。
出たばっかりの頃は、「機龍警察wwwwwダセェwwww」「SFと警察は喰いあわせ悪いんじゃないかなぁ……」と先入観から敬遠していたのですが、先日出た続編)(のちのち調べたら同じシリーズではあるものの続編ではなさそう。すいません)のタイトルが『機忍兵零牙』とかいう一周回って鬼カッケェタイトルだったのでこれは読まねばな、と思い読み始めたら素晴らしい出来。どうでもいいですけど小学生の頃、将来の夢は忍者でした。
そもそも警察物が苦手なんですよね。警察という組織の構造上、ヒーローが生み出しにくい、もしくはヒーロー的な存在が居たとしても、突出した存在は組織の中では叩かれざるをえず、その軋轢を警察小説のリアリティを出す為に書くとなんかやぼったい。組織として書くとヒーローが産めず、仮に産んでもどろどろして、ヒーローを書いてもどろどろしてしまうという難しい題材が警察小説なのではないかと思うのです。
それは同時に「旧体制」的な、古臭さを表しているんですよね。派閥闘争とか、プライド、面子を異常に気にする、キャリアとノンキャリアの対立、きょうびそういったものは流行らないんですが、警察物だとそこは避けては通れない。そして言うまでもなく、現代でさえすでに古臭いそういった対立は、SFではさらに古臭く見えます。
しかし本書は……SF的ガジェットがうまく「風穴として」機能していたと思います。もちろんあらすじを読んでもらえればわかるようにキャリアとノンキャリアとの戦い、警察の閉鎖性、軋轢、全て描かれているのですけど、どろどろしすぎない。適度なところで中和されている。
機甲兵装と呼ばれる小さめのロボット(パトレイパーみたいな?)のに載って戦うのですが、戦場が限定されていた今までの戦争と違って、テロリズムの蔓延により「どんな場所でも戦場になりうる」時代において、「どこでも戦える」兵器としての役割を担う……という設定がすでに燃えるのです。
そう、時代はいくら警察が閉鎖的でどろどろしてキャリア間の争いがどうだこうだといっていても、否が応にも先に進んでいて、この「機甲兵装」というSF的ガジェットがさっき描いたように旧体制ではやっていくことが出来ないのだ、変化を受け入れなければいけないのだという「風穴として」機能しているのだと思うんですよね。
プロットは最初は小さい事件だと思って手を出したが次第に大きな事件に巻き込まれていく──という割とお決まりな感じですけど、細部がいっぱいかいてあって、大変面白かったです。著者が『少女革命ウテナ』やなんかの脚本を担当していた人で、小説も映像的でした。映像化しないかなぁ。
- 作者: 月村了衛
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2010/03/19
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