ひどい釣りタイトル！！──『ゲームキャラしか愛せない脳』

タイトルでおっと思った人は買わない方がいいかも（やわらかく言い直した）　まったくゲームキャラが本書に関係がないことは、一番下に書いたこの本の目次を見れば一目瞭然なのでまずは目次を見て下さい。

タイトルにつられて買ったら、ゲームキャラに言及することが皆無という割と酷い釣りタイトルでした。最初に問題提起として、アダルト業界が発展し続けてきた結果飽和状態になり、過剰な性刺激がむしろセックスレスを生み「アニメのキャラクターなどにしか恋が出来ない、現実には萌えなくなってしまった」とうようなことを言うのだが、ほんとかぁ？　と疑問に思わざるを得ない。

アニメのキャラクターにしか恋が出来ないなんて、鷺宮神社のオタク婚活に応募がいっぱいくるような今、一体だれがそんなことを言っているんだ？　そして驚くべきことに、ゲームキャラについて言及したのはここが最初でほとんど最後。あとがきの最後に性の解放を知らされてきた世代にはナマの異性よりもゲームのキャラのほうが心に響くことがあるのかもしれない、などといって適当なことをぬかす。

さて、では何が書いてあるのかといえば、セックスの歴史のようなものである。第一章「なぜヒトはセックスを隠すようになったのか」の最初の項目「なぜヒトのセックスは長いのか」では、他の動物は性交がほんの数秒しかないことも多いのに、なぜヒトはセックスに時間をかけるのかについて書いている。

どうもそうすることによって特定のパートナーしか持てなくするため、というらしいがそれにどれだけの根拠があるのかさっぱり理解不能である。要するに、時間をかけてセックスをするようにすればそれだけ不倫が出来なくなる、ということらしいがそもそも何で特定のパートナーしか持てなくするのか理由がよくわからないし、そもそも時間をかけてっていってもそんなに長いわけでもないぞ？　と不思議に思う。

そしてなぜセックスを隠すようになったのかといえば、カップルの関係を永続化させる為にはカップルの仲が冷めたとしてもそれを悟られないようにする為だ、という。四六時中人の前でも気にせずセックスをしていると、しなくなった時に「あ、冷めたな」とバレるけど、セックスを隠してさえいれば冷めたとバレることもないという理屈だ。

どうもこの点でよくわからないのは「なんでカップルの関係を持続させる為に他人に冷めたとバレちゃいけないの？」というところで、結局説明されることはない。この説にどれだけの根拠があるのかさっぱりわからない。で、ここから先は「禁止されればされるほど興奮する」という話が延々と続く。だからなんだっていうんだ。

そして一章の終わりから二章目の『なぜ「できちゃった婚」ばかりがはやるのか』ではなぜか谷崎潤一郎の作品を引用しまくってなんだかよくわからないけど解説をする。この部分にいったい何の意味があるのかよくわからないし、ただ単純に谷崎潤一郎のファンなんじゃないかと思う。

この後もなんだかよくわからない、しいて言うならばまとまりが圧倒的に欠けている性に関する記述が延々と続く。一つ一つは結構面白いのだけれども、根拠がまったく見えないので信用できない。たとえばカップルがセックスに飽きてくると、二十一世紀の日本においては二人でネコを飼ったりする、昨今のネコブームの背景がここにある。

などと言っているがネコブームなんかほんとに来ているのか？　ほんとにセックスに飽きたカップルはネコを飼うのか？　また一人暮らしの男性がネコを飼うのは異性の代用品であるなどと断言しているのだが、これまた根拠が何もない。そうかもなぁ、とは思うけど、断言されるほどではないとも思う。

というようにとにかく無根拠な内容が多かったです。下に目次を載せておきましょう。ゲームキャラの話はほんの数行しか出てこない上に内容は根拠に乏しいという、割ととんでもな話でした。釣りタイトルというよりかも、タイトルがつけれなかったんじゃなかろうか。

第1章　なぜヒトはセックスを隠すようになったのか
なぜヒトのセックスは長いのか　どうして愛撫が必要なのか　あえぎ声は本来聞かせるためにあった　恥ずかしさでかえって興奮する心理　男は派手な女性下着に興醒めする!?　わざとでも声をあげるべきなのか　セックスレス夫婦が生まれるワケ　他者のセックスを楽しむのは人間だけ　性的に枯れても欲情はできる
第2章　なぜ「できちゃった婚」ばかりがはやるのか
谷崎潤一郎に見る欲情と性欲　他人のプライバシーをのぞき見る快感　生還を高める「たくらみ」　横恋慕を仕掛けるヒヒの「マキャベリ的知性」　谷崎が実行した壮絶な「回春」戦略　「不倫は文化だ」の真理　欲情は繁殖を妨げる　心地よいセックスは精子の敵!?　「できちゃった」でないと結婚できない時代　新婚＝出産がもたらす弊害　欲情から遠ざかる日本人
第3章　さまよえる性欲
「やっぱり見た目が大事」なのは動物的である　「フェチ」の単純化が進んでいる　先祖返りする人間の美の基準　ヴィーナス像のセックスアピールとは　なぜ豊満さに惹かれるのかマキャベリアン・ラブ対ハンディキャップ・ラブ　セックス下手の子だくさん　セックスレスとネコブーム　ネコを捨てる男、ネコをとる女　「あなたにないもの」を求めて……　セックスなき性的虐待
第4章　正しく欲情すべき脳
複雑に絡み合う脳機能　コミュニケーショントシテノセックス　マザコン、ファザコンの由来　ロールプレイとなった日本的な性的趣味　見えるはずのないものを見る脳　のぞきの快楽と探索欲　狩猟・採集に喜びを見出す知性　なぜ知識人がセクハラをするのか欲情は「脳のリサイクル」