基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

戦闘破壊学園ダンゲロス

久しぶりに寝る間も惜しんで読んでしまった。「こういう作品を待っていたんだ!」と読み終えた時は感動もひとしおでした。というか実際に時間的にも待っていたんですけどね。著者は『完全教祖マニュアル』や『よいこの君主論』の架神恭介さんで、彼のHPThe 男爵ディーノ[週刊少年ジャンプ感想サイト]を毎回よく見ていたので、この本が出ることももう一年ぐらい前かな? それぐらいから知っていたのでした。

 あらすじ(カバー裏)
「魔人と呼ばれる異能力者たちが存在する、とある世界。私立希望崎学園・通称戦闘破壊学園ダンゲロスでは、対立する2つのグル−プの抗争が激化していた。邪賢王ヒロシマ率いる、暴力で学園を支配する「番長グループ」。ド正義卓也を擁する、魔人校則の遵守により治安を保つ「生徒会」。ハルマゲドン勃発の日、一般生徒の両性院男女は幼馴染の保護と引き換えに番長グループに協力することになる。生き残りを賭けた抗争はエスカレートし、未曾有のカタストルフへ──────!」

これ、能力バトル物なんですが、以降この本を読んでないと能力バトルは語れないよねーケタケタケタケタっていうぐらいの傑作です。「学園自治法」なる「学園の中で起こったことには警察権力は介入しませんよー」という法律があるせいで、学園内で起こる番長グループと生徒会グループによる能力を使った「戦争」を書くのが本書になります。

当然何が起こっても警察権力は介入してきませんので、レイプ、拷問、殺人、なんでもござれの無情な世界。学生が派手に殺し合いとするという意味では「バトルロワイヤル」を彷彿とさせますが、もっと凄いのはこれが「チーム戦」であり、「能力バトル物」であり、さらにはその人数が両陣営合わせて60人もいるということです。そういった意味では山田風太郎に近い(エログロなど、かなり山田風太郎を意識した作りになっている。)

さらにはその両者を狙う「転校生」というチートキャラクター(多分これはゲームが拮抗状態に陥った時の調整役かな)まで出てきて、これだけの人数の、しかも能力者を有効に組み合わせていくのはかなり難しいのは言うまでもないでしょう。しかも能力は、「火が出せる」といった簡単なものではなく、「カレーの辛さを自在に変えられる」のような凄くどうしようもないものから、因果律に介入して事象を書きかえるものまで、千差万別です。

それなのに、能力バトルにありがちな、「自分の能力をぺらぺらと相手に喋る」的なご都合主義の要素が一切(探せば粗はあるだろうけど)ない。みな自分の能力を理解し、コンボを狙い(能力のコンボがまた燃えるんだこれが)、相手陣営を壊滅させる為に最善手を放っていく。情報戦もさかんに行い、この世界では当然ながら「相手の能力を知る」ことが多大なアドバンテージを得ます。

こういった作品であることは発売前から著者のHPでわかっていて、だからこそ僕は、この作品を心待ちにしていたのです。そもそも情報戦とかいう以前の問題で、たとえご都合主義があろうと「能力バトル物の集団戦」だけで燃える物があるのに、それすらもあまりみませんからね(単純に、話を組み立てるのが難しいからだと思うけど)。最近だとワンピースはそうだったか。

500P超えと、ちょっと長めですけど60人超えの能力者バトル(実際には全員描写されるわけでは全然ないが)を書いたにしては、短すぎるぐらいです。でもこれがよくまとまっていて、これもまた素晴らしい。小説デビュー作とは思えない完成度です。ただエログロがキツイし、人はゴミクズのように死んでいくのでそういうのが苦手な人は。

ああ、あと読んでいる時に疑問が浮かぶとすれば、それはあまりにも「論理」に重きを置き過ぎている点で、登場人物の現在の心情といったものがほとんど「これこれこういう原因」があるから「こういう人間になったんだよ」という風に語られ過ぎていて、「人間はもっと複雑だぜ」といった文学思考で読むとつらいと思われます(そんな読み方をする人はいないだろうが)

冒頭にある『世界で一番美しいもの──』というエピグラフの後に続くのは、どう考えても『女子高生同士のレズ』(ネタバレ反転)だよなあと認識としつつ(最後まで読んだ人ならば同意してもらえるはず)締めます。元がTRPGという形式を活かした取り組みも面白いし、講談社クソ箱も最近は少しだけ(それでもクソだが)デザイン的にマシになってきたので、期待しつつ次作を待ちます。

戦闘破壊学園ダンゲロス (講談社BOX)

戦闘破壊学園ダンゲロス (講談社BOX)