基本読書

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なぜ、はたらくのか―94歳・女性理容師の遺言

帯にはビートたけしの文章で「うるさいバァさんの説教がたまに聞きたくなるんだよね」とあるが本当にそんなような内容。つまり、説教である。15歳から94歳まで、ほとんど毎日休まずに働き続けてきた、というその人生経験から来る豊富なアドバイスが、本書には収められている。これが非常にうるさい。

「年寄りを敬え」と子供のころから言われてきた。恐らくそれは、あまり変化のない時代では、単純に長く生き、経験を積んできたことがそのまま役に立ったからではないか、と思う。長年あまり大きな変化の無い時代が続いてきた。そんな時代でこそ、お年寄りの知識は尊重されるべきだ。

が、変化の激しい今はどうだろう、と疑問に思ってしまう。あまり役に立たない説教も多い。真面目に働けばそれだけでなんとかなるとか、助けの手が伸びるとか、どんなに苦しい時でも働き続けなさいとか、あまりうんうんと頷くことはできない。だからこそうるさいと感じるのだろう。昔の状況と今の状況は違うんだよ、ばーさん、と。

だが、時がいくら経ってもなかなか変わらないものもまた、いっぱいある。一番大きなそれは人だろう。文学が古びないのはひとえに人が変わらないからだと言える。「なぜ、はたらくのか」という問いも、15歳から94歳まで生きて働き続けて、今なお働いているおばあちゃんが言う事だからこそ信頼できる。何が、彼女にそこまでさせているのか。

『なぜ、人は「はたらく」のか。それは、「端を楽させる」ためなのです。』という言葉は彼女の長い人生経験があった、だからこそ腑に落ちた。はたをらくさせる、と書いてはたらく。言い得て妙である。就職活動生が言ったら、「自己実現」なんて返答より、余程ウケがいいだろう。

まあ別に自己実現だろうがなんだろうがいいと思うのだけど。何にも悪いことなんてない。ただやはり長くはたらこうとおもったら、やっぱり自分の為だけに頑張るのはキツイような気がする。自分には限界がある。一人しかいないのだから当たり前の話だ。

今の世の中、いったん大人になると説教もろくにしてもらえない。たとえそれがふにおちないことが多々あることでも、たまには説教してもらうのもいいことだ。ビートたけしの帯の言葉が、読み終えると妙に腑に落ちた。

なぜ、はたらくのか―94歳・女性理容師の遺言

なぜ、はたらくのか―94歳・女性理容師の遺言