アドベンチャーゲーム。大変面白かったです。ノベルゲーは没入感が違うな、と思います。小説だと想像で補わなければいけないものが多すぎる上に、人によっては文字だけを追って物語を楽しむこともあるのですけれど、絵があって声があって背景まで用意してもらえると、容易に物語に入れるようになります。そういう意味で言えば一番物語に没入できる媒体はアニメなんでしょうけど、どうなんだろう。というか、アニメと明らかに異なるのはこれが「ゲーム」ってことで、「自分が操作するシステム」があるかどうかが没入感を決めるのは間違いなく、この作品のシステムはただただ読み進めるだけではなくちゃんとゲームしてたので良かったです。
特に今回は絵と声がとても良くて大満足でした。絵を描いているのが誰か良く知らないのだけど、なんか塗り方が宇宙みたいなんですよね。キャラクターが土星とか木星とかの天体のような色をしていて、SFである本作にもマッチしていたと思います。キャラクターの立ち絵を見ているだけで幸せな気分になれる。あと声が良かったのが自分的に意外で、声質が良いっていうんじゃなくて演技が良かったです。今まであんまり意識したことないんだけどな、声優って。初めて名前を覚えようかなと思ってしまいました(花澤なんとかさんだけはよく名前を見るので覚えた)。
物語の筋を説明したりするのはやめてなんか適当にだらだらと書いていきましょう。物語にも基本的に触れません。多分ネタバレ無し。多分なのは、書いてみたら意外とネタバレするかもしれなく、しかもネタバレしても今書いたこの文章を消すようなことをしないからです。非常にどうでもいいですね。まずこのシュタインズ・ゲートをやってみようと思った理由だけれども、なんだったかな。
もうどれが理由だかわからないけれど、絵が気に入ったこと、話がSFなこと(タイムマシン物)、そして異常に評判が良かったこと、でしょうか。PC版が出た時からちょびちょびと進めていた訳ですが、何だか突然やりたくなって(アニメ化で話題が再沸騰していたこともある)やってみたら案の定面白かったというわけで。
それにしてもこういった複数ルートを余議なくされているノベルゲーム形式と、ループ物というのは非常に相性が良いですね。元々のゲームの発想が「何度でも挑戦できる」にあるわけですし、ループ物にしないままにすでにプレイヤーを主人公としたループ物であるといえます。
物語的に面白いのは、あれかな、ループにおけるトライアンドエラーというのがシンプルに物語として原因と結果がすぐに判明すると言う点でわかりやすいのはあるかも。たとえば野球だと、弱小野球部が強豪校相手に逆転勝利するという話を考えても、そのまま「偶然勝った」とかやっても納得されないわけで、そこにはうまい原因と結果がなければいけないわけですけど、ループの場合はそれが明白でわかりやすい。
あとこれは昔から非常に使い古されてきたパターンだけれど、「自分が頑張った結果を相手が覚えていないけれど結果は確かに変わっている」というもの。すぐに例が思い浮かばないのだけれども、たとえば世界かもしくは女の子かなんかをを命がけで救って、だけど当の相手はそれを忘れてしまっている、しかし何が何だかわからないけれど、覚えているはずの無い悲しさとか感謝をほんの少し覚えている。
ループ物、タイムマシン物の基本はループを繰り返すことによって過去を変え、よりよい未来を掴みとるところにあります。全てを自分の思い通りにできたら、っていう人間の本能的なところにもかかっているでしょう。結局、最後に手に入れた世界では過去の苦闘の歴史を覚えているのは主人公=プレイヤーだけであって、これが非常にやっている方としても感情移入しやすいし、一般的にウケが良いように思える。
なんとなく個人的な感想だけれども、誰もがみんな「なんで自分はこんなに頑張っているのに周りはわかってくれないんだ」とか評価されないんだ、と思っているような気がする。もちろん声には出さないのだけど。つまり元々そういう「みんなが抱えている悩み」みたいなのに、「みんなは忘れしまっているけれど俺はこんなに頑張っているのだ」的な物語がうまくハマってウケるのかもしれない。
そういえば全然関係ないんですけど、僕はワンルート至上主義者なので、こういった複数ルート形式のギャルゲーでは「Trueルート」以外はやりたくない人なんですよね。なんというか、複数キャラルートになると、どうしても展開って無理が出るものじゃないですか。だって本筋の物語があるとしたら、どうしても物語はそこに向かって行かざるを得なくて、Trueの出来が良ければよいほど、別キャラのルートに行くのは無理が出るものなのだと思う。
あとどうしてもルートに入る=物語を生みだす時に、何か問題があってそれを一緒に解決してハッピーエンドという形式が一番普通で自然なのでこういうのが溢れかえっているのだけど、そうすると主人公の周りにいるキャラクターがトラウマ持ちばっかりになって、なんだか非常に違和感を覚えたりするのですよね。こういったゲームのお約束を全部設定に取りこんでしまおうとしたのがクロスチャンネルとかなのだろうけど。
話を元に戻すと、ちょっと強引にさえ思えるTrue以外ルートに進むと、なんだかTrueルートの価値がどんどん下落して行くような感じがするのです。完成度が低く感じられてしまうと言うか。あるいは「Trueもあるけどこんな未来もありましたー!」と言われるとうーん……やっぱりよくわからないんだけど「Trueの価値が減っていく感じがする」としかうまく書くことが出来ない。
ちなみにこれはTrue行った後にクリアしてもそうだし、Trueに行く前にやってもそうなんですよ。うん……。だからどうってことでもないんだけど……。シュタインズゲートの話に無理やり関連づけようとしたけど無理そう……。その点シュタインズゲートはかろうじて回避していると言えるかというと、別にそうでもなく。いや、ループ物ゲームの良いところは複数ルートを無理やりTrueに集約できるところにあるわけですが、でも個人的にはやはりちょっとがっかりです。
タイムマシンがあったら複数ルートのギャルゲーが生まれる歴史を改変したくなってきたなあ。しかしそもそもそういった複数エンドに進化したギャルゲーがあったからこそ、ループ物がここまで進化したということもあるわけでどうしようもない。しかしこの諦念はシュタインズゲートにも通じているのでちょうどよく終わりにしよう。
最後にちょっとだけ物語についても書いておくと、Trueエンドのラストは凄く綺麗だったけどSF物としてはちょっと悲しかったです。ゲームという「いくらでもやり直しできるシステム」を使いながらも「選択することの重さ」に気がつかせていくシナリオ、ゲームであることを最大限生かそうとした携帯を使ったシステム、絵、声優の演技、一つ一つのアイテムのデザイン、ゲームタイトルから章タイトルまでの言葉に対するこだわり、そのすべてが作り込まれていて、とても、とても面白かったです。間違いなく傑作です。
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