基本読書

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人類史に刻み込むべき神シリーズ──『ランス10』

ランス10

ランス10

発売されてから120時間以上プレイし続けてようやくクリアした……というか、”クリアしてしまった”。できることならば永遠に終わらないでほしかった。無限にこの世界で遊んでいたかった。しかし終わるからこそ、そんな気持ちも湧いてくる。

29年間最前線を突き抜けてきたゲーム・シリーズ

ランスシリーズの完結作『ランス10』とそのシリーズは、まさにそんな気持ちを抱かせてくれた理想のシリーズ作品だ。平成の元年にはじまって、約30年間にわたって紡がれ続けてきたこの作品は、その年月の中で幾度も形を変えながらもその魂は失われず、”ランスシリーズのおもしろさ”を開拓し続けてきた。『ランス10』はその完結作にふさわしい、超ド級の傑作だ。エンディングをいったん観た今、これほどの楽しみを人生であと何度味わえるのか……と考えてへこんでいるぐらいだ。

ストーリーを切り替えつつのシリーズタイトルなら無数に存在するが、一人の主人公、世界観、地続きのストーリーで書き続けて29年10作のナンバリングタイトルをゲームとして作り上げるのは並大抵のことではない。人間も時代も変化するからだが、アリスソフトとランスシリーズはその変化を乗り越えてきた。そこには無数の要素が関連しあっているのだろう。その最初からディレクターとして関わり続けたTADAさんの奮闘(30年作るのは本当に凄い)や織音さんの時を経るごとに時代に合わせて洗練されていく凄すぎるキャラデザ、主要開発陣、またランスがリリースされる度にその作品に引き寄せられチャンピオンソフトへと入ってきたスタッフたち。

また、表向きの世界観だけみると、本シリーズは”ファンタジィ”にあたるのだろうが、でも実態としてはゲームについてのゲームというか、ゲーマーについての物語というか、”ゲーマーの夢”の塊のような話なんだよね。そのメタ的な世界観・キャラは時代の巨大な変化に対応・耐え抜くことができるほどに自由度と強度が高く、加えてそこに作り込まれた世界観とシナリオが投入され、作品ごとにSRPGから地域制圧型SLGなどなどゲーム形式の挑戦があり、2dから3dへの変化もリメイクもあった。

ランスシリーズは、”ただ30年続いた”のではなく、”30年間ゲームとしてのおもしろさで最前線を突き抜けてきたからこそ、今こうやって最高の”完結”にたどり着いたのだ。第二部まで終えた今、完結作としてふさわしい出来、(やり始めたのは途中からだけど)付き合ってきて本当によかったと思えるシリーズで、感無量。

ざっくり10の話

そしてまずは10の話をしよう!”決戦”と副題に入っている通りに、物語はいよいよクライマックスへ。人類の諸国家・勢力を回って抱きたい女を抱きまくり各地の姫を自分の女にしてきたランスが、ついに人類圏へと進行してきた魔人から人類を守るため、全人類を率いて最終決戦へと向かう! これまでシリーズに出てきた100人以上のキャラクタがユニットとして出現し、人類を守るために戦うのだ──! 
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その難易度はまさに最終決戦にふさわしくやたらと高い。ボケっとしているとすぐに人類死亡率が10、20%と増えていき、各地で作ってきたランスの仲間たち、女たちもどんどん敵に殺され・犯されていってしまう。クリアボーナスを引き継ぐ周回前提の難易度、しかも引き継いでもかなり厳しい戦いが続くその難易度も相まって、プレイしている時は焦燥感が凄い。だが人類全体の戦いを描くシナリオは素晴らしいというほかないし、これだけ増えても誰一人としてキャラクタが没個性的にならず、やりとりはどのシーンを切り取ってもおもしろいのは神業という他ない。

簡単な世界観、ストーリー紹介。

10の詳細なレビューに入る前に、シリーズの概観を簡単に説明しておくと、”世界中の女とやりまくる”ことを目的とした男ランスが、そこらじゅうに出向いていって女を抱くために騒動を繰り返しているうちに、国を救ったり無敵結界を持ち人間には倒せない魔人を倒したりしていく物語である。人類の国家は1.リーザス、2.ゼス、3.ヘルマン、4.JAPAN、5.自由都市に分かれており(宗教団体だったり亜人種のすみかだったりが無数にある)、お互いに友好関係にあるとは言い難い状態にある。

ランスは各シリーズでそうした国家と関わり(そして姫を自分の女にして)、この世界でほとんど唯一の”人類圏でもっとも国家の中枢に顔がきく男”になっていくわけだけれども──。何しろだいたい一国家・一地域ごとに大ボリュームのゲーム一作分が割り当てられているので、登場キャラ数がとてつもなく多い。平気で一国あたり(男も女も含めて)30人単位でネームドのキャラが増えていき、しかもその一人一人に個性と背景ストーリーが存在していて、”シリーズ・ストーリーが進展するにつれてその膨大なキャラクタたちもまた行動し、変化していく”のである。

ランス10ではそのキャラクタがほとんど全員出てくるので、久しぶりに会うと「ああ、こいつは今こんなことやってんだな」とか「ああ、こいつは相変わらずだな」とか、「お前は相変わらず弱いな……」とか、「子供だったあの子がいつのまにか大人に……」と非常に感慨深い。というか、何気ないやりとりの中に30年の歴史が刻み込まれているので、別になんてことのないシーンで泣きそうになるんだよね。

魔人とそれに関連する情報について

この世界は人類の他に大量に亜種族・別種族がいるのだが、そのひとつが魔王・魔人で、人類は基本的に攻撃が通らないので完全に蹂躙される対象である。ただ、物語開始時点では”魔王”は存在すれども未覚醒の状態で、人類は魔人らと世界を真っ二つに分割し、それぞれの地域で生活を営んでいる。この世界の歴史からすると、珍しい”平穏な時代”だが、ランス10ではついに魔人・魔物が人類圏に進行。

10の主な物語としては、人類圏に侵攻してきた魔人をいかにして倒し、人類戦線を維持するのか。ボスである魔人ケイブリスを倒すのかといった点にあるが、その中で過去作から連綿と引き継がれてきた枝葉の物語があり、複数のゲームを一度に遊んでいるんじゃないかと思うぐらい大量のテキストが詰め込まれている。地底にいったり異世界にいって関西で暴れまわって警察・軍隊と戦闘したり、勇者と魔王システムの話が出てきたり、”この世界を作った神”についての話が出てきたり……。

そのあたりには本当に膨大な設定量があるのでここでは深く立ち入らないが、この世界の創造神との話はランス10の中でも重要な位置を担うことになる。なんというのかな、本作に限らずゲームって”ただそれ自体のおもしろさ”とは別に、”開発者が想定もしていないバグや遊び方を見つけてやったぜ!”という探求のおもしろさもあると思うんだけれども、ランスはまさにその体現者でもあるんだよね。

神々が設定した”ゲームルール”を逸脱してしまう、”バグとして”ランスが存在している。根幹にあるのは、”定められたルールへの抵抗”なんだなあと。

ゲームシステムについて

ゲームとしては、その規模もあるし、ここ最近続いていた3dではなく鬼畜王ランス的な地域制圧型RPGになるのかなと思っていたが今回はまた一言では表現しづらい独特のRPGシステムで、これがまたおもしろい。キャラクタは戦闘終了時の宝箱でランダム・ピックアップ(一部確定)のガチャ・システムが採用されており、戦闘は出撃可能な(最大7人)キャラクタを指定しAP(毎ターン2〜3回復)を使用して行動(APを消費する)を決定するシステム。マップ内の移動は抽象化されたマス目を移動する形式で、分岐ごとに違った恩恵やペナルティがあるので注意しながら進むことになる。
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まず莫大な数のキャラクタをガチャで出して仲間にしていくという発想がかなりハマっていると感じる。周回前提のゲームだが(周回ごとにCPが溜まって特典を受けられる)、周回ごとに手持ちのキャラクタが大きく異なるので、同じボス戦でも道中でも異なる戦略やキャラクタを使うことを求められるのが(難易度の高さと相まって)おもしろい。また、たしかに戦場に出てくるメンバーについては6人で固定なのだけれども、特にボス戦においてはくるくるとメンバが入れ替わることもあり、敵によってキャラクタに求められる性能が大きく異なるので必然的に入れ替えを多用することになる。最終戦にふさわしい”全員参加の戦争”の体験ができるのも素晴らしい。

戦闘が幅があっておもしろく、周回も楽しいのはいいがひたすら面倒なのはマイナス。マップを1マスずつ移動するたびにすでに見た膨大なイベントが発生するので「おもしろさ」以外の部分に費やされる時間量が半端ない。テキストスキップというかシーン・スキップが欲しかった。周回ボーナスも最初のうちは目に見えて強くなるわけではなく、難易度が高いので周回のたびにギリギリの判断を迫られるシーンも多い──がこれ自体は絶体絶命の状態から人類を救う感があってグー。

各エンディングのルート最終戦とか、ほんと久々に手に汗握り、乱数の神に祈りながらゲームしてたもんね。何度も何度もやり直したり、参戦ユニットを変えてみたり、付け替えのできる部隊ボーナスを変えてみたり──と土壇場になっても試行錯誤できる点もこの大量キャラクタがいるがゆえのおもしろさだ。また、通常進行時でも1ターンにつき1魔人討伐するところを、無理をすれば2魔人同時討伐できるようになっているのも自分で挑戦できる難易度変更・時短として素晴らしい。

シナリオについて

これまでランスが関わってきた全国家が団結、それもランスの元に集って、これまた大量に描かれてきた魔人を相手に戦争をするというのだからおもしろくないわけがない。『鬼畜王ランス』で”どこまでおもしろくできるのか”の全体像が明らかにされていたこともあるし。けどその”当たり前”をやるのがめちゃくちゃ難しい。大量のキャラクタを取り上げながら書き分け、やりとりを制御しつつ全勢力を盛り上げるべきところでは盛り上げ、きちんと風呂敷をたたまなくちゃいけない。

本作品は、それをやってしまっている。わりとぶっ壊れ性能をしているキャラクタも多いのだがみながそれぞれで好き勝手に動き回り、それでいて破綻なく物語は進展していき(あるいは破綻しながらも違和感を感じさせずに進み)、最後までランスはランスとして、この世界を貫きとおしてみせた。これまでほとんど勢力ごとのイベントが主で、他勢力の人間は助っ人参加だったので各勢力間の人間が一同に介してワイワイガヤガヤと会話しているシーンはそれだけでくるものがある。

特に目的を果たしたあとにやってくる第二部については”そこまでやってくれるのか!”と唸るしかない内容で、第二部の冒険を進めるうちに訪れるなんてことのないイベントの一つ一つが愛おしすぎて泣けてくる……。成功も失敗も、時には衝突も仲直りもし、戦友たちと仲を深め笑いあって時には恋愛もする──シリーズの最初から最後まで、すべてが本当に楽しい楽しい冒険だったんだよなあ。第二部で気楽な冒険だと思っていたら途中から難易度跳ね上がりすぎて絶望に沈んだりもしたが……。

これからシリーズをはじめる人へ

これからシリーズをはじめる人へ。実は完結作であるこの10からランスシリーズをはじめてしまってもいいと思う。作中に出てくる膨大な設定と歴史については本作では全部注釈がついているから「こいつ誰? どういうこと?」とおもってもそれを読めば歴史や設定が一通りわかるし、何よりこのゲームはおもしろいから、これをやれば当然過去作に手を出したくなるだろう。そこから過去作をやってもいい。

それ以外だと、1と3については手に入れやすい形でリメイクが出ているのでそれをやるか、シリーズ屈指の名作と名高い戦国ランス(第七作目)あたりをやるといいのではないか。8,9は前作までの話を踏まえた展開が多いので、最初の作品としてはあえては勧めない。また、同じく戦国ランスをやるとめちゃくちゃおもしれえ! となって手当たり次第にやりたくなるはずなので、好きなようにやるといい。

戦国ランス

戦国ランス

特にネタバレもない雑談箇条書き
  • 攻略情報が出揃う前にガンガン進行させてしまったせいもあるが、難易度高すぎて何度もやり直したのがキツかった(ケイブリス強すぎ&一部クエスト発生条件厳しすぎ&人類簡単に死にすぎ&勇者殺しすぎ&魔人二人抜きどこも難易度高すぎ&第二部の難易度ちょっと理不尽・運ゲーすぎて一回最初からやり直した)。
  • ある程度強キャラが解ってくると少数メンバに依存しがちだがそうすると別イベント&新しいルート開拓時に詰んだりして何度もやり直しを重ねることになる。結局、幅広い有用ユニットをレベル50↑にしておくのがいいという方針に。もっとも活躍してくれたのはキングハニー、魔物メイドさんだった(魔物ツエー)。
  • 立ち絵は個人的に毎回最高を更新してくるけど今作も最高だった。特に第二部の立ち絵・キャラデザがどれも凄すぎ。悶絶したわ。だが全体を通してエロが違和感を覚えるほどに薄い(キャラ個別CGもそうだし、テキスト量的な意味で)
  • 第二部で完膚なきまでにランス・シリーズの終わりを突きつけられてしまったので虚無感が凄い。ずいぶん長いこと『ランス10』が出るまでは生きねばと思っていただけになおさら(正直でないと思っていた)。仮に同世界観の話が出るとしても、もうランスほどにのめり込むことはないのだろうなあ……。こんなにシンプルで力強く魅力的なキャラクタには、もう出会うことはないだろう。
もう終えた人はこちらをどうぞ

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