基本読書

基本的に読書のこととか書く日記ブログです。

江戸の卵は1個400円! モノの値段で知る江戸の暮らし

ちょっと江戸まで』という少女漫画が面白かったのでついつい江戸の事が知りたくなってしまった。でも良い本だった。最近新書を読もうと思って、目次を読んでも全部くだらなく思えてしまう病気にかかっていたので、面白い新書に出会えてよかった。こういう本との出会いがあるから、本を読むことはやめられないのです。

本書はタイトルのとおり、江戸時代の物の値段を現代に換算してみて、人々の生活を身近に感じてみようというような一冊。「お金」っていう物の価値を測る尺度が、こんなにわかりやすいのかと目からうろこでした。「お金」に換算すると、労働力だろうが一匹の魚だろうが、同じように価値を判断できる。この「何にでも当てはめることが出来る」抽象度の高さが、お金の力であります。

その力っていうのは、時代を超えて我々にまで及ぶのですね。何しろお金を使っているのはわたし達も同じですから。

で、おどろくのが、「江戸時代って結構現代と変わんないとこあんじゃん!」ってこと。何しろ江戸時代が終わりを告げたのが1868年5月3日、ほんの143年前なのですから、そりゃ、あんまり変わってなくても不思議じゃないかもしれないんですけど、そもそも江戸時代がたったの143年前っていうのが、それを言うんだったらまず最初に驚きですなあ。

さらっと江戸時代のお金と現代のお金を比較しておくと、有名どころでは一文=20円、銀一匁=2000円、金一両=12万80000円、だそうです。1両は6400文、庶民は主に文の尺度で銭を使っていたようです。そして割と一般的と思われる大工の年収が317万5200円だったとか。

なんか、現代の価値に換算しても、結構普通。しかも江戸はしょっちゅう火事が起こるので、家はすっごくやすっぽい作りになっている為に家賃が1カ月1万円程度と、超やっすい。これだとひょっとしたら現代よりいい暮らしができるんちゃう、っていうレベルですよ。その分ご飯が結構高いのですが。

現代でいうところの100円ショップもあったそうです。その名も4文屋。すべてのものが4文(80円)で、4文屋といったそうです。もっとも雑貨が何でも売っていたわけではなく、こんにゃく、れんこんなんかがこの値段だったとか。日用品は19文(380円)屋で売っていたそうです。現代かっ!

物価も面白いんですが、文化的なところも面白い。寺子屋って、普通に先生がひとりいて、そこに生徒がいっぱい集まってみんなで勉強する、今の学校とまったく同じものだと思ってたんですが、これがちょっと違うのです。最初に基本となる読み書き算盤を教えるところまでは一緒なんですけど、そこからは将来の職業に合わせての勉強を行うのです。

たとえば大工の子なら『番匠往来』、『商家往来』、農民の子供には『百姓往来』などが教科書として与えられ、いわばマンツーマンの教育が行われていた。勉強は競争するものではなく、それぞれのレベルに合わせて生きる知恵を学ぶことだった。女の子には師匠の妻が裁縫を教えることもあった。

やはりある程度は勉強を受ける方も、「これは必ず自分の将来に役に立つものなのだ」という感覚が必要なんでしょうけど、未来が決まっている分、こういった事は、今よりかは教育というものをすんなり受け入れられたことでしょう。なかなか良い教育法。職業選択の自由がないのがつらいですけどね。

他には語源の話が面白かったです。たとえば『下らない』の語源。今電車は東京に向かっていく電車が上りで、出ていくのが下りといいますが、江戸の天皇が京都にいた時代は京都が上でした。だから京都から出ていくものが下りになり、京の技術は進んでいて下り物はすなわち上等な物だったのですね。そこから「下らない物」という言葉が出てきた。

こっちはもっと驚いたのですが、『やばい』の語源。矢を射て12・7メートル先の的に当てる遊びが江戸時代には流行ったそうです。これを行う場を矢場といい、この矢場には矢返しといった客が射た矢を回収する女の人たちがいて、この人たちが矢を拾っている間にも矢は射られる。

この危ない矢場で、矢を巧みによけながら矢を回収しているうちに、いつしか女の人たちはパンツをみせたりして客を喜ばせるようになり(下品やなあ)これを楽しみにする客も多かったそうな。危険な場所や危ないことを「矢場い」というのは、つまりここからきているそうです。

他にも現代のメイド喫茶みたいな、喫茶店にきれいな女の人を看板娘として立たせて、茶代を相場より2倍高くしたりする悲しい男の性を利用した店もあったりして、「現代やん!」としか思えない文化が結構あるんですよね。

江戸時代が身近に感じられることうけあいです。まあ、別に身近に感じられたからどうってことないんだけど。今思えば、『ちょっと江戸まで』は、2008年の江戸っていう特殊な設定なんですが、これも身近さの演出なのでしょうなあ。

江戸の卵は1個400円! モノの値段で知る江戸の暮らし (光文社新書)

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