基本読書

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量子論で宇宙がわかる

わずか250ページほどしかない新書だが、だからといって油断してかかると痛い目を見る。これは一冊で量子論相対性理論をまとめあげてしまった驚くべき本なのだから。ハードカバーで出ている物々しい宇宙論の本と比べても密度にしろ内容にしろ劣るどころかむしろ優っているぐらいだ。

本書では量子論を使って宇宙を理解しようとする。宇宙を理解するとは色々な意味があると思うけれど、第一部『小さなものの世界』で原子と原子の振る舞いから起こる小さなものの物理世界を解説し、第二部『大きなものの世界』では空間と時間、相対性理論で見た「未来が精確に予測できる大きなものの物理世界」を解説する。

「小さなものの物理世界」と「大きなものの物理世界」で単語を区切ったのはこの二つの世界で起こる物理法則が明らかに異なっているからである。前者を構築する理論は量子論であり、後者を構築する理論は一般相対論である。

一般相対論は我々の良く知る物理世界だ。それは精確な計算を行うことで惑星が何年後の何時何分にどの位置にいるのかを正確に知ることができる。一般相対論は今までの物理学と同様未来を予測する為の方法である。

一方で量子論は正確な予測を出すことができる方法ではない。量子論で出せるのは「Aになる確率は50%、Bになる確率は30%、Cになる確率は20%」という確率の予測のみである。そしてこの違いは互いに両立していないもののように見える。

とにかく未来予測が可能な我々の宇宙と確率でしか予測できない非常に小さな量子の世界がある。量子の世界でその役を担うのは最小構成要素である原子である。こいつはわけのわからないやつで重ねあわせとかいって観測されていない状態だと確率A,B,Cがあるとしたらその全ての状態をとることができる。

わけがわからないが、本書はそうした原子の理論を通過して大きなものの世界、時空と空間と重力とこの宇宙についての理論に入っていく。ここでは平行して宇宙の始まりについても語られる。始まりの物語として語られるのは、宇宙は最初は原子よりも小さい状態から爆発(これは比喩だが)を起こして圧倒的な広がりを見せ、現在のような宇宙になっていった(そして今なお広がりつつある)という理論である。

この宇宙のことはほとんど一般相対論で説明できる。それぐらいすごい理論だった。しかし最初期の段階の宇宙は原子より小さかったのだ。そこで原子を相手にする量子論が必要になる。この二つは両立しないけれど、宇宙の始まりを解き明かすためには量子の分野にまで入っていく必要があるのだ。

「宇宙の始まりには何があったのか」というあまりにも魅力的な問いへの答えは果たして僕が生きている間に判明するのだろうか。するにしてもしないにしても、この問いへ答えようとする前進を、これからも追っていきたいと思った。

量子論で宇宙がわかる (集英社新書)

量子論で宇宙がわかる (集英社新書)